2020.04.28
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オンラインで広がる新しい学びのカタチ

「看護×学び」で現場教育を変える! vol.7

緊急事態宣言が発令されて以降、私たちの生活は一変し、仕事も学びも大きな変化を求められています。「リモートワーク」「オンライン授業」が著しい広がりを見せてはいるものの、学校がその役割を果たせなくなり、早2ヵ月。今後の影響が小さくないことを考えると、「学びがとまる」という事態の大きさを感じます。しかし、ニューヨークにあるコロンビア大学院では、この状況にあっても、いち早くオンラインというキャンパスに学習環境を移し、予定通りのスケジュールで授業が進行しているというから驚きです! それを実現させた大学側の努力には素晴らしいものがあります。日本では、国際基督教大学を筆頭に、次々と授業のオンライン化が決定され、その準備や金銭的支援が始まりました。また、「オンライン授業」という新たなツールを手に入れた私たちが考えるべきことも生まれてきています。それは一体・・・。

執筆・写真/寺本 美欧(Teachers College, Columbia University)
編集・構成/メディカルサポネット編集部

寺本美欧 コラム バナー画像

 

     

猛威を振るう新型コロナウイルスの影響により、生活が一変してしまいました。ニューヨークの街中からは人がいなくなり、美術館や店も閉まり、ブロードウェイも休演。

   

3月1日にニューヨーク州で初となる感染者、3月7日には非常事態宣言が発令され、それ以降はドミノ倒しのようにものすごい勢いで刻一刻と状況が変わっていきました。

 

留学生に対しては、母国への一時帰国が推奨され、たくさん悩み抜いた結果、日本に帰る決断をしました。(現在は2週間の自主隔離を無事に終え、元気に過ごせています。)

一時期ニューヨークでも買い溜めが起こり、

スーパーの棚から食料がなくなりました。

 

◆キャンパス閉鎖とオンライン授業決定のスピードと適応力

私が通うコロンビア教育大学院は、3月12日には春学期すべての授業をオンラインへ移行することを決定し、その3日後にはキャンパスを含めた全ての関連施設が閉鎖されました。帰国後、「留学中なのになぜ私は日本にいるのだろう」とぶつけようのない怒りと悲しみでやるせない気持ちになってしまうことが度々ありました。しかし、このような非常事態でも学びを継続できるということがどれだけありがたいことかと、時間が経つにつれ実感できるようになりました。 

  

現在、コロンビア大学では全学部・大学院含め9622コースをオンラインで提供しているといいます。それまで対面式だったこれほどの数の授業を1週間足らずでオンラインへ移行できたのは、大学職員と先生方の並ならぬ努力の結晶だと感じます。

 

私が尊敬する立教大学経営学部教授の中原淳先生はブログ で、「『授業のオンライン化』とは、オンライン用に『もうひとつ別の授業』をつくること」と書かれています。現在履修している授業では、板書を一切行わずにまるで演劇を見ているかのような大きな身振り手振りで講義をしている教授がいます。約30年間そのスタイルを貫いていたそうですが、今回オンライン向けに新しくパワーポイントのスライドを作成されたそうです。

 

また、オンライン授業が決定した翌日には、現在使用している「Zoom」 (ウェブ会議システム)の使い方のレクチャー動画が配信され、各教授からは授業の今後の進め方の細かい説明があり、ものすごいスピードで準備が進められていました。

 

 

 

↑連日寮を出て行く留学生が何十人もいて、それを見送るのはとても心苦しかったです。


 

◆困難な状況下であってもつながり・学び続ける

大学院の授業の醍醐味でもあるディスカッションにおいては、Zoomの機能にある「ブレイクアウトルーム」でほぼ対面と変わらずにディスカッションをすることが可能です。「ホスト」と呼ばれるZoom会議室の責任者(授業の場合は教授)が時間設定やグループの人数を決めることができ、自動でグループ分けされその中で会話をすることが可能です。私が受講している授業はほぼすべてこのブレイクアウトルームを使用し、ディスカッションをする機会があります。初めは慣れず、皆遠慮がちでしたが、今では対面と同じクオリティで不便さを感じません。

 

Zoomで行う授業の様子。授業の時間になれば、画面越しに見慣れたクラスメイトと教授が一同に集まることができてホッとします。

   

前回の連載記事では、アクションラーニングの授業で、対面で行ったチームビルディングについて書きましたが、今回は教授達の初の試みでオンラインでのチームビルディングのアクティビティを行いました。

 

「2021年の街中」というお題が与えられ、制限時間内に各チームで思い思いに連想する画像を同じスライドに貼り付け、コラージュを作成するという課題です。私のチームは一貫性を持たせるために「SNS」というテーマに絞り、オンライン上で相談しながら作成しました。各チームの個性が表れていたのが印象深かったです。

 

「2021年とSNS」というテーマで私たちのグループが作成したコラージュ作品。

周りからも好評でした。

    

◆オンライン授業から考える「対面の意味」とは

授業以外にも大学ではオンラインを使った様々なイベントが毎日行われています。Virtual yoga (バーチャルヨガ)、音楽会(Music departmentの学生の演奏を聴くことができる)、ダンスパーティー(DJがクラブミュージックを流してくれる)、絵画教室(お絵かき機能でデッサンなどを行う)、料理教室(料理研究家の卒業生の自宅から生配信)などなど、オンラインでどこまでも可能性が広がることを今回感じました。

 

先が見えない不透明な絶望感のなか、もう一度前を向き今の状況を乗り越えようと思うことができたのは、遠いニューヨークや世界中に散らばったクラスメイトと教授達のおかげです。時差の関係で早朝や深夜に参加することが多いのですが、その大変さに勝るほど、大学院で築き上げたコミュニティは私にとってかけがえのないものになっています。この事態が収束したあと、改めて「対面の意味」を考えることになります。オンラインの良さ、対面の良さ、それぞれが共存しあう、新しい学びのカタチをこれからも探究していきたいです。

  

   

ニューヨークに住んでいる友人から送られてきたSakura Parkの満開の桜。来年こそ、見に行けますように。

     

看護×学びで現場教育を変える! 寺本美欧 目次

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プロフィール

寺本美欧(てらもと・みお)
看護師、大学院生。上智大学総合人間科学部看護学科卒業後、都内大学病院ICU病棟に就職。その後、埼玉県の地域密着型病院脳卒中センターへ転職。2019年9月よりアメリカ・NY州にあるコロンビア大学教育大学院の修士課程に在学中。専攻は成人教育学とリーダーシップ。「すべての看護師に最高の教育の場を」をモットーに、看護師の継続教育のシステム構築を目指す。海外大学院留学記ブログ「看護師ちゅおのアメリカ大学院留学記」日々更新中。

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