2023.06.01
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睡眠時無呼吸症候群[私の治療]

メディカルサポネット 編集部からのコメント

睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)について、小賀 徹 川崎医科大学呼吸器内科学教室主任教授が診断のポイントと、治療方針・処方の組み立て方を解説します。

睡眠時無呼吸症候群のうち閉塞性睡眠時無呼吸は、成人男性の約20%,閉経後女性の約9%という疫学調査もあり、基礎知識を得ておいた方がいい病気と言えるでしょう。

                  

睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)は,睡眠中に無呼吸が繰り返されることにより生じる症状や,無呼吸に起因する様々な合併症を起こす症候群である。睡眠時無呼吸には,上気道の虚脱により生じ呼吸努力を伴う閉塞性と,呼吸中枢や神経・筋などの障害による呼吸努力を伴わない中枢性がある。特に閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea:OSA)患者の頻度は高く,成人男性の約20%,閉経後女性の約9%との最近の疫学調査もある。

                        

▶診断のポイント

頻度の高い疾患で,肥満・眠気といった典型的な患者像にとらわれてはいけない。むしろ患者により病態・病像は異なり,症状(いびき,眠気,夜間頻尿,倦怠感など),背景リスク(肥満,小顎・短頸,高齢など),合併症(高血圧,不整脈,心不全,糖尿病,脳卒中など),呼吸器疾患〔咳,喘息,慢性閉塞性肺疾患(COPD)など〕など,いろいろな角度から本疾患を疑い,疑えば検査をすることが重要である。

       

▶私の治療方針・処方の組み立て方

中等症以上のOSAの第一選択治療は,持続気道陽圧(CPAP)療法である。保険適用は脳波を含む睡眠検査で無呼吸低呼吸指数(AHI)20以上,簡易検査で40以上である。CPAPの有効性のエビデンスは豊富であり,基準を満たせば,積極的に導入を試みるべきである。従来は,「眠気などの症状やQOLの改善」が主な治療目的であったが,現在は,「将来の心血管障害予防も含めた生命予後の改善」も同時に重要であるとされる。リスク因子を考慮した合併症も含めた全身的な観点から,治療管理を施していく必要がある。

  

CPAP基準を満たさないOSAやCPAP不耐の場合,口腔内装置(OA)の適応である。近年,CPAP継続困難な患者に舌下神経電気刺激療法が承認され,今後の展開が注目される。

  

中枢性睡眠時無呼吸(CSA)の場合,その発生に寄与する基礎疾患(心不全など)の治療を適正化することを優先し,またそれ自体が治療になる。それでもCSAが残存する場合,CPAP,酸素療法,adaptive servo ventilation(ASV)などを考慮する。

       

治療の実際

【軽症OSA】

         

軽症OSAやCPAP困難な場合,OAの適用である。通常歯科・口腔外科医が作成し,AHIへの効果と,歯や顎関節の疼痛などをみながら調整する。また,睡眠中の仰臥位以外でAHIが改善する体位依存性がある場合,体位指導を行う。

    

【中等症~重症OSA】

         

CPAP療法を導入する。圧設定は,自動調節型(auto CPAP)と固定圧に分類される。前者は,上限圧と下限圧を設定すれば,呼吸イベントの状況に合わせて圧力がその範囲内で自動変動するタイプで,タイトレーション不要の手軽さがある。後者は,睡眠中に一定の陽圧により呼吸イベントを制御し,重症患者などでしっかり圧をかけたいときに有効だが,通常処方圧設定のため,タイトレーションが必要である。入院してタイトレーションを行うのが理想だが,現状,外来で導入するケースが多いこともあり,以下の処方例がある。

   

 一手目 :auto CPAP 4~8cmH2Oにて処方

  

 二手目 :〈処方変更〉処方圧変更

  

遠隔もしくはカードデータで使用状況を確認し,AHIが残存している場合,マスクリークがあればフィッティングを確認する。睡眠中の圧変動を確認し,上限が頭打ちになっている場合は,上限圧を2cmH2Oほど上げて変更し経過をみる。患者の鼻への刺激の訴えが強いときなどは,上限圧を1~2cmH2O落として様子をみる。このようにしながら患者の負荷が少なく継続できて,かつできるだけAHIが正常範囲内(5未満)になるよう設定圧を決定する。

   

注意事項:OSAに対しCPAP治療を開始すると,二次的にCSAが出現してAHIが増えたり残ったりすることがある。これは複合性睡眠時無呼吸(complex SAS)とも呼ばれるが,時間経過でCSAが自然に改善することがあり,そのまま様子をみるか,上限圧をやや下げるなどしてAHIの推移をみていく。

     

▶ケアおよび在宅でのポイント

遠隔やカードデータにより,CPAP使用状況を分析できる。AHIだけでなく,アドヒアランス,マスクリーク,圧変動をよく確認する。使用は,平均4時間,週5日以上を目標に指導する。良好なアドヒアランスの維持のため,CPAPの使用意義を患者に十分に説明することが重要である。遠隔モニタリングを導入すれば,患者の受診回数を減らすこともできる。

   

CPAP以外に,肥満患者においては減量指導も並行して行う。飲酒や睡眠衛生に関しても改善指導を行う。      

   

小賀 徹(川崎医科大学呼吸器内科学教室主任教授)

      

 出典:Web医事新報

  

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