2021.03.17
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「等身大のICT」で変わる訪問介護事業所のコミュニケーション

編集部より

スタッフ間のコミュニケーションに課題を抱える医療や介護の現場は多いもの。特にコロナ禍の状況にあってはなおさらでしょう。しかし、上手にICTを活用することで、コミュニケーションのあり方をがらりと変えることができます。その一例として、訪問介護事業などを展開する有限会社SCC大阪がビジネスチャットツール「Chatwork」を導入した経緯とその活用法について、関係者の皆さんに伺いました。

 

取材・文/中澤 仁美(ナレッジリング)

編集/メディカルサポネット編集部

    

   

【お話を伺った方】※敬称略

五島峰(有限会社SCC大阪 統括マネジャー)

芝谷知子(有限会社SCC大阪 介護事業部 管理者)

藤井香苗(Chatwork株式会社 ビジネス本部 カスタマーエクスペリエンスユニット 事業戦略部 インダストリーチーム) 

「すき間時間」を使って報・連・相できる環境を

――貴社でICT活用を検討するようになった経緯を教えてください。

 

五島:訪問介護事業部が動き始めてから、スタッフの「すき間時間」が少なからず発生していることに気付いたのが直接のきっかけです。例えば、ホームヘルパーが移動する際に、事務所に戻るほどの時間はないけれど、次の訪問先に行くには早すぎる……という微妙な時間が発生して無駄になっていたのです。一方で、報告や連絡、相談といった業務は、その日の最後に事務所に戻ってから行うため、労働時間の超過が発生しやすい状況でもありました。出先のすき間時間をうまく活用すれば、労働環境が改善されてスタッフも健康的に働くことができ、利用者さんへのより良いケアにもつながると考えて、2012年ごろからICTの活用を検討し始めました。

 

ICT化に向けて対象となるヘルパーや各部署との調整をはかった五島さん

 

芝谷:1人の利用者に複数のホームヘルパーが関わることも多い訪問介護では、サービス提供時に気付いたことを関係者といち早く共有することが大切です。「部屋の汚れが目立つようになった」「食事や会話で気になることがあった」といった情報が、次の訪問時に役立つことも多いからです。しかし、かつてはホームヘルパーの報告を受けた事務スタッフが他のホームヘルパーに電話やメールで個別連絡していたため、かなりの手間と時間を要していました。こうした部分でICTを生かし、よりスムーズな情報共有を実現することも求められていたように思います。

 

五島:いくつかのコミュニケーションツールを試す中で、知り合いの経営者からChatworkを推薦してもらい、興味を持ちました。さっそく3人の常勤スタッフがChatwork Academy(研修施設)で研修を受け、2日間ほどかけて使い方を習得してもらうことに。そこで持ち帰った知見をもとに、まずは他の常勤スタッフたちがChatworkの無料版を使いこなせるように勉強しました。そして、当事業所にマッチするサービスであることを十分に確認した上で、2017年11月に有料版へ移行し、登録ヘルパーも含めて全社で一斉導入となりました。費用については、自治体のICT導入支援事業補助金を活用することで、事業所負担を最小限に抑えることができました。

シニア層のスタッフにも寄り添いつつ導入を推進

――Chatworkを全社で導入する際、工夫した点があれば教えてください。

 

五島:Chatworkは機能も使い方もシンプルなので、初心者にも分かりやすいです。ただ、当社の登録ヘルパーには60歳代後半から70歳代前半の人も多いため、新しいデジタルツールに適応してもらうための準備が必要でした。具体的には、Googleアカウントを付与したスマートフォン端末を用意し、Chatworkの設定を済ませてから全スタッフに貸与し、最初のステップでつまずかないよう配慮しました。その上で常勤スタッフがChatworkの使い方を指導したところ、想像よりずっと早い段階で年配のホームヘルパーも使いこなせるようになりました。

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