2020.11.17
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部下に問いかけ心を動かす
~訪問看護リハビリステーション統括~

実践者に聞く!
デキる介護管理職のモチベーションアップ術 vol.2

 

編集部より

ますます需要が高まる介護現場において、施設管理やスタッフ勤怠管理など管理職の方たちに求められるマネジメントスキルも高まっています。しかし、必ずしも「管理職になりたくてなった」とは限らず、また、十分な管理職教育を受けられるとも限らず、孤独になりがちな介護管理職に向けたマネジメントに関する情報はこれまで多くは語られてきていません。

本連載では、看護師・保健師を経て現在は人材育成・組織開発コンサルタントとして活躍されている久保さやかさんが、「介護管理職のモチベーション」をテーマに、医療介護業界で活躍する管理職や経営者に実際にお話を伺いながら、そのありかを探っていきます。介護業界の管理職の楽しさがわかる、明日からのモチベーションが上がる、そんな気持ちにさせてくれる全6回のコラムです。

 

執筆/久保 さやか(thoughts代表/看護師・保健師)

編集/メディカルサポネット編集部

「介護業界の管理職のモチベって、なんだ?」

そんな単純な疑問から、この連載は始まりました。

あれやこれやと苦労の堪えない管理職のモチベーションのありかを探す、そんな旅のような企画です。

 

今回お話を聞かせてくれたのは、訪問看護リハビリステーションの統括を担当しているユイさん。理学療法士でもあり、満面の笑顔からは、熱いパッションがあふれ出ています。ユイさんのモチベは、一体どこにあるのでしょうか。

 

訪問看護リハビリステーション 統括 ユイさんの場合

 


「モチベが上がるのは、部下の心が動かせたとき」 部下の挑戦・成長を促す関わり

看護職20名リハ職60名の訪問看護リハビリステーションで、統括をしています。今、全員と面談をしているのですが、部下の心を動かせる瞬間が、一番嬉しいです。

と、いうのも、自分の部下は安定志向が高いのか、100%今のままが良いと思っている人が多い。在宅で専門職として、そこそこの給料で、利用者のためにというのでも、勿論いい。けれど、「そのままで本当に良いの?」と問いかけます。部下が根本に持っている価値観や、専門職になった動機を聞きながら、目指す未来を一緒に考えます。

特に30代~40代を動かしたいんです。多職種でチームを作ることや、管理者として責任を持つことを学んで、成長して欲しい。

自分の中で、大切にしている理論で「パフォーマンスピラミッド」があります。基礎的な力の上に、パフォーマンスがあり、その上に専門的な技術があるというもの。自分はその先に“価値” があり、後継者育成に繋がると思っています。


部下が気づいていない仕事の価値や意義を伝える役目、挑戦への支援

いくら話しても、「このままで良い」という部下も勿論います。当然、キャリアは無理強いするものでもありません。

ただ、自分と話をしていく中で、当初の動機が“お金”だけだった部下が、「そんな発想は、自分にはなかったです」「挑戦してみたい」と言ってくれたら、とても嬉しい。この先の未来像が部下の中になくても、問いかけながら、気づいてもらう。奥さんやこどもから見た、カッコイイ自分の姿を想像してもらう。部下にとっての仕事の価値について、一緒に意味づけをします。

挑戦することを決めた部下のことは、応援します。ぜったい成功させます。この組織の中で挑戦すれば、何かあっても助けられる。それをいつか越えていけばいい。まずは守られているところからはじめ、いずれ巣立つことを提案します。

 

実践者に聞く! デキる介護管理職のモチベーションアップ術 vol.2


自分の中でのリーダー像の変化

以前は、リーダーたるもの、リーダー自身が物知りで、専門性が高いことが大切だと思っていました。頼られることが価値観だった。頼られるために、行動力をもつべきだと。

今は、貢献に変わりました。

例えば、地域でイベントをする。そのイベント自体は儲け度外視で、一銭も得にもならないものだけど、地域の人たちとの信頼関係が出来る。その繋がりで訪問リハビリの依頼が来ることもある。そのこと自体も嬉しいけれど、それを担当してもらう部下にも伝え、一緒に喜ぶ。

