2020.08.06
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質問は「WHY」ではなく「WHAT」でするとチーム力が高まる

後編/管理職のための心をケアする対話のヒント【コーチングサービス「mento」のコーチが送るコラム】

 

編集部より

新型コロナウイルス感染症治療の最前線を担う医療従事者には、身体的にも精神的にもさまざまな負荷がかかっていると思います。最前線でたたかう医療従事者らを応援するため、このコラムでは、スタッフの心身の状態にも気を遣う管理職向けに、心をケアするための視点と言葉をお届けします。執筆するのは、4月から医療従事者向けにパーソナルコーチングの無償提供を始めたパーソナルコーチングサービス「mento」のコーチ達です。今回は、mentoコーチの菊池理恵さんが、コーチングの基本となる「対話」の姿勢と質問の仕方をお伝えします。 

 

文/菊池理恵 (mentoコーチ)

編集・構成/メディカルサポネット編集部

 

Profile

菊池理恵(きくち・りえ)

パーソナルコーチングサービス「mento」プロフェッショナルコーチ。Creative Wing Life Design代表。認定プロコーチ・国家資格キャリアコンサルタント。
「未来を切り拓く元気と勇気が出る自己変革のコーチング」をモットーに取り組んでいる。誰もが自身の才能や資質を発揮しながら互いに貢献し共創する社会組織づくりを目指している。 社会人・組織リーダーのパーソナルコーチ、組織のコーポレートコーチ、大学におけるライフキャリアセミナー講師として活動中。

 理由は「なぜ?」より「何が?」で聞くと対話が深まる

未だ予断を許さないコロナ禍の今、自身の感染リスクを省みず使命感と責任感から献身的に日々従事している医療関係者の皆様に、心から敬意と感謝を表します。私は学生時代、アメリカの美しいホスピスに関する本を読んだことがきっかけで、患者にとって居心地の良い病院空間を設計したいという思いから、約20年に渡りインテリアデザインの仕事に携わってきました。ただ、当時の日本の病院設計では機能性が追求され、私が理想とする前向きな気持ちになるような工夫を施したデザインができなかったことは心残りです。建築業界を離れコーチになった今でも、リフレッシュ効果の高いカフェコーナーやヒーリングルームがあったなら束の間でも心が休まるのではないかと思っています。そんな「医療従事者にリラックスできる時間をお届けしたい」という思いを込めて、コーチングの基本となる「対話」の姿勢と質問の仕方をお伝えします。このコラムが癒やしの場となり、医療従事者の方々の心身の健康を保つ環境づくりのヒントになればうれしいです。

 

コーチングとは、クライアントとコーチが協働しながらクライアントの問題解決と目的達成を促す心理支援のことです。コーチはクライアントが課題の最適解にたどり着き、目標達成を応援するパートナーです。クライアントはコーチに本音で話しているうちにアイディアが湧いたり、新しい視点が持てたり、気持ちが落ち着いたり、やる気が出たりします。クライアントがリーダー職の場合、コーチングを通してリーダーの気持ちに余裕が生まれるとチームの雰囲気もよくなり、メンバーとのコミュニケーションが改善された例は少なくありません。

 

コーチはまっさらな気持ちでクライアントと向き合い、話を丁寧に聴き、受け止めます。心理的に安全な場をつくるよう意識しながら信頼関係を築いていくと、クライアントから本音が語られるようになり問題の本質にたどり着くことができます。日常の会話や面談では、問題の本質にまで到達することは難しく表面的な課題解決と目標設定となるため、義務感から目的に向かいがちですが、コーチングでは問題の本質とクライアントの主体性を重んじて進めます。建前が社会の常識になっている日本では本音を抑圧する傾向が強いため、人々の精神的ストレス度合いは相当なものです。そのため素直に相手の話を聞くだけでもストレスを解放させる効果があります。

 

対話をするときには、「WHY(なぜ?)」よりも「WHAT(何が?)」を遣うことをお勧めします。これは、コーチがクライアントに質問する際に意識していることです。「WHY(なぜ?)」よりも「WHAT(何が?)」と質問する方が、受け手は身構えずに自分の気持ちや環境要因について視野を広げて答えることができます。逆に「WHY(なぜ?)」と質問されると、詰め寄られている気持になり、「答えなければならない」と焦って真意とは違う回答をする場合があるのです。それでは本音や本質を共有することはできません。対話する際には、まっさらな気持ちで相手の話を受け止めることを心掛け、質問は「WHAT(何がきっかけですか?)」「WHAT(何がそうさせたと思いますか?)」「WHAT(何があったら~ですか?)」というように「WHAT?」を軸に質問を変化させて試してみて下さい。

 

 自己とチームの理解を深めて未来のゴールを設定する

 

 

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