2023.05.01
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睡眠障害(ナルコレプシーを除く)[私の治療]

メディカルサポネット 編集部からのコメント

現代日本で多くみられる睡眠障害について三島和夫 秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座教授が解説します。睡眠障害国際分類第3版(ICSD-3)では、大きく7つに分けられます。①不眠症②睡眠関連呼吸障害群③中枢性過眠症群④概日リズム睡眠・覚醒症候群⑤睡眠時随伴症群⑥睡眠関連運動障害群⑦その他の睡眠障害です。診断のポイントや処方の組み立て方を見てみましょう。

                  

睡眠の異常により日中の機能障害が生じる病態の総称である。睡眠の異常には,①睡眠の質や量,出現パターンの異常(不眠,リズム障害など),②覚醒機能の異常(過眠),③睡眠中の異常な精神身体現象(無呼吸,異常行動,不随意的な筋活動,自律神経活動など)がある場合,に大別される。

                    

診断のポイント

睡眠障害国際分類第3版(ICSD-3)1)では,睡眠障害は症状や病態から大きく7群に大別される(表1)。多くの睡眠障害では,不眠や過眠が共通して認められるため誤診しやすい。各疾患の特徴をふまえて問診し,必要に応じて終夜睡眠ポリグラフ検査,反復睡眠潜時試験を実施して,確定診断と重症度の判定を行う。

    

        

聴取すべき代表的な症状として,不眠症状,過眠症状,呼吸異常(いびき,息こらえ,20秒以上の呼吸停止),異常感覚(四肢などのムズムズ感,ほてり,いらいら,虫が這う,電気が走るなど多彩),不随意運動(こむら返り,ミオクローヌス,痙攣),睡眠中の異常行動(徘徊,激しい手足の動き,絶叫,大きな寝言など),自律神経症状その他(動悸,頻拍,パニック様症状,悪夢など)があり,これらが複数みられることもある。特徴的な症状の有無をもとに,順次鑑別を進める。以下に罹患頻度が高く診療でしばしば遭遇する各群の代表的疾患について症状をまとめる。

   

①不眠症:不眠症状(入眠困難,中途覚醒,早朝覚醒)のために,日中の機能障害が認められる。日中の機能障害には,倦怠感,集中力・注意・記憶の障害,抑うつ気分や焦燥感,意欲低下,眠気,能率低下やミス,頭痛,消化器症状,睡眠に関する不安などがある。

  

②閉塞性睡眠時無呼吸障害:睡眠中に咽頭・喉頭周囲の骨格筋の弛緩により気道が閉塞し,夜間の激しいいびきや換気停止による血中酸素分圧の低下,それに引き続く覚醒反応および換気回復を頻繁に繰り返す。睡眠が頻繁に中断するため,不眠のみならず日中の過眠を呈する。

  

③中枢性過眠症群(ナルコレプシー,特発性過眠症など):別稿「ナルコレプシー」を参照。

  

④睡眠・覚醒相後退障害:体内時計の調節異常のため,睡眠時間帯が大幅に遅れた状態のまま固定する。典型的には午前3~5時以降でないと入眠できず,午前9~11時以降でないと覚醒できない。入眠困難型の不眠症と誤診されることが少なくない。

  

⑤レム睡眠行動障害:レム睡眠時の抗重力筋の生理的弛緩が障害されるため,夢体験と一致した大声の寝言や粗大な体動が出現する。α-シヌクレイノパチー(パーキンソン病やレビー小体病)に先行して出現することが多い。

  

⑥レストレスレッグス症候群:夕方から夜間に増悪する下肢や上肢に生じるムズムズ,電撃痛などと表現される異常感覚のため不眠に陥る。下肢や上肢を動かしたくなる強い衝動があり,動かすことで異常感覚が軽減する。

  

【検査所見】

  

終夜睡眠ポリグラフ検査:睡眠中の脳波,呼吸,四肢および顎の骨格筋活動,眼球運動(レム睡眠とノンレム睡眠の識別),心電図,酸素飽和度,胸壁の運動,腹壁の運動などを記録することで睡眠深度の経時的推移,睡眠の質と量の異常,睡眠に随伴した異常な精神・身体徴候を同定する検査方法である。

  

反復睡眠潜時検査:前夜の終夜睡眠ポリグラフ検査終了後の翌朝から,日中2時間おきに,4回または5回にわたり,脳波,眼球運動,筋電図を繰り返し測定する(各20分)。各セッションの睡眠潜時,レム睡眠潜時を検出することで,過眠症状の有無やナルコレプシーの診断が可能になる。

                

▶私の治療方針・処方の組み立て方

各睡眠障害には固有の治療法が存在する。不眠症状があるからといって睡眠薬などの催眠鎮静系薬剤を用いると,効果が認められないばかりか,症状が悪化する懸念があることに留意する。また,特に不眠症や睡眠・覚醒相後退障害では,薬物療法と睡眠習慣指導を併用することで効果が増強し,過量処方や副作用のリスクを低減することができる 2)。

