新型コロナウイルス感染症の流行が懸念される中、インフルエンザワクチンの供給が10月から始まります。厚生労働省が発表した8月31日から9月6日までの週のインフルエンザ患者報告数は、前年同期と比べて3810人少なかったですが、これから流行してくる可能性もあります。インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の同時流行に備えて、⼀般社団法⼈⽇本感染症学会が、⼀般のクリニックや病院での外来診療を対象にした「提言」を出しています。症状が類似しているため、区別する際の指針の一つとしての活用が期待されます。⼩児については別項を設けて解説されていますが、ここでは割愛します。COVID-19の状況は流動的であるため必要に応じて改訂を⾏っていくそうです。提言の一部を抜粋して紹介します。

編集:メディカルサポネット編集部

インフルとコロナの両方の可能性を考え対応を

 

日本感染症学会の提言「今冬のインフルエンザとCOVID-19に備えて」によると、COVID-19とインフルエンザとの合併が報告されているようです。インフルエンザとの混合感染は、COVID-19による⼊院患者の4.3~49.5%に認められており、インフルエンザ合併例では、⿐閉や咽頭痛が多く認められる傾向にあるといいます。インフルエンザ⾮合併患者と比べて、重症度や検査所⾒に差異はみられなかったとされる⼀⽅で、B型インフルエンザとの合併症例は重症化したという報告もあります。COVID-19肺炎とインフルエンザ肺炎の鑑別も試みられており、⾎液検査所⾒の多変量解析やCT 所⾒を⽤いた解析も報告されています。

 

ただし、外来診療の場において、確定患者と明らかな接触があった場合や、特徴的な症状(インフルエンザにおける突然の⾼熱発症、COVID-19における味覚障害や嗅覚障害など)がない場合、臨床症状のみで両者を鑑別することは困難だとしています。COVID-19 患者に遭遇する可能性が⾼い地域では、発熱患者や呼吸器症状を呈する患者を診る場合は、インフルエンザと COVID-19 の両⽅の可能性を考える必要があります。

  

原則として、COVID19 の流⾏がみられる場合には、インフルエンザが強く疑われる場合を除いて、できるだけ両⽅の検査を⾏うことを推奨しています。検体はなるべく同時に採取します。SARS-CoV-2 の検査の供給は限られているため、流⾏状況によっては先にインフルエンザの検査を⾏い、陽性であればインフルエンザの治療を⾏い、経過を⾒ることも考えられるとしています。 

 

⾃施設で検体をとる場合には、感染防御に留意する必要があり、交差感染を防⽌するために、時間的、空間的に隔離して検査を⾏うことが薦められています。診察室で検体を採取した場合は、次の患者が⼊室する前に⼗分な換気を⾏うことが必要とされています。⾃施設で検体採取が困難な場合は、地域の検体採取センターに検査を依頼することも可能です。

  

今冬は、COVID-19とインフルエンザの同時流⾏を最⼤限に警戒すべきで、医療関係者、⾼齢者、ハイリスク群の患者も含め、インフルエンザワクチン接種が強く推奨されています。SARSCoV-2のワクチンについては、現在開発中ですが、臨床に導⼊されるようになれば、医療従事者、ハイリスク者を中⼼に、接種対象者を規定することが必要とされています。

 

出典:⼀般社団法⼈⽇本感染症学会提⾔「今冬のインフルエンザと COVID-19 に備えて」

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