2020.06.19
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管理職が意識したい スタッフの心を和らげる「3つの目」とは?

第1回/管理職のための心をケアする対話のヒント【コーチングサービス「mento」のコーチが送るコラム】

新型コロナウイルス感染症治療の最前線を担う医療従事者には、身体的にも精神的にもさまざまな負荷がかかっていると思います。最前線でたたかう医療従事者らを応援するため、このコラムでは、スタッフの心身の状態にも気を遣う管理職向けに、心をケアするための視点と言葉をお届けします。執筆するのは、4月から医療従事者向けにパーソナルコーチングの無償提供を始めたパーソナルコーチングサービス「mento」のコーチ達です。1回目は、医師をはじめとする医療従事者をクライアントに持つmentoプロフェッショナルコーチの山縣いつ子さんが、現場の観察の仕方を「3つの目」で行う効果を紹介します。 

文/山縣いつ子 (mentoプロフェッショナルコーチ/OfficeItself 代表)
編集・構成/メディカルサポネット編集部

 

Profile

山縣いつ子(やまがた・いつこ)

パーソナルコーチングサービス「mento」のプロフェッショナルコーチ。OfficeItself 代表。

大学卒業後、専門誌を扱う出版社を経て、オムロンの人文社会系の研究所の研究員になるも挫折し、3年で離職。自分のキャリアや生き方を模索する中でコーチングに出合い、2008年からコーチングを生業にしている。現在は「個人と組織の幸せ」を求め、コーチングや企業研修などを行っている。体験型の研修が特に好評。「準備は丁寧に、本番は大胆に」をモットーに核心をなす関わりが得意。クライアントには中間管理層やベンチャー企業の経営者、医療従事者らがいる。趣味はヨガ、お酒を飲むこと、神輿を担ぐこと、人と話すこと。

スタッフを「3つの目で観察」すると現場がうまくいく

コーチングとは、クライアント(話し手)がコーチ(聴き手)との対話を通じて、考えや思いを掘り下げ、自分の可能性に気づき、行動につなげるプロセスのことです。基本的な考え方は「答えはクライアントの中にある」です。その姿勢はきっと管理職がスタッフに接するときにも生かせると思います。私がコーチングのコーチとして培ったスタンスや心持ち、観察眼を、医療機関の管理者の方にも活用できるようお伝えします。

 

コロナ禍において医療スタッフたちは使命感にあふれ、目の前の患者を救おうと必死でしょう。この緊張感のある状況で現場を正常に保つには、管理職は現場を俯瞰しながら「3つの目」で観察するよう意識することが大事になります。

 

まずは「事柄を見る」目。実際に起きていることを見て、聞いて、事実を観察します。これは医療系の管理職は得意だと思います。

 

次は、「奥にあるものを見る」目。患者さんに応対するときと同じだと思いますが、ちょっとした様子から異変を察知します。スタッフの表情や仕草、動きから、声にならない声や感情の機微を感じ取ります。注意深く見てみると、一見すると使命感や意欲、活力にあふれているスタッフの中に、抑圧した恐怖心や不安を見つけるかもしれません。本人にも自覚がない場合があるので要注意です。何か感じ取ったなら、「すごく頑張ってくれているよね。でも、少し気持ちが追いついていないように見えるけど、どうだろう?」などと声掛けしていくことが大切です。

この観察と行動を続けると、燃え尽き症候群(使命感により自らを酷使し、消耗してしまうことが長期化し、やる気を失ってしまった状態)を察知し、未然に防ぐことができるかもしれません。今、スタッフは期待に応えようと相当なエネルギーで仕事に向き合い、さらに、感染してはいけないという強いプレッシャーも感じていることでしょう。体の疲労だけでなく、心の疲労を脇に追いやっている可能性があります。スタッフの使命感と疲労感のバランスを見ることが必要です。

 

最後は、未来を見る目です。今起きていることを受け止め、スタッフに感謝した上で、「自分は今後どうなりたいだろうか」「病院はどうなっているといいだろうか」と未来への問い掛けを持ちけましょう。

 

コーチングはその「手法」が着目されがちですが、最も大事なのはコーチのスタンスです。コーチは、相手を思い込みで判断しないように気を付けています。まるで子どものようなまっさらな好奇心を持ってクライアントと対話し、ダンスでもするようにクライアントの深層部に入っていくのです。

管理職として、先入観を持たずにスタッフに何が起きているか見るためには、上述の3つの目を持つことが大きな意味を持つでしょう。

 

 管理職は何をするかより、どうあるかが重要

現在のような非常事態では、いつも以上に的確な指示が求められます。刻々と変わる状況に対応する体制を整えるには、管理職の「受容力」が大切です。受容力とは上述の3つの目の「事柄」「奥にあるもの」で起きていることを全て受け入れていく力です。行動以上に管理者の心持ち(マインド)が大事になっていきます。管理職が安心できる「器」としてそこに存在できれば、それだけでスタッフたちは安心します。

 

管理職は、何をするか(Do)よりも、どうあるか(Be)の方が大事になるのです。「受容」のスタンスも然り、自分がどういう存在意義を発揮していきたいかを知ることが必要です。そのためには管理者自ら「自分はどうありたいのだろうか?」と問いを持つことも大事です。自分の影響力を自覚することで、行動が変化していくでしょう。

 

そして、最も忘れてはいけないことが、管理職自身が自分を大事にすることです。コーチングではコーチがクライアントの問題に取り込まれないよう自己管理を心掛けています。ちなみに私自身は瞑想やジャーナリング(気づきや感情を書き込んでいく)などをすることで、自身の気持ちのコントロールを心がけています。

 

管理職は、上からの通達と下への配慮の板挟みで、つい自分の気持ちを後回しにしがちです。気付かないうちに状況に振り回されたり、自分自身の感情を二の次にしたりしてしまうことがあります。だからこそ、心身のケアはとても大事です。

管理職のあなたの話に耳を傾けてくれる人はいるでしょうか。問題解決というよりも、共感し、ただ耳を傾けてくれる人。自身のネガティブな気持ちや弱みもさらけ出せる人がいたら、ぜひその方に頼ってほしいと思います。近くにいるなら同僚、友人、家族に自分の胸の内を聴いてもらい、さらけ出しバランスをとっていくことも大事になります。

終わりがはっきりと見えない今だからこそ、帚木蓬生さんの『ネガティブ・ケイパビリティ』にもあるように「答えのない事態に耐えていく力」が必要になるのでしょう。管理職自身が自分を大事にすることがその第一歩となるかもしれません。

 

●参考図書

帚木蓬生著「ネガティブ・ケイパビリティ答えのでない事態に耐える力」(朝日新聞出版)

安克昌著「心の傷を癒すということ」(角川ソフィア文庫)

 

パーソナルコーチングサービス「mento」とは

ビジネス・キャリア・人間関係などあらゆる悩みを抱える人に、専門のトレーニングを受けたプロコーチをおすすめするパーソナル・コーチングサービスです(サービスURL: https://www.mento.jp/ )。

 

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