2021.01.07
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薬局のライフサイクルを知る(3)
~薬局経営ターニングポイントとなった2020年~

狭間研至の薬局経営3.0~社長が変われば薬局が変わる~
vol.4

狭間研至の薬局経営3.0社長が変われば薬局か変わる

 

編集部より

医師であり調剤薬局の経営者でもある狭間研至さんの連載コラム「薬局経営3.0〜社長が変われば薬局が変わる〜」。第4回は、狭間さんが薬局経営に閉塞感を感じていたころに知ったという言葉「全てのビジネスモデルには寿命がある」を起点に、調剤薬局のビジネスモデルについて考察を深める第3弾です。経験したことのない事態となった2020年が終わり、世の中はもちろん、薬局にも多くの変化が起こりました。そしてそれは「患者のための薬局ビジョン」の実現につながる変化となったのです。コロナ禍を機に「薬局経営3.0が成長期に入る号砲」が鳴らされ、2021年はさらなる成長が期待されています。

 

2020年という特別な年を越えて

 

こんにちは。狭間研至です。前回は「薬局の世代間移行」をテーマに、経営者というものは、現場をよく観察する虫の目だけでなく、全体を俯瞰する鳥の目を持つことが大切だというお話をいたしました。今の「調剤薬局」というビジネスモデルは、昔の町にあった小さな個人商店の様な薬局を第1世代(1.0)と考えれば、第2世代(2.0)になります。1.0の薬局が今はほとんど見られなくなったように、2.0の薬局も、いずれ世の中から無くなっていき、新しい第3世代の薬局、つまり、薬局3.0が生まれるのではないかということでした。

 

薬局3.0にとって、2020年は特別な年だと考えてきました。というのも、前回の私のオカルト(!)の話からすれば、2003年に始まった薬局3.0は、17年間の導入期を経て成長期に入る年になるからです。そもそも、この薬局のライフサイクルという話を思いついたのが2006年ですから、当時、2020年という14年も後のことは、予想することは不可能に近かったです。

ただ、薬局2.0成長期の最終盤のころでしたので、在宅訪問やOTC販売に積極的に人手を割くようなビジネスモデルの収益性は惨憺たるもので、相次ぐ調剤過誤も相まって、本当にどうなることかと思っていたころでした。

 

そもそも、導入期のビジネスモデルというのは、危険かつ採算性の悪化ということがキーワードですから、まさにそれを地で行くような毎日でした。ですので、私にとって、薬局3.0が成長期に入る2020年というのは、ある意味では待ち遠しかったですし、とにかく会社が潰れないようにと願いながら会社に通っていました。

 

一方、栄華を誇った(?)「調剤薬局」、つまり薬局2.0というビジネスモデルは、2008年から成熟期に入りますが、当初は成長期の流れを引きずっていますから、少しずつ経営環境は厳しくはなるものの、まだまだなんとかなっていましたが、状況はやはり変わってきていました。

 

2015年には、突如、内閣府の規制改革会議(当時)の公開ディスカッションのテーマに「医薬分業」が取り上げられ、現在の医薬分業は形骸化しており、患者本位の医薬分業に戻す必要があるとして、当時の塩崎厚生労働大臣が「病院前の景色を変える」とおっしゃったことを覚えておられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

同年秋には、厚生労働省から「患者のための薬局ビジョン」が発表され、薬局は「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へというキャッチフレーズのもと、「立地から機能」、「対物業務から対人業務」、「バラバラから一つ」というキーワードが示されました。このビジョンは、「医療機関の門前に店を構え、薬というモノをお渡しする業務に専念する薬局が、医療機関ごとにバラバラに存在する」という「調剤薬局(=薬局2.0)」のあり方を根底から覆すもので、業界的にも波紋を呼びました。

   

さらに2016年、2018年の2度の調剤報酬改定、2017年の骨太の方針や行政事業レビューなどは、いずれも「調剤薬局」のあり方の未来が見えづらくなるものばかりでした。

また、2018年からの医薬品医療機器等法(薬機法)改正の議論では、服用後のフォローが薬剤師に義務づけられる流れとなり、翌2019年には、調剤業務の全てを薬剤師が行う必要について考えてはどうかという内容の「0402通知」が発表され、薬剤師が対物業務に忙殺される余り、対人業務にシフトできないのではないかという懸念も、仕組上は払拭されました。

 

そんな流れもあって、ほのかな期待感を持って、2020年度の調剤報酬改定を待っていました。すると2019年秋頃からの議論では、調剤基本料1が引き下げられる範囲が大きくなり、より立地に依存した薬局の経営は厳しくなりましたし、調剤料も14日以下についてはしっかりと引き下げられることも明らかになり、対物業務はだんだん評価が見直されていくのだなという感触も強くなりました。さらに、糖尿病薬や吸入薬の調剤については、お渡しした後の業務について、薬機法改正の流れもあり多くはありませんが、調剤報酬上評価されるようになり、まさに、「患者のための薬局ビジョン」の具現化に向けて動いているのだなと感じていました。 

  

コロナ禍で現実になった「患者のための薬局ビジョン」

  

 

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