何か役に立つと人から返って来るんです。それは、単純な金銭的なものや仕事の依頼じゃなくて。自分に嬉しいことがきたら、他の人にもその喜びをパスして、伝えていきます。そうすることで、パスされた人も、この先貢献していくようになると思う。


ライバルは自分 心身を整えるためのモーニングルーティーン

マイルーティンがあります。

毎朝4時30分に起きて、まず座位になります。その後、本を一章読んでいるうちに頭が冴えてきます。そして、インターバル50mのダッシュ、週に2回過負荷の筋トレ。鏡の前で笑顔を作り、姿勢を確認して出勤。

感情・思考・人格・フィジカルの全てにおいて、“理想のおやじ”を目指してのマイルーティンです。ライバルは自分だと思っています。朝起きるのも自分に負けないため。やらない方がストレスになります。


一見ストイック?!ユイ流モチベーションを上げるコツ

モチベーションが落ちた時ですか?それはもう・・・

フィジカルを痛めつけるしかない!!

脈拍上げて、汗かいて、交感神経を高めて、意図的に上げるしかない。

自分が落ち込んでいると思ったら、意図的に自分を追い込みます。50メートルダッシュをして、追い込んで追い込んで追い込んで、これ以上ないくらいまでやって、オレやった!!と思う頃には、何を悩んでいたかも忘れているんですよ。

モチベーションの上がり下がりは、生きている証拠。何があってもどう意味づけするか、です。全部プラスに意味づけをして、自分の理想に近づいていきたい。

 

JTBコミュニケーションデザインのアンケート調査によると、働く人のモチベーションは、東日本震災後よりも現在のコロナ渦のほうが低下し、対策が急務とされています。その中で、がんばろうという意欲は、会社への誇りやビジョンを実現したいという気持ちと関係が深いことも分かりました。

そのような中で、上司の役割は重要です。何のための仕事かを言葉で説明し、何のための会社かを自らの行動で示す上司が部下の会社への満足度を高めることに繋がります。

※株式会社JTBコミュニケーデザイン:ウィズコロナ時代のモチベーション調査 

 

『 有言実行 』

 

パワフルなユイさんのお話を伺いながら、私はそんなことを考えていました。

私が部下だった時代、上司は、言ってることと、やってることが全然違う、なんてことはもう日常茶飯事。どんなに立派な言葉を言っていても、その言葉と裏腹な態度を見ては何度がっかりさせられたことか。

「ウチは理念型経営ですから。理念を軸にいつも話をします」

事もなげにユイさんは、話していました。これって、そんなに簡単なことじゃないですよね?

「社会のために役に立ちたい」「自分が成長したい」といった仕事観を持つ人が多い介護・医療業界の中で、組織としての目標と自分との目標をどう結びつけていくかがマネジメントのキーとなります。そして、それは決して部下だけでなく、管理職自身も同じように理念と自分のモチベーションの軸をほぼほぼ同一線上に持つこと。そして、それを日々実践し、言葉にして伝えていくこと。デキる管理職は、自らのモチベーションも高く、そしてその姿は、部下にも伝播していく。これほどパワフルなことはない、と感じたインタビューでした。

 

プロフィール

久保さやか(くぼ・さやか)
THOUGHTS代表。看護師・保健師、人材育成・組織開発コンサルタント。
慶應義塾看護短期大学卒業後、慶應義塾大学病院混合病棟勤務を経て、慶應義塾大学看護医療学部に編入学し保健師免許取得。大学卒業後は、大手小売業にて人事部所属の産業保健師として産業保健体制の立ち上げに携わる。その後、弁当チェーン運営会社の総合職として役員秘書、人事部、経営戦略部などで勤務する。現在は中小企業の産業保健師として勤務すると同時に、医療職やビジネスパーソン向けの人材育成・組織開発コンサルタントとして活躍している。


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