2018.09.26
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【各論8】薬学管理料改定は薬局・薬剤師に寄せる期待を反映

2018年度 診療報酬・介護報酬ダブル改定の要点

2018年3月17日(土)は東京、3月25日(日)は大阪にて、マイナビ主催の診療報酬・介護報酬改定セミナーが開かれました(第1部として診療報酬・介護報酬改定の、第2部として調剤報酬改定のポイントを解説しました)。講師にお迎えしたのは、ベストセラー『医療費のしくみ』の著者でもあり、診療報酬・介護報酬の裏側まで知り尽くす斯界の第一人者、高崎健康福祉大学准教授の木村憲洋氏です。今回は、診療報酬改定の各論7として、調剤報酬の調剤技術料に関する改定のポイントを解説します。

薬学管理料改定は薬局・薬剤師に寄せる期待を反映

今回は診療報酬改定の各論⑧として、「薬学管理料」の改訂を中心に解説します。

■かかりつけ薬剤師による服薬指導を評価

地域包括ケアシステムの中で薬剤師のかかりつけ化を推進するため、2016年度の診療報酬改定で「かかりつけ薬剤師指導料」が新設されました。以来、かかりつけ薬剤師はそうでない薬剤師より疑義照会の割合が高いことが明らかになっており、かかりつけとなることで薬剤師が本来の職能をよりよく発揮し、薬物治療に貢献している様が伺えます。

 

今次改定では、この好ましい流れを後押しするため、「かかりつけ薬剤師指導料」が70点から73点へ、「かかりつけ薬剤師包括管理料」が270点から280点へ引き上げられました(いずれも処方箋受付1回ごと)。また、それぞれの算定要件、施設基準にもいくつか変更が加えられています。

 

まず、かかりつけ薬剤師指導料の算定要件として、かかりつけ薬剤師の業務内容や役割、費用などを説明し、患者の同意を得ることが盛り込まれました。同意取得は当該薬局に複数回来局している患者に対して行い、同意が得られたら次回の処方箋受付時以降に同指導料を算定できます。

 

このときに用いる同意書の様式例も厚生労働省が公表しており、患者が「かかりつけ薬剤師に希望すること」を記載する欄や、薬剤師が「当該患者にかかりつけ薬剤師が必要であると判断した理由」を記載する欄の存在が目を引きます。すなわち、かかりつけとなる入口の時点から、従来以上に丁寧な関わりが求められているといえるでしょう。

  

 

※厚生労働省「平成30年度診療報酬改定の概要調剤」より

  

また、かかりつけ薬剤師指導料とかかりつけ薬剤師包括管理料の施設基準のうち、「施設基準の届出時において、当該保険薬局に6月以上在籍していること」とされていたものが「1年以上在籍」と変更されました。「当該保険薬局に週32時間以上勤務している」という勤務時間の要件は、育児・介護休業法に定める短時間勤務を行う場合の例外規定(32時間以上勤務する他の保険薬剤師を届け出た保険薬局において、育児・介護休業法の規定により労働時間が短縮された場合にあっては、週24時間以上かつ週4日以上である場合を含む)が設けられました。

■薬剤服用歴管理指導料はお薬手帳を活用しないと減算

薬剤服用歴管理指導料は、処方箋受付1回ごとに、「原則6月以内に処方箋を持参した患者に行った場合」が38点から41点へ、「それ以外の患者に対して行った場合」が50点から53点へ、「特別養護老人ホーム入所者に対して行った場合」が38点から41点へ、それぞれ引き上げられました。ただし、手帳を持参していない患者や調剤基本料1以外の薬局については、患者の来局の頻度や回数にかかわらず53点を算定します。

 

なお、お薬手帳の活用実績が十分でない薬局は13点が減算される薬剤服用歴管理指導料の特例が新設されたことに注意が必要です。

  

※厚生労働省「平成30年度診療報酬改定の概要調剤」より

    

■ポリファーマシー問題への薬剤師の主体的な関与を評価

薬剤師が主体的に関与して不必要なポリファーマシーを削減するため、「服用薬剤調整支援料」が新設されました。6種類以上の内服薬(特に規定するものを除く)が処方されていた患者について、保険薬剤師が処方医に対して文書で提案した結果、当該患者に調剤する内服薬が2種類以上減少し、その状態が4週間以上継続した場合に、月1回に限り125点を算定できます。

 

※厚生労働省「平成30年度診療報酬改定の概要調剤」より

  

■薬剤師の訪問薬剤管理指導を評価

薬剤師による在宅患者への訪問薬剤管理指導を評価するため、「在宅患者訪問薬剤管理指導料」が見直されました。従来は対象者について「同一建物居住者以外」と「同一建物居住者」という2つの区分であったところ、「単一建物診療患者」の人数に応じて点数が決まるようになります。

 

従来の「同一建物居住者の場合」(300点)に比べて、「単一建物診療患者2~9人」では20点の引き上げになりますが、「単一建物診療患者10人以上」では10点の引き下げになることに注意が必要です。

 

※厚生労働省「平成30年度診療報酬改定の概要調剤」より

  

以上、調剤報酬の薬学管理料に関する主要な改定ポイントを見てきましたが、どれを取ってもこれからの薬局・薬剤師の果たすべき使命がうかがえる内容になっているのではないでしょうか。薬剤師の職能を主体的に発揮することが点数獲得にもつながっていくことを銘記したいものです。

  

メディカルフォーラム当日の配布資料について

 メディカルフォーラム当日の配布資料が、以下からダウンロードが可能です。

 

■【第一部】診療報酬・介護報酬改定 当日配布資料

■【第二部】調剤報酬改定の概要と経営戦略 当日配布資料

 

講師・監修者プロフィール

木村憲洋(きむら・のりひろ)
高崎健康福祉大学 健康福祉学部 医療福祉情報学科 准教授


1971年、栃木県足利市生まれ。武蔵工業大学工学部機械工学科卒業後、神尾記念病院、医療法人杏林会・今井病院を経て、現職。著書に『医療費のしくみ』『病院のしくみ』『薬局のしくみ』(いずれも日本実業出版社)などがある。

 

 

メディカルサポネット編集部

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