2022.01.11
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調剤料再び俎上に、中医協が詰めの議論へ
2022年度診療報酬改定、焦点は点数設定

メディカルサポネット 編集部からのコメント

政府は2022年度の予算編成で、診療報酬の本体を0.43%引き上げる一方、薬価・材料価格を合わせて1.37%引き下げることを決めました。それに先立って、診療報酬改定の基本方針も決め、今後は、中央社会保険医療協議会がそれらを踏まえて点数配分の詰めの議論が進められます。薬局関連では、大手チェーン薬局や同一敷地内薬局への引き締め強化は既定路線で、薬局の収入に占めるウエートが大きい調剤料の見直しが再び俎上に載っています。今回は診療報酬を巡る動きを整理しました。

  

 2022年度の予算編成を巡り、政府は、診療報酬の本体を0.43%引き上げる一方、薬価・材料価格を合わせて1.37%引き下げることを決めました。それに先立ち、診療報酬改定の基本方針も決まり、年明け以降は、中央社会保険医療協議会がそれらを踏まえて点数配分の詰めの議論を進めます。薬局関連では、大手チェーン薬局や同一敷地内薬局への引き締め強化は既定路線で、薬局の収入に占めるウエートが大きい調剤料の見直しが再び俎上に載りました。薬局への評価はどう変わるのか。診療報酬を巡る動きを整理しました。

 

※この記事は「薬局経営NAVI」とのタイアップ企画です。

 

写真提供:財務省 

写真提供:財務省

 

1.報酬本体、実質0.23%引き上げへ

 

 22年度診療報酬の改定率は、後藤茂之厚生労働相と鈴木俊一財務相が22日に行った予算折衝で正式決定しました。医療行為の対価に当たる本体部分は看護職員の賃上げと不妊治療の保険適用の費用を含めて0.43%引き上げます。

 

 一方、薬価は1.35%、材料価格は0.02%それぞれ引き下げ、本体と合わせた診療報酬全体での改定率はマイナス0.94%とされました。

 

 看護職員の賃上げは、岸田政権が掲げる「分配戦略」の柱の一つ。政府は22年10月以降の賃上げに診療報酬で対応する方針です。また、それに先立ち同年4月には不妊治療が保険適用されます。政府・与党内での調整は、それらの費用を除く本体部分の改定率が焦点になりました。

 

 財務省によると、本体プラス0.43%のうち、看護職員の賃上げと不妊治療の保険適用のための上乗せ分はそれぞれ0.2%。

 

 一方、一定期間に反復利用できる「リフィル処方箋」の導入と、小児(6歳未満)に特有の感染予防策を行った医療機関に診療報酬の上乗せを認める特例の見直しで医療費をそれぞれ0.1%分ずつ抑えます。上乗せ分を除く実質での本体の改定率はプラス0.23%で決着しました=表=

 

 分野ごとの内訳は、調剤0.08%、医科0.26%、歯科0.29%のいずれもプラス。財務省は、医科・歯科・調剤に1対1.1対0.3の割合で財源を配分する対応の見直しを求めていますが、この対応が今回も維持されました。

 

表 2022年度診療報酬の改定率の内訳

「2022年度社会保障関係予算のポイント」(財務省)より抜粋

出典:「2022年度社会保障関係予算のポイント」(財務省)より抜粋

 

 「躊躇なくプラス改定」を主張していた日本医師会の中川俊男会長は、改定率が決まった当日の定例記者会見で、「厳しい国家財政の中でプラス改定になった」と評価してみせました。

 

 調整が難航した診療報酬の改定率が決着し、政府は24日、22年度予算案を閣議決定しました。医療や介護など社会保障費の自然増として、夏の概算要求の段階では6,600億円(年金スライド分を除く)を見込んでいましたが、それを「高齢化相当分」の4,400億円(同)に圧縮しました。

 

 削減分の財源は、薬価などの引き下げが1,600億円、後期高齢者医療の患者負担の見直しが300億円、リフィル処方箋の導入が100億円などです。

 

2.対人中心への転換、書きぶり変化

 

 それに先立ち厚労省は10日、22年度の診療報酬改定の基本方針を公表しました。薬局関連では、かかりつけ薬剤師・薬局の機能を引き続き評価するとしています。

 

 診療報酬改定の基本方針は中医協が議論する点数設定の前提となり、医療の現状を踏まえた重点課題を毎回設定しています。今回は、「医師等の働き方改革等の推進」を20年度から引き継ぐ一方、新型コロナウイルスなど新興感染症の拡大にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療体制の構築を1つ目の重点課題に掲げました。

 

 診療報酬改定の基本方針がかかりつけ薬局の機能に言及するのは14年度以降、5回連続です。それによって、効率的・効果的な医療体制の整備につなげる狙いです。

 

 薬局・薬剤師の業務を対物中心から対人中心に転換する方向性も20年度の基本方針から連続で打ち出しましたが、今回は書きぶりが変わりました。対人業務への転換は、薬剤の調製などの対物業務を適切かつ効率的に行うのが前提だと付け加えたのです。

 

 改定率と基本方針が出そろい、22年度の診療報酬改定は点数配分を巡る議論に舞台が移ります。中医協が改定案の答申に向けて詰めの議論を行い、22年度に実施する「個別改定項目」を年明け以降に取りまとめる見通しです。

