2021.01.26
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【新連載】成長する組織づくり
~With/Afterコロナ時代の医療機関・介護施設経営~

vol.1医療機関・介護福祉施設における組織づくりとは?

  

編集部より

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、社会に新しい働き方=ニューノーマルをもたらしています。一方で、メディカルサポネットが実施した調査では、経営状況が悪化した医療機関・介護福祉施設は75%にものぼり、経営者は否応なく改善策の対応に迫られています。収益改善のための対策はもちろんですが、With/Afterコロナ時代に医療機関・介護福祉施設が成長し続けるためには、経営者・管理者が「成長する組織づくり」を実践することが求められています。この機会に自施設の組織形成についても立ち止まって確認してみませんか?医療機関・介護福祉施設での医療労務に精通されている、社会保険労務士のお2方に具体的な取り組みについてうかがう全6回シリーズです。

 

執筆/皆川 雅彦(特定社会保険労務士)、榎本 幸子(社会保険労務士)

編集/メディカルサポネット編集部

With/Afterコロナ時代の新しい働き方(ニューノーマル)を考えよう

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、働き方・人と人の関わり・生活・価値観など「世の中の仕組み」に大きな変化が起こりつつあります。それぞれの企業や組織では、現在のWithコロナ時代において「働き方が変わる」という現場に直面しており、経営者や管理職の皆様も 、「人事・労務管理のあり方はこのままでいいのか、どう変えていく必要があるのか」と日夜試行錯誤している状況ではないでしょうか。

 

一方で、リモートワークの急速な拡大に見られるように、社会や生活、仕事面などさまざまな場面でのデジタル化の進展にあわせ、労務管理の分野においても、デジタル手続き法の施行、会計・労務分野でのクラウド化、さらにAIやRPAの導入が日々進められている状況です。これは一般企業に限った話ではなく、医療機関・介護福祉施設においても同様です。

 

「働き方」についていえば、2019年4月厚生労働省が多様な働き方を選択できる社会の実現、1人1人がより良い将来の展望を持てるような社会を目指し、働き方改革関連法をスタートさせました。この「働き方改革」に、新型コロナウイルス感染症対応が加わり、新しいトレンドがさらに加速していると感じているのは、私だけでなく皆さま方も同じではないでしょうか。例えば、リモートワークや副業・兼業が広がっていること、これらは今後、新型コロナウイルス感染症が収束していくとしても後戻りすることはないでしょう。リモートワークが難しい医療介護現場においても、どのような「新しい働き方」を提示していくか考えていく必要があります。

 

ニューノーマル(New Normal)を直訳すると「新しい常態」という意味になります。ニューノーマルとは、社会に大きな変化が起こり、変化が起こる以前とは同じ姿に戻ることができず、新たな常識が定着することを指します。「働き方が変わる」ということは、組織のあり方や運営方法も変化し続けなくてはなりません。

 

 

あなたの組織はどこまで達成?強い組織が実践している5つのSTEP

いつもスタッフが元気に働いている組織は、下図に示すような組織形成の土台がバランスよく積みあがっています。「コロナ禍でなんだか自分の組織に元気がない」という声を耳にしますが、それはコロナのせいではなく、もともとそうなる要素を持っていたにすぎません。

 

では「成長する組織づくり」のためにどう取り組んでいけばいいのでしょうか?次回のコラムから順にご紹介していく、5つのSTEPを積み重ねることが大切だと私たちは考えています。STEP1からスタートし、STEP5まで順に進めていくことが大切です。組織づくりは1日にして成らず。各回1つのSTEPについて解説していきます。本コラムを読み進めながら皆さまの組織の現状確認をしたり、足りないものが何かを検討することで、強い組織を目指していきましょう。

 

土台形成:労務管理の現状分析と基盤整備

いつの時代でもそうですが、昨今の状況ではなおのこと「働くスタッフへの安心感」を醸成することが必要です。安心感を確保するための組織づくりの初めの一歩として、コンプライアンス経営ができているかどうか、今一度、労働条件や社内ルールの再確認・整備を進めましょう。

★ここに注目★簡単なチェックシートを元に自施設の労務管理レベルを確認しましょう

 

信頼獲得:組織としての一体感づくり

「安心感」の次のキーワードは、「信頼」です。心理学には、「心理的安全性」という概念があります。組織の中で「信頼」をベースに良好なコミュニケーションが取れる仕組みを創っていきましょう。

★ここに注目★コミュニケーションUP術として、「カラータイプ診断」「交流分析」について紹介します

 

制度構築:人事評価制度・賃金制度の整備

多様な働き方が広がる中で、「会社の方針」と「自分の役割」を理解し、将来のキャリアビジョンを描くこともできるような、わかりやすいシンプルな人事評価制度と報酬のしくみ(賃金制度)をつくりましょう。2021年4月に中小企業にも適用が拡大される「同一労働同一賃金」への対応も急務です。

★ここに注目★「同一労働同一賃金のガイドライン」、最高裁判例についても解説をします

 

維持:モチベーション持続にむけて

働く場の環境整備が整った後、その次に来るものは「モチベーションの持続」です。一人ひとりが高いモチベーションを持ち、目標に向かって自律的に働けるような組織づくりの取り組み事例を、モチベーション理論を交えながら紹介します。

★ここに注目★モチベーションUPのための秘訣をお伝えします

 

進化:ニューノーマルに対応した管理業務のデジタルシフト化

経営という観点からすると、管理業務の効率化も重要なテーマです。デジタル手続き法の全面施行に向けて、電子申請のスムーズな運用、勤怠管理・給与計算業務のクラウド化について、導入の手順やクラウドツールの紹介をします。

★ここに注目★自施設にフィットしたツールをみつけましょう

 

<図>STEP別 組織作りと持続的成長のイメージ

 

新しい働き方=ニューノーマルに向け、With/Afterコロナ時代に医療機関・介護福祉施設が「成長する組織づくり」を進めるために、どのようなステップで取り組んでいけばいいか、お伝えしていきます。皆さまの組織づくりの一助になれば幸いです。

 

Profile

皆川雅彦(MINAKAWA MASAHIKO)/特定社会保険労務士
社会保険労務士法人葵経営 代表社員、労働保険事務組合 葵経営 会長

<保有資格>経営学修士(MBA)、医療労務コンサルタント

大学卒業後、日立市役所に勤務。製造業の取締役及び代表取締役を歴任し、1999年社会保険労務士事務所を開設。会社経営に携わっていた時、経営者は孤独であり本当に相談できる相手がいないことを痛感。社会保険労務士として、人事労務の分野はもちろん、経営全般について経営者を支える身近な存在になるべく、「お役にたちます社長のために」の理念のもと、経営・人事労務改革のサポートを心掛けている。自らの企業経営の経験も生かし、人事労務のエキスパートとして、人材育成にも注力している。

Profile

榎本幸子(ENOMOTO YUKIKO)/社会保険労務士
社会保険労務士法人葵経営 かながわオフィス所長

<保有資格>カラータイプ®インストラクター1級、医療労務コンサルタント、日本実務能力開発協会認定コーチ

大学院修了後、化学メーカーで研究開発業務に約5年従事した後、さまざまな転機を迎えても女性が働きやすい職場づくりを目指し、社会保険労務士の資格を取得。税理士法人での勤務を経て、社会保険労務士事務所を開設。2019年社会保険労務士法人葵経営にかながわオフィス所長として合流、現在に至る。色彩心理を用いたカラータイプ®インストラクターとして社内のチームビルディング、管理業務の効率化(クラウド導入支援)を推進し、ものづくりからひとづくりまで幅広く取り組んでいる。

 

 

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