2021.04.30
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「DX」の流れに乗り、介護のあるべき姿を実現させよう
~要確認ポイントを解説!オンラインセミナー「介護報酬改定から見える介護保険制度の今後」~

第13回メディカルフォーラム講演レポート

介護報酬改定をテーマとした無料オンラインセミナー「第13回メディカルフォーラム」。2021年4月より実施される介護報酬改定では、新型コロナウイルス禍において、感染症や災害等への対応も念頭に置いた運営基準の見直しが大幅に行われました。改定のポイントをキャッチし、確実に実行しなければ、施設の運営・経営状況に大きな影響を及ぼしかねません。今回は多摩大学医療・介護ソリューション研究所の石井富美さんを講師にお迎えし、「介護報酬改定から見える介護保険制度の今後」を解説いただきました。動画配信は終了いたしましたが、その講演の内容を抜粋してお届けいたします。介護福祉施設の今後のあるべき姿を明確にし、自施設の経営・管理にお役立ていただけます。

文/中澤 仁美(ナレッジリング)
編集・構成/メディカルサポネット編集部

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石井富美さん

講師プロフィール

多摩大学 医療・介護ソリューション研究所

石井 富美(いしい ふみ)


民間企業でソフトウエア開発のSE として勤務した後、ヘルスケア分野に転⾝。複数の医療機関等で経営管理、新規事業の企画、⼈材育成などに携わった。2011 年より多摩⼤学 医療・介護ソリューション研究所に所属し、医療機関の経営サポート、⼈材育成活動、企業向け医療ビジネスセミナーなどを⾏っている。関⻄学院⼤学⼤学院にて「地域医療経営」、多摩⼤学⼤学院で客員教授として「地域包括ケアのビジネスモデル」を担当している。

 

 

 

\動画の配信は終了しました。ご視聴、ありがとうございました。/

 

「新たな日常」から考える新しい医療・介護提供のあり方、働き方

「経済財政運営と改革の基本方針」(いわゆる「骨太の方針」は、毎年政府の方針として出されているものなので、皆さんも見聞きしたことがあると思います。これには毎回サブタイトルが付いているのですが、2020年度は「危機の克服、そして新しい未来へ」となっています。

  

言うまでもなく、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の対応に迫られているわけですが、その中でも新しい未来を作っていきましょうということですね。骨太の方針は介護報酬改定にも大きく影響してきますが、第3章は「『新たな日常』の実現」と題されていて、このウィズ・コロナ、ポスト・コロナにおける「新たな日常」の中で、私たちは新しい医療の提供のあり方・働き方を考えていく必要があるわけです。

※講演資料より

医療・介護現場でも進んだオンラインワーク

皆さんの病院や施設では、たとえば外来診療やお見舞いのあり方が大きく変わったと思います。また、現場スタッフの働き方については、世間は緊急事態宣言で在宅ワークなどをしている一方、医療・介護の分野は患者さん・利用者さんと直に接する仕事であるため、それは難しい。ただ、その中でも工夫できるとこはあって時差出勤を導入したところは結構多かったと聞いています。

 

また、病院では、職場にいながらにしてのオンラインワークも行われたそうです。1か所に集まることでの密を避けるため、医師は医局から、看護師はナースステーションからネットワークを介して会議に参加するというわけです。この1年、私たちの中さまざまな働き方の変化がありましたね。書類の押印を廃止するという話もありました。今回の介護報酬改定において、利用者さんとの契約書に判子は不要とされましたが、そこにつながってきます。

 

明確に期限を区切って「デジタルトランスフォーメーション」(DX)を推進

政府の未来投資会議では、「デジタルトランスフォーメーション」(DX)といワードが飛び出しました。テクノロジーで課題を解決していくことで、どこに住んでいても仕事ができるような分散型居住社会を作っていこうということです。同日、厚生労働省では「新たな日常にも対応したデータヘルスの集中改革プランについて」という議題でデータヘルス改革推進本部の会議が行われていました。ここでは、「新たな日常」にも対応したデータヘルスの集中改革プランを策定し、保健医療データプラットフォームをもっと活用しながら、デジタル化が進んでいない医療・介護の分野でもデジタルトランスフォーメーションを起こす準備をしなければならないということが話し合われました。

 

注目したいのは、個々の施策の中身もそうですが、明確に期限を区切って推進すべきことが謳われている点です。そのうちにやりましょうということではなくて、全国で保健医療情報を確認できる仕組みの拡大、電子処方箋の仕組みの構築といったことを、これから2年間で進めていきましょうという話になっています。

  

医療機関や薬局の窓口で、マイナンバーカードを介して健康保険証の資格確認をできるようにする「オンライン資格確認」は、2021年3月中に本格運用が開始される予定でしたが、最長で2021年10月まで延期されることになりました。とはいえ、このオンライン資格確認は、ゆくゆくは保健医療データプラットフォームから当該の患者さんの情報を引き出し、医療機関等で参照できるような仕組みを使っていくための第一歩と考えられています。こうした仕組みを実現することができれば、医療・介護分野でのデジタルトランスフォーメーションは大きく進展することになるでしょう。

   

※講演資料より

令和3年度介護報酬改定のポイント

①すべてのサービスについて基本報酬が引き上げ

今回の介護報酬改定の中身を見ると、最終的な改定率は全体で+0.70%になりました。すべてのサービスについて基本報酬が引き上げられています。これはスゴイことだと思いますね。ただし、「別途の観点から適正化を行った結果、引き下げとなっているものもある」とされています。この「別途の観点」とは何だろうということが、私が一番気になったところです。

  

例えば、介護保険による訪問看護では、セラピストが看護師の代わりに訪問した部分に関しては-4単位となっています。もう一つ、介護老人保健施設(老健)の短期入所療養介護費は全面的に見直され、マイナスになっている部分もありますが、総合医学管理加算(275単位/日)が新設されています。「治療を目的とした利用者に対して、診療方針を定め、投薬、検査、注射、処置等を行い、利用者の主治の医師に対して、利用者の同意を得て、診療状況を示す文書を添えて必要な情報の提供を行う場合」に算定できます。つまり、主治医と老健のドクターが連携した場合ですね。

  

②「介護保険サービスのあるべき姿」を考える

こうした点を見ると、「介護保険サービスのあるべき姿になっているかどうか」が「別途の観点」だったのだと思います。訪問リハビリテーションも通所リハビリテーションもプラスですが、訪問看護ステーションからセラピストが訪問する対応についてはマイナスです。「在宅のリハビリテーションは本来どうあるべきなのか」という観点から適正化が行われたわけです。

 

③医療と介護の”連携”に報酬設定

また、老健については、「医療から在宅療養への架け橋となる中間施設」としての役割が求められています。そのため、主治医と連携することに対して報酬が設定されたわけです。

  

④LIFEのスタート

また、今回の介護報酬改定で新設された「科学的介護推進体制加算」(long-term care information system for evidence;LIFE)も注目ですね。CHASE・VISITへのデータ提供と、そのフィードバックの活用により、ケアの質向上を図ることに対する加算です。診療報酬のデータ提出加算のようなものですが、フィードバックを活用することを求めている点で、よりレベルが高いといえます。

  

「介護保険サービスのあるべき姿」が示された介護報酬改定を受けて、それぞれの事業者、現場スタッフ一人ひとりが自身のあるべき姿を考え、地域包括ケアシステムの中で専門職でなければ提供できない価値とは何なのか、思いを巡らせていただきたいと思います。

 

※講演資料より

 

 

メディカルサポネット編集部(講演日:2021年3月24日)

 

 

 

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