2020.03.26
4.5

留学中の夢、実現!~アクション・ラーニング受講~

「看護×学び」で現場教育を変える! vol.6

日本だけでなく世界がコロナウィルスで混乱しています。留学中の寺本さんもその1人。ニューヨークではレストランやバーが軒並み閉鎖され、ついに外出禁止令も発令されました。普段観光客でにぎわう街が閑散としている様子をニュースで見た方も多いのではないでしょうか。オンライン授業が活発なコロンビア大学院は、今回の事態にいち早く対応し、春学期すべての授業のオンライン化を決定しました。今回のコラムはそんな騒動が起こる前、春学期の楽しみの1つ、待ち遠しかった「名物授業」アクション・ラーニングについてのお話です。

執筆・写真/寺本 美欧(Teachers College, Columbia University)
編集・構成/メディカルサポネット編集部

寺本美欧 コラム バナー画像

 

 

春学期が始まったのも束の間、皆さんもご存知のように、コロナウィルスの影響がここニューヨークにも押し寄せています。春学期の授業はすべてオンラインに変更され、寮にいる学生は母国に帰ることを推奨されています。街の様子も一変し、図書館の灯りは消え、大学のキャンパスも閑散としていて切ない気持ちでいっぱいです。

  

   

コロンビア大学院名物授業「アクション・ラーニング」

今学期、「アクション・ラーニング」という授業を履修しています。5~6人のグループで「実際の現実の問題を解決しながら同時に学ぶ」という手法で、1930年代に物理学者レグ・レバンス氏によって考案されて以来、世界中の企業内人材育成に取り入れられています。私が通っている学科はこの「アクション・ラーニング」を実際に授業で経験できるという名物授業があり、履修希望者は履歴書やリーダーシップ経験のエッセイの提出が求められるほど人気が高いものです。今回念願叶い履修が実現しました。

 

本来は半年ほどかけて行われるのですが、授業では2月から4月末まで約2ヶ月間にわたって実際にアクション・ラーニング行うことになります。「クライアント」と呼ばれる相談者は実在する企業や個人から選定されるのですが、私たちのクライアントは偶然にもアメリカの看護大学の教授陣となりました。グループメンバーと「看護学生の好奇心を高める施策を教育者側に提案する」という課題に取り組みます。グループで相談し、インタビュー用の質問項目を作成し、実際にクライアントにインタビューを行いこれから集めたデータを分析する過程に入ります。

 

アクション・ラーニングのポイントは以下の3つ。

① 小さなグループで取り組む

② ラーニングコーチがいる 

③問題解決と学びの比重が同じ 

 

その詳細について、次にご紹介していきます。

  

 寺本美欧 コラム 「留学中の夢、実現!~アクション・ラーニング受講~」

約2ヶ月間、共に奮闘する大切な仲間。マシュマロチャレンジであっという間に打ち解けました。

 

◆チームビルディングで仲間との絆を深める

1つ目のポイント「小さなグループ」の形成にはdiversity (多様性)が求められます。元々の知り合いがグループ内にいると見えないパワーバランスが生まれ、発言量に偏りがでてしまうリスクがあるため、学科・国籍・性別に偏りがないように注意が必要です。

 

グループ形成後は「チームビルディング」と呼ばれるチーム作りを強めていくためのアクティビティを授業内で行いました。その名も、「マシュマロチャレンジ」!名前の通り、マシュマロ1袋とスパゲッティの乾麺がテーブルに用意され、それらを使い制限時間内に1番高いマシュマロタワーを完成させたチームが優勝、というルールです。ああじゃないこうじゃないと意見を言い合いながら全員本気で取り組みました。そして見事、私のチームが優勝しました!ちなみに日本ではどの程度知られているのか気になって調べたところ、「日本マシュマロチャレンジ協会」というものが存在しており驚きました。

 

寺本美欧 コラム 留学中の夢、実現!~アクション・ラーニング受講~」マシュマロタワー

皆で知恵を出し合いながら15分で完成させたマシュマロタワー。私のチームが圧勝でした!

   

◆「学びの隙間をつくる」ラーニングコーチ

もうひとつ、アクション・ラーニングのチームに欠かせない存在となるのがラーニングコーチです。ラーニングコーチは直接的に問題解決に携わりませんが、グループの意見交換が円滑に行われるように調整したり、進捗状況を見ながら声をかける、いわば「ファシリテーター」という役割を担います。この授業では教授クラスの先生が1グループにつき1人コーチになってくれるとても贅沢な環境です。

 

ラーニングコーチの役目は “Hold the space for learning”、「学びの隙間をつくること」。実際に何度かグループミーティングを重ねると、目の前の課題やデータ収集にあくせくと一生懸命になりすぎてしまい、立ち止まって振り返る余裕がなくなってしまうことを実感しました。

 

そんな時、ラーニングコーチが「あなたがこのチームに感謝していることは何ですか?」「今一番不安に思っていることは何ですか?」というような、リードクエスチョンを投げかけてくれます。すると行き詰まっていた空気が一変し、一度ゆっくり振り返ろうとグループ感でリフレクションの時間が共有されます。先行きが不透明な課題解決の道のりの課程で、ラーニングコーチは必要なときにブレーキをかけてくれる強い味方だと感じました。

 

◆専門家ではないからこその学び

アクション・ラーニングの最大の特徴は問題解決と同じくらい「個人の学び」が重視されます。授業では、アクション・ラーニングとexpertise (専門技術・知識)は切り離して考えるということが繰り返し強調されていました。私たちは専門家の集団ではなく、クライアントの組織の背景はもちろん、それに関連する専門的知識を有していないのです。その業界に特化したエキスパートとは到底呼べませんし、「素人」同然なのでアドバイスをするという訳ではありません。だからこそ質問を繰り返し、掘り下げ、データを集めていくことで一つずつクリアにしていく課程を踏みます。そして、そこから私たち自身もクライアントを通して「学ばせてもらう」ということが鍵になるのだとわかりました。

 

2月に発足してから最低でも毎週1回、オンラインでグループミーティングをしています。ミーティングの始まりは「1週間のうちにあった良い出来事」を1人ずつ話すことでアイスブレイクをしています。とても良いチームメンバーに恵まれたので、今後どのような結果になるのか楽しみです。

 

 

ディスカッションしながら浮かび上がった質問などを1枚にまとめて可視化させていきます。

 

 

看護×学びで現場教育を変える! 寺本美欧 目次

↑目次はこちらをクリック   

    

プロフィール

寺本美欧(てらもと・みお)
看護師、大学院生。上智大学総合人間科学部看護学科卒業後、都内大学病院ICU病棟に就職。その後、埼玉県の地域密着型病院脳卒中センターへ転職。2019年9月よりアメリカ・NY州にあるコロンビア大学教育大学院の修士課程に在学中。専攻は成人教育学とリーダーシップ。「すべての看護師に最高の教育の場を」をモットーに、看護師の継続教育のシステム構築を目指す。海外大学院留学記ブログ「看護師ちゅおのアメリカ大学院留学記」日々更新中。

この記事を評価する

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

TOP