2019.10.10
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【前編】 孤独とは、「出世のバロメーター」である

坂上忍「かけひきする勇気」

最新刊『かけひきする勇気』(セブン&アイ出版)のなかで、自らを凡人だと言い切り、独自の人生処世術を明かした坂上忍さん。
 
1週間、テレビで観ない日がないほどの超多忙な日々を送るなかで、どんなことを思い、生きているのでしょうか。そこにあるのは、「アウェーな場所」だと語るバラエティー番組を仕切るときの「勇気」と、その責任を背負う「覚悟」でした。
 
職場を管理し、新たなビジネスを構築し、そしてたくさんの責任を負うマネジメントするビジネスパーソンの心にも響く一部を特別に抜粋しました。
 
構成/岩川悟(slipstream) 

坂上忍「かけひきする勇気」【前編】 孤独とは、「出世のバロメーター」である

 

狂った勇気を持て

僕は正真正銘の凡人で、それどころか、劣等感の塊です。

 

まだ僕が10代から20代前半だった当時、モデル出身の俳優が一気に増えた時期がありました。彼らはルックスもスタイルも僕とは段ちがい……。どうあがいても僕の身長は伸びませんし、それで劣等感を抱かないほうがおかしな話です。

 

そんな人間ですから、そのころは出待ちをしているファンにメンチを切っていたこともあったほどです。「キャー!」なんていわれても、少しも信じられない。「頼むからそれだけはやめてくれ!」「俺なんてどこもよくないんだから……」って思っちゃう。そこでメンチを切るのもどうかと思うけれど、とにかくそんな若者でした。

 

もちろん、50歳を超えれば外見は衰えてあたりまえです。それよりも、いまは才能や知識量の乏しさという部分に劣等感を覚えることが多くなりました。

 

僕がMCをしている『バイキング』(フジテレビ)でも、毎日のように劣等感を抱いています。題材として扱う分野の専門家が毎日のように出演し、彼らに対して僕はあくまでも自分の知識の範疇で疑問に感じたことをぶつけていきます。すると、僕の意見に対して想定外の回答が、彼ら彼女らから返ってくる。そんな瞬間は、知識量の差を感じざるを得ません。かといって、芸人さんのように即興の返しで笑いを取るような技術も僕にはない。「えっ!」と心のなかで思って、瞬間的にいじけています。

 

でも、あきらめの悪い僕は徹底的に抗います。そういうときでも、「でもさっ!」なんていって、わけのわからない言葉を並べて彼らに対抗していくのです。ただし、そんなささやかな抵抗も「知識がないから」だとまわりにはバレていますから、いってしまえば恥をさらしているだけのこと。専門家には知識ではとうてい及びません。

 

でも、僕には「狂った勇気」がある――。

 

僕にとって、芝居の仕事以外はいまでも完全アウェーな場所だし、そこでの僕は「よそ者」だという意識が強くあります。でも、そこで無理やりに知識を増やすだとか芸人さんのような技術を身につけるといったことを選ぶと、とくにMCを務める番組だと現場そのものを本当の意味で背負えなくなってしまう。だからこそ、狂った勇気を持って挑んでいくことが、僕に期待される役割だとわきまえています。

 

もちろんある程度の情報収集をしてから現場に入るのですが、その努力はそこそこに、狂った勇気でアウェーをホームに変えてしまえばいい。そして、番組が終わったら、出演者の人たちに心から感謝すればいい。

 

これは、僕が選んだ戦い方です。

孤独は出世のバロメーター

意外に思われるかもしれませんが、僕はいま、つねに孤独を感じています。

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