  

【治療上の一般的注意&禁忌】

〈注意〉

    

GABA-A受容体作動薬(ベンゾジアゼピン受容体作動薬)は,連用により身体依存を生じることがある。高齢者では認知機能障害,依存,転倒・骨折リスクがあり,慎重な処方が求められる。平成30(2018)年度診療報酬改定により「3種類以上の睡眠薬の投薬を行った場合」もしくは「4種類以上の抗不安薬および睡眠薬の投薬を行った場合」および「ベンゾジアゼピン受容体作動薬である睡眠薬を1年以上連続して同一の用法・用量で処方している場合」にそれぞれ処方料および処方箋料が減算される。

  

ガバペンチン エナカルビルは,ドパミンアゴニストによる治療で十分な効果が得られない場合,または使用できない場合に限り投与すること。国内製造販売後臨床試験においてプラセボ群と比較して有意な臨床効果が確認されなかった。

  

〈禁忌〉

   

スボレキサントとトリアゾラムは,CYP3Aを強く阻害する薬剤との併用は禁忌。

  

ゾルピデム酒石酸塩,ゾピクロンおよびトリアゾラムにより睡眠随伴症状(夢遊症状等)として異常行動を発現したことがある患者。

  

治療の実際

【不眠症】

  

現在国内で用いられる主な睡眠薬を表2に示した。薬剤選択にあたっては,オレキシン受容体拮抗薬,メラトニン受容体作動薬,非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(Z-drug)を第一選択薬とする。神経発達症の入眠困難には,メラトニンを用いる。睡眠習慣指導の併用が大事である。長引く不眠体験によって寝床で目が冴えるという条件づけができているため,眠くなったときだけ就床する,睡眠と性生活以外に寝床を使わない,眠れないときは寝室から出る,昼寝をしない,などの指導を行う(刺激制御法)。  

  

                 

また,不眠症患者はできるだけ長く眠ろうとして就床時間が長くなる傾向が強いが,眠れずに床上で苦しむ体験が不眠に対する予期不安と増悪をまねく。そのため,就床時間を実際に眠れている時間よりやや長い程度に制限し,睡眠への不全感に悩む時間を抑え,かつ軽度の断眠効果による不眠の改善を期待する(睡眠制限法)。

    

一手目 :デエビゴⓇ5mg錠(レンボレキサント)1回1錠1日1回(就寝前),またはベルソムラⓇ15mg錠(スボレキサント)1回1錠1日1回(就寝前)

一手目 :〈入眠困難型,高齢者〉ロゼレムⓇ8mg錠(ラメルテオン)1回1錠1日1回(就寝前)

一手目 :〈神経発達症〉メラトベルⓇ顆粒小児用(メラトニン)1回1~4mg 1日1回(就寝前)

   

【閉塞性睡眠時無呼吸障害】

   

経鼻持続陽圧呼吸装置(CPAP)や下顎前方固定装置の使用などの非薬物療法の適応を第一に考える。無効例,重症例では口蓋垂軟口蓋咽頭形成術も考慮する。

   

中枢性過眠症群(ナルコレプシー,特発性過眠症など)】

   

別稿「ナルコレプシー」を参照。

   

【睡眠・覚醒相後退障害】

   

高照度光療法およびメラトニン(受容体作動薬)を適宜併用もしくは単独で用いて,体内時計の位相前進を試みる。中等度以上の症例では睡眠医療専門施設に依頼する。定時の起床の声かけや食事,入浴など社会的同調因子を強化するための生活指導も重要である。

   

【レム睡眠行動障害】

  

一手目 :リボトリールⓇ0.5mg錠(クロナゼパム)1回1~2錠1日1回(就寝前),またはツムラ抑肝散エキス顆粒2.5g(抑肝散)1回1~2包1日1回(就寝前)

   

レストレスレッグス症候群】

   

一手目 :ビ・シフロールⓇ0.125mg錠(プラミペキソール塩酸塩水和物)1回1錠1日1回(就寝前)症状に応じて0.75mg/日を超えない範囲で適宜増減,またはニュープロⓇ2.25mg パッチ(ロチゴチン)1回1枚1日1回(肩,上腕部,腹部,側腹部,臀部,大腿部のいずれかに貼付)より開始し,症状に応じて6.75mg/日を超えない範囲で適宜増減

   

二手目 :〈効果不十分の場合,一手目に追加〉リボトリールⓇ0.5mg錠(クロナゼパム)1回1~2錠1日1回(就寝前),またはレグナイトⓇ300mg錠(ガバペンチン エナカルビル)1回2錠1日1回(就寝前)

  

【文献】

1)American Academy of Sleep Medicine:International classification of sleep disorders. 3rd ed. American Academy of Sleep Medicine, 2014.

2)三島和夫, 編:睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン. じほう, 2014.

   

三島和夫(秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座教授)

  

 出典:Web医事新報

  

  

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