2019.06.19
3

医薬品添付文書の新記載要領が施行—現場が注意すべきポイントは?

メディカルサポネット 編集部からのコメント

医療用医薬品の添付文書の記載要領が20年ぶりに改正され、2019年4月1日に施行されました。主な改正内容は(1)「原則禁忌」「慎重投与」の廃止、(2)「特定の背景を有する患者に関する注意」の新設、(3)項目の通し番号の設定、(4)後発医薬品、バイオ後続品の情報提供の充実の4点。改正の最大のポイントである「原則禁忌」の廃止は、医師・薬剤師の間で解釈に大きなバラツキがある実情を踏まえたものです。今回の改正は、重複記載の解消や関連項目の集約化が図られていて、患者さんにとっても、医療従事者にとっても利便性の向上が期待されます。

  

医療用医薬品の添付文書の記載要領が改正され、4月1日に施行された。20年ぶりとなる改正の最大のポイントは「原則禁忌」の廃止だ。従来「原則禁忌」に記載されていた事項は、基本的に「特定の背景を有する患者に関する注意」に移行するが、一部「禁忌」に移行するもの、それ以外の項目に移行するものもあり、現場の医療従事者は十分注意する必要がある。改正の経緯、これまで決められた取り扱いをあらためて整理した。

 

「原則禁忌」の解釈に大きなバラツキ

添付文書はこれまで1997年に通知された旧記載要領に基づいて作成されてきたが、厚生労働省は「より理解しやすく活用しやすい内容」にするため、2017年6月の通知で記載要領を改正(図参照)。2019年4月から一斉に適用し、既に承認されている医薬品の添付文書についても5年間の経過措置期間(2024年3月末まで)中に順次新記載要領に基づいて改訂するよう製薬団体に求めた。

 

  

記載要領の主な改正内容は①「原則禁忌」「慎重投与」の廃止、②「特定の背景を有する患者に関する注意」の新設、③項目の通し番号の設定(「警告」以降の全項目に番号を付与)、④後発医薬品、バイオ後続品の情報提供の充実(「警告」から「その他の注意」までの使用上の注意等の記載を原則、先発品・先行品と同一とする)—の4点。

 

改正の目玉である「原則禁忌」の廃止は、医師・薬剤師の間で「原則禁忌」に対する解釈に大きな差がある実情を踏まえたもの。全国の医師・薬剤師を対象に2008〜10年に実施された厚生労働科学研究の大規模調査で、医師・薬剤師とも「原則禁忌は禁忌と同等」とする回答と「原則禁忌は慎重投与・併用注意と同等」とする回答が同じ割合になるなど解釈にバラツキがある実態が明らかになり、「原則禁忌」は廃止するのが妥当と判断した。

スタチン・フィブラート併用で先行対応

今回の記載要領改正で、これまで「原則禁忌」に記載されていた事項の多くは、「禁忌」か、新設される「特定の背景を有する患者に関する注意」の「合併症・既往歴等のある患者」に記載されることとなるが、厚労省はこれ以外の項目に移行するケースや削除するケースもあり得るとしている。

  

厚労省は2018年10月、スタチン系薬剤とフィブラート系薬剤の併用に関して「原則禁忌」としていた「腎機能に関する臨床検査値に異常が認められる患者」を「重要な基本的注意」に移行することを決め、全国に通知した。欧米では一部の薬剤を除いて腎機能低下患者にも併用可能とされており、動脈硬化性疾患の予防・治療上、スタチンとフィブラートの併用が臨床現場で求められているとの日本動脈硬化学会の要望を受け、新記載要領施行前に先行して対応した。

過敏症既往患者への抗生物質使用が「禁忌」に

これまで厚労省から示されている①「原則禁忌」から「禁忌」への主な移行例、②「原則禁忌」から「特定の背景を有する患者に関する注意」への主な移行例、③「原則禁忌」から「重要な基本的注意」への主な移行例─を整理したのが表。

  

 

  

 

「禁忌」に移行するケースは、国内外のガイドライン、海外添付文書・類薬添付文書などで「禁忌」とされていることなどを理由に、厚労省が製薬メーカーや関係学会の意見を聴取した上で、3月11日の薬事・食品衛生審議会安全対策調査会に提案したもの。厚労省は3月28日付の通知で、製薬団体に対し速やかに添付文書を改訂するよう指示した。

 

これにより、例えばセフェム系・ペニシリン系・グリコペプチド系・ペネム系・カルバペネム系抗生物質については、「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者」が明確に禁忌の扱いとなるため、現場の医療従事者は注意する必要がある。

 

「原則禁忌」から「禁忌」に移行するケースは限定的で、大半は「特定の背景を有する患者に関する注意」に移行するとみられているが、厚労省は「禁忌」への移行を検討している医薬品もまだあるとしており、引き続き厚労省や審議会の動きを注視していきたい。

 

武内聡 厚労省医薬・生活衛生局医薬安全対策課主査の話 「原則禁忌」から「禁忌」に移行するケースについては安全対策調査会にかける案件がまだ残っており、現在、関係学会の意見を聴取している。有効成分の数でいうと10にも満たない数。すべて調整できれば、あと1回の調査会で終わる予定だ。

 

スタチン・フィブラート併用の原則禁忌の取り扱い見直しは、動脈硬化学会の要望があったため、たまたまこの時期(=2018年10月)になった。

 

今回の改正は5年間の経過措置期間があるためフォーマットが違う添付文書が共存する時期が続くことになるが、基本的に注意喚起の中身を変えているつもりはないので、混乱が起きないようにしたい。

 

 出典:Web医事新報

この記事を評価する

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

TOP