2021.12.16
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オンライン診療の適切な実施に関する指針改定へ─“診療前相談”でかかりつけ医以外の初診が可能に【まとめてみました】

メディカルサポネット 編集部からのコメント

11月29日に厚生労働省は、オンライン診療の適切な実施に関する指針の改定案をまとめました。これにより、オンライン診療による初診を恒久的に認めることとなります。初診からのオンライン診療の取扱いについては、原則かかりつけ医が行いますが、かかりつけ医以外でも、既往歴など患者の医学的情報をオンラインによる「診療前相談」で確認し、オンライン診療が可能と判断した場合には実施できます。今後はパブリックコメントを経て、今年度中に指針改定が予定されています。

 

厚生労働省は11月29日、オンライン診療の適切な実施に関する指針の改定案をまとめた。6月に閣議決定された規制改革実施計画を受け、オンライン診療による初診を恒久的に認める。オンライン診療による初診は、原則かかりつけ医が行う形になるが、かかりつけ医以外でも、既往歴など患者の医学的情報をオンラインによる「診療前相談」で確認し、オンライン診療が可能と判断した場合には実施できる。本欄では概ね固まったオンライン診療の初診の枠組みを詳報する。

オンライン診療を巡っては2020年4月、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、希望する患者が幅広く医療機関を受診できる体制を確保するため、感染収束までの時限措置としてオンライン診療による初診が特例的に容認された。21年6月には政府の規制改革実施計画にオンライン診療の「特例措置の恒久化」が盛り込まれた。これを受け、厚労省の検討会が具体的な指針作りを進めてきた。今後はパブリックコメントを経て、今年度中に指針を改定する。

リアルタイムの診療前相談で実施可否を判断

 

厚労省が検討会に示しているオンライン診療の申し込みから診療までの流れのイメージは上図の通り。オンライン診療で初診を実施する場合、①初診に必要な医学的情報が十分か、②診療前相談が可能か、③オンライン診療が可能な症状か、④処方可能な医薬品の範囲、⑤対面診療の実施体制─の5つがポイントとなる。

 

①の「初診に必要な医学的情報」については、患者の症状や背景は多様であり「一律の基準を定めることは困難」なことから、かかりつけ医以外が実施するケースでは、オンライン診療を実施する前に患者が医学的情報(既往歴や服薬歴など)を医師に提供し、患者の症状とあわせて当該医師が可能と判断した場合、オンライン診療を実施できる。

 

事前に患者が保有する医学的情報を十分に得られない場合は、②の「診療前相談(医師・患者間でオンラインを通じたリアルタイムのやりとり)」を実施し、症状とあわせて医学的情報を確認、オンライン診療が可能かどうかを判断する。医師と患者双方が合意した場合に実施できる。

 

診療前相談については、オンライン診療が可能かどうかを判断する枠組みで「診断、処方その他の診療行為は含まない行為」と整理。診療前相談で得た情報については、診療録に記載する必要がある。診療前相談により、対面受診が必要と医師が判断し、他院で対面診療を行う場合は必要に応じて適切な情報提供を行うことが求められる。

 

また、診療前相談の実施に当たり、結果としてオンライン診療が行えない可能性があること、診療前相談の費用等について、自院のホームページなどを通じて患者への周知を図ることも求めている。

 

「オンライン診療の初診に適した症状」で判断

③の「オンライン診療が可能な症状」については、日本医学会連合作成の「オンライン診療の初診に適さない症状」等を踏まえて医師が判断し、適さない場合は対面診療を実施する。緊急性が高い症状の場合は速やかに対面受診を促す必要がある。

 

④の処方については、オンライン診療では診察手段が限られることから、初診から安全に処方できない医薬品があるとして、医学会連合作成の「オンライン診療の初診での投与について十分な検討が必要な薬剤」等、関係学会が定める診療ガイドラインを参考に行うことを求めた。また時限的・特例的措置と同様に、「麻薬および向精神薬」「基礎疾患等の情報が把握できていない患者に対する特に安全管理が必要な薬品(「薬剤管理指導料1」に該当する薬剤)」「8日分以上の処方」は行うことができない。

 

⑤の「対面診療の実施体制」については、原則として初診のオンライン診療はかかりつけ医が行うものという位置づけから、対面診療が必要となった場合も当該かかりつけ医が行うとことが原則と明示。例外として、かかりつけ医がオンライン診療を行っていない場合や休日夜間などでかかりつけ医がオンライン診療に対応できない場合、患者にかかりつけ医がいない場合、かかりつけ医がオンライン診療に対応している専門的な医療等を提供する医療機関に紹介する場合やセカンドオピニオンのために受診する場合などを認める。その際は、オンライン診療の実施後、対面診療につなげられるようにしておくことが求められる。

 

 

現在の特例措置をより厳格化

オンライン診療後の対面診療は、患者にかかりつけ医がいる場合はかかりつけ医による実施が望ましく、かかりつけ医がいない場合はオンライン診療を行った医師が実施することを推奨した上で、患者の近隣で可能な医療機関を紹介することも可能とした。

 

オンライン診療の初診を認めている現在の特例措置では、かかりつけ医以外でも初診からオンライン診療の実施が可能で、対象疾患も問わない。医薬品の処方に関してのみ、麻薬や向精神薬の処方禁止、ハイリスク薬に処方日数上限を設けるなどの規制を設けている。厚労省の検討会では、より柔軟な運用を求める声も上がったが、安全性を担保する観点から、オンライン診療の初診は、現在の特例措置をより厳格化した形で当面運用されることになる。

 

 

 

出典:Web医事新報

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