 

3.「多店舗の薬局等」評価適正化へ

 

 中医協では、24日までに調剤報酬を3回議論し、11月26日には調剤基本料の見直しを厚労省が論点に挙げました。

 

 調剤基本料の設定は、中医協が行う医療経済実態調査の結果などを根拠に決めています。この調査は、薬局や医療機関の経営実態を明らかにして診療報酬改定の基礎資料にするため2年置きに行われ、最新の調査結果が11月に報告されました。

 

 それによると、経営が黒字か赤字かを示す「損益率」は、20年度には「個人」と「法人」を合わせた「薬局全体」で6.5%の黒字。これは新型コロナの感染防止対策の補助金を含めない数字で、補助金を含めると前年度並みの6.7%の黒字を維持しています。

 

 中でも、大規模グループの薬局や診療所の「同一敷地内薬局」の経営が順調な傾向でした。「法人」が運営する薬局の損益率をグループの規模別に見ると、「20店以上」(351カ所)では補助金を含めなくても9.3%と大幅な黒字で、コロナ禍でも19年度から0.9ポイント改善していました。

 

 また、「薬局全体」の立地別では、「診療所敷地内」(4カ所)が13.2%、「医療モール内」(34カ所)が10.2%のいずれも黒字。サンプル数が少ないものの、厚労省は、「診療所敷地内」と「医療モール内」の薬局の損益率が高かったと受け止めています。

 

 一方、後発医薬品の使用促進を巡っては、政府が新たな目標を設定したのを受けて、後発医薬品調剤体制加算などに設定されている調剤(使用)割合の基準を22年度に引き上げるよう支払側が12月8日の総会で求めました。

 

 新たな目標では、後発薬の数量シェアを23年度末までに全都道府県で80%以上にするとしていますが、例えば後発医薬品調剤体制加算は、3つある点数のうち最も低い加算1(15点)を、それより低い「75%以上」で算定できるからです。

 

 後藤厚労相と鈴木財務相は22日の折衝で、22年度に「多店舗を有する薬局等」への評価を適正化したり、後発薬の調剤体制への評価を見直したりすることで合意していて、具体的な対応を引き続き議論します。

 

4.調剤料の評価対象に「対人的要素」

 

 調剤料の抜本的な見直しも20年度に続き俎上に載りました。調剤料はこれまで、薬局の薬剤師が行う対物業務への評価とされていましたが、厚労省は11月26日、調剤料が評価する薬局の業務にも「対人業務的な要素」が含まれると指摘しました。

 

 厚労省によると、薬局の薬剤師が行う一連の調剤業務のうち、この報酬が評価しているのは「患者情報等の分析・評価」から「調剤録の作成」までの6つです=図=

 

図 薬局での調剤業務の流れ

中央社会保険医療協議会 総会(2021年11月26日)の資料を基に作成

出典:中央社会保険医療協議会 総会(2021年11月26日)の資料を基に作成

 

 「対人業務的な要素」を含むとされたのは、それらのうち、薬剤師の薬学的判断を伴う「患者情報等の分析・評価」「処方内容の薬学的分析」「調剤設計」の3つ。ただ、薬学管理料などで既に評価されている部分もあるため、まだ評価されていない対人業務を見極めて対応を検討するべきだという意見が診療側と支払側の双方から出ています。

 

 初回からのオンライン服薬指導を政府が恒久化するのに合わせて、診療報酬の評価も22年度に見直します。オンライン服薬指導は、医薬品医療機器等法の改正に伴い20年9月に施行されました。現在は医師のオンライン診療や訪問診療を受けた患者のみが対象で、初回の指導は対面でしか行えません。

 

 オンライン服薬指導の施行に先立ち、同じ年の4月に行われた診療報酬改定では、オンライン診療を受けた外来患者向けの薬剤服用歴管理指導料4と、訪問診療を受けた在宅患者向けの在宅患者オンライン服薬指導料が新設されました。これらは、対面での服薬指導から3カ月以内に実施するなどいずれも薬機法のルールに沿った対応が求められます。

 

 厚労省は現在、医師の診療を受けた全ての患者に、薬剤師の判断で初回からオンライン服薬指導を行えるようにするなど薬機法に基づくルールの改正を進めていて、それに合わせて診療報酬の見直しでも、対象患者や算定要件が論点になっています。

 

5.リフィル処方箋で再診効率化へ

 

 一方、リフィル処方箋の導入は、患者さんが医療機関を受診する回数を減らしかねないだけに日本医師会が強く反対していましたが、診療報酬本体の改定率と関連付けるという思わぬ形で導入が決まりました。

 

 リフィル処方箋は、症状が安定している患者を対象に医師と薬剤師の適切な連携の下で導入することとされました。再診の効率化につなげるのが狙いで、導入の効果も検証します。具体的な対象やスキームは、中医協が議論するとみられます。

 

 新たな仕組みの導入は、薬局の薬剤師が地域で存在感を示すチャンス到来といったところでしょうか。ただ、患者の体調の変化を見逃がさず、適切に対応するスキルと責任もこれまで以上に求められそうです。

 

  

 

出典:医療介護CBニュース

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