2020.01.28
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こう変わる!2020年度診療報酬改定を予測

政策・戦略コンサルタントが最重要項目を解説

医療機関を経営する上で、診療報酬改定のポイントを理解することは経営の要と言えるでしょう。診療報酬改定の内容は、未来を見据えて読み解くことで「真意」が分かります。2020年度診療報酬改定に透けて見える“思惑”を、株式会社日本経営の政策・戦略コンサルタントの濱中洋平さんに聞きました。今回の改訂の最重要項目が「中長期的な入院医療機能評価の見直し」だそうです。その内容を濱中さんが分かりやすく解説します。

執筆/濱中 洋平(株式会社日本経営 政策・戦略コンサルタント)
編集・構成/メディカルサポネット編集部

 2020年度診療報酬改定まで3カ月をきった(本執筆は2020年1月17日時点)。今回の診療報酬改定の位置付けを、皆さんはどう考えておられるだろうか。

 2018年度診療報酬改定は「惑星直列」とも言われ、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年にあるべき医療・介護提供体制に向けて、注目を集めた診療報酬・介護報酬の同時改定であった。大きな変革があるのではないか、と予想された方々にとっては、思ったより影響がなかったと安心しておられるかもしれない。しかし、改革は始まったに過ぎず、ここからジワジワと大きなうねりとなって病院経営に影響を与えてくることだろう。

 改めて、今回の診療報酬改定が持つ意味について考えてみたい。

2020年診療報酬改定の位置付け

 2020年度改定は、医療政策のマクロ的な枠組みの中で、どのように位置付けられるだろうか。

 結論から申し上げると、2020年度改定は、2018年度改定で仕込まれた2025年に向けた改革の枠組みを調整するための改定だろうと考えている。即ち、それほどドラスティックな見直しは行われず、2022年度、2024年度改定に向けた調整弁的な役割である。今の中央社会保険医療協議会等の議論の内容をみていても、その認識にズレはないように思う。ただし、個別病院ならば比較的影響を受けそうな内容も含まれているので、注意は必要である。

 では、2020年度改定で議論されている内容は、2025年までの改革の中で、どのように影響を及ぼす可能性があるのだろうか。ここでは以下2つのポイントに絞って解説する。

 

ポイント(1):中長期的な入院医療機能評価の見直しの行方

 今回の改定の中で、将来的に病院経営において重要な意味を持つと考えられるのが「中長期的な入院医療機能評価の見直し」である。私個人の見解としては、2020年度改定の議論(資料等含む)の中で、最も重要で病院経営に影響を与える内容はこれだ、と確信したことを昨日のように覚えている。「中長期的な入院医療評価の見直し」は、2020年度改定を議論する入院医療等の調査・評価分科会の第1回(2019年4月25日)において、厚生労働省から示された課題認識である。「中長期的な入院医療機能評価の見直し」は、何を意味しているか、もう少し具体的に確認しよう。

 図1は、入院医療等の調査・評価分科会第1回(2019年4月25日)の内容を私がまとめたものである。ここで見ていただきたのは、入院医療機能評価の検討課題における「中長期的な検討」である。私は、この意味を、将来的な「入院医療機能の見直し」を念頭に置いたものであると考えている。検討課題において、厚生労働省から「入院医療機能の適切な評価指標や測定方法の検討」ということが示されたこと自体に大きな意味がある。

 ここで、もう一つ重要なことがある。それは、調査研究の代表者が、DPC制度構築の第一人者である松田晋哉先生であることだ。ここから読み解けることは、将来的には急性期から慢性期まで一気通貫したDPC/PDPSの構築を目指しているのだろうということである。このことは、入院医療等の調査・評価分科会第6回(2019年9月5日)の資料(図2)を見ても明らかである。この研究報告は、まだ第6回でしか報告されていないように思う。

 

図1:2020年度診療報酬改定における入院機能の検討課題

入院医療等の調査・評価分科会(2019年度第1回4月25日)より筆者作成

出典:入院医療等の調査・評価分科会(2019年度第1回4月25日)より筆者作成

 

ポイント(2):急性期から慢性期のDPC/PDPS導入による病院経営への影響

 では、仮に急性期から慢性期まで一気通貫したDPC/PDPSが構築されると、病院経営にはどのような影響を与える可能性があるのだろうか。最大の影響は、患者の病棟間転棟による経済的評価の喪失の可能性である。例えば、急性期一般DPC病棟から地域包括ケア病棟への院内転棟をイメージしていただくと分かりやすい。今でも問題視されているが、DPC対象患者がDPC点数の下がった時点(地域包括ケア病棟の点数よりも低くなった時点)で地域包括ケア病棟に転棟させ、経済的利益を得るという手段だ。病院としては、ルールの範疇における経営努力ではあるが、患者状態による病棟間転棟ではないという意味においては本質的ではない。

 その点、DPC/PDPSの評価体系になると、病棟の機能的評価以上に、患者の状態評価がメインとなってくる。即ち、「どのような医療提供体制を取っているか」よりも、「どのような患者を診ているか」が評価のポイントになる。現在の入院基本料(特定入院料等含む)評価は、患者状態の評価よりも医療提供体制の評価軸が未だに大きい。2018年度改定において、アウトカム評価が入院基本料に導入されたことにより徐々に患者の状態評価へと移行しているが、課題がある。それは、病期(取得入院料等)によって、患者評価が連続性を持たないことである。急性期、回復期、慢性期、それぞれの患者状態評価は行われているものの、それらが連続的評価になっていない。図2の中に、「連続値で評価」というキーワードがあるが、これこそが入院基本料等評価の見直しの最重要テーマではないかと考えている。この連続的評価を実現するには、共通基盤となる評価の枠組みが必要であり、それそこがDPC/PDPSであると考える。2020年度改定においてデータ提出加算の対象病棟が更に拡大される見通しであるが、この辺りは下地作りと考えていいだろう。

 DPC/PDPSの病期を超えた連続的評価体系の構築によって、経営的側面からの対応の選択肢は狭まっていくのではないだろうか。

 

図2:中・長期的な入院に係る評価体系(研究班イメージ案)

入院医療等の調査・評価分科会(2019年度第6回9月5日)より一部筆者加

出典:入院医療等の調査・評価分科会(2019年度第6回9月5日)より一部筆者加工

 

病院経営の舵取りの行方を解説

 書ききれなかったことも多いが、実は今回記載した内容も、更に大きな枠組みの中の要素の一つに過ぎないのだ。

 説明しきれなかった部分については、2020年2月11日(火・祝)、同年3月13日(金)に、それぞれ3時間を超えるセミナーにて十二分に解説する。是非、そちらにご参加いただければ、2020年度改定の議論に隠された重要なポイントについて、ご理解いただけるだろう(セミナーは、東京のリアル会場の他に、遠方の方にもご参加いただけるようにWebでも受講できる環境を用意する)。

 

 

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政策・戦略コンサルタント 濱中洋平が診療報酬改定の思惑を読む!


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<第2弾>

【日時】3月13日(金) 13:00-17:30 (12:30開場) ※申し込み受付中

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メディカルサポネット編集部

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