2021.02.08
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「調剤薬局」から離れられない3つの理由

狭間研至の薬局経営3.0~社長が変われば薬局が変わる~ vol.5


狭間研至の薬局経営3.0社長が変われば薬局か変わる

 

編集部より

医師であり調剤薬局の経営者でもある狭間研至さんの連載コラム「薬局経営3.0〜社長が変われば薬局が変わる〜」。第5回は、迫りくる薬局経営の転換期を前に、「変わらなきゃ」と思っていても調剤薬局経営者たちが現状のビジネスモデルを続けてしまう理由について考えます。調剤薬局というビジネスモデルが終わりを迎えるとはいえ、調剤薬局ビジネスは今日も続いています。そこから離れられない理由とは一体どのようなものなのでしょうか?

 

わかっちゃいるけど踏み出せない

 

こんにちは。狭間研至です。前回は「薬局のライフサイクル」を知れば、2020年は薬局3.0にとって特別な年であり、いよいよ成長期に入っていくというお話でした。私自身は、2006年に「導入期が始まっているんだ!」と気がついていながら全く変わるそぶりもない現実に、何度も心折れそうになりました。ただ、完全な「調剤薬局」も体験していましたから、薬局が変わらないのも無理はないなぁと感じていました。今回の連載をお読みいただいている先生方も、「変わる必要性はわかる!でも…」と二の足を踏んでしまう方や、思い切って踏み出してみたけれども「やっぱり、これは、ダメだ!」と諦めてしまった方も多いのではないかと思います。その気持ち、解ります。そこで、今回は、なぜ薬局経営者は「調剤薬局」という考え方から離れられないのか、ということとともに、10年前と今とを比べると、行動しやすい、そして行動すべき時期に来ていることをお話したいと思います。

 

  

「調剤薬局」という強力なビジネスモデル

  

まず、その前に、業界の先達が創り上げてきた「調剤薬局」というビジネスモデルがいかに破壊力抜群かをおさらいしておきたいと思います。

 

 

ポイント1:顧客を集客する必要がない

どんな商売でもお客さんがいらっしゃらないことには、売上が立ちません。小売業では特にお客さんが来店して下さってこそ商売が成り立つわけです。薬局も、医薬品等小売業という立派な小売業ですが、患者さん(=お客さん)は隣の医療機関から自然に来て下さることがほとんどというビジネスモデルでした。その方に対して、きちんとした仕事をしてこなすことで、ある意味ではドクターの商売の邪魔をしないようにすれば良かったわけです。小売業なのに、集客を考えなくても良いというのは、悩みの半分が無くなるようなものです。また、薬局を開店するときに、既に開業している医療機関であれば、現在どの程度の数の患者さんが受診しているのかということもわかりますから、出店時のリスクもかなり低く抑えることができます。これらのことから、ビジネスモデルとしても魅力的で、かつ初期リスクの少ないと言えるでしょう。

 

ポイント2:わかりやすい業務フロー

医療機関から発行された処方箋を応需し、その内容にそって早く・正しく調剤し、解りやすい説明とともに患者さんに薬を交付する、というわかりやすい業務フローであることです。「ビジネスが上手くいくためのポイントの1つは、中学生でもわかる内容かどうか」、ということを読んだことがあります。そういった意味では、患者さんにとってもスタッフにとっても理解しやすいビジネスモデルなのです。シンプルであるが故に、薬剤師という国家資格者が取り組むにもかかわらず、それほど専門的な知識や技能が必要ないのではないように見えてしまうことも、ビジネスをシンプルにしてきたのかもしれません。

 

ポイント3:患者さんの自己負担額が少ない

ビジネスにおいてお金のやり取りは極めて重要なポイントです。ここでひっかかりがあれば、お客さんはその商品を買うことやサービスを利用することを躊躇しますし、価格に見合ったものが得られなければリピーターになることはありません。しかし、“自分の疾病を治療する医薬品”という必要性が極めて高いものを、最大3割までの負担で手にすることができますから、多少の不手際や引っかかる点があっても、患者さんはその薬局に通い続けてくれます。

 

顧客の集客が不要で、仕事はシンプルで、薬という必要性が高い商品にも関わらず顧客が全額負担しなくてよいということで、「調剤薬局」というビジネスは急速に拡大したのです。

 

 

  

「調剤薬局」からの転換を躊躇するワケとは?

  

この優れたビジネスモデルから、少しでも離れようとすると、大変な困難にぶちあたります。それが、「調剤薬局」から離れられないという状況を創り出しているのです。門前ではなく、面分業に、外来だけではなく在宅に、保険調剤だけではなくOTCも、ということが今後の薬局の方向性だと思いますが、これに取り組もうとすると大変なことになり、やはり、離れられないと思ってしまいます。その理由を考えてみましょう。

 

理由その1

近くに処方箋を発行する医療機関がなければ、患者さんはお越しにならず売上は上がりません。無関心客を見込み客に変え、一度ご利用頂いた方に再訪していただくための施策を考え実行することは容易ではありません。そうやって戸惑っているうちに、売上が立たず経費がかさむばかりだと、そのお店は閉じようという話になります。

 

理由その2

面分業で選んでいただいたり、在宅訪問できちんと専門性を発揮してお届け在宅以上の仕事をしたり、セルフメディケーションのお手伝いがきちんとできたりするためには、薬剤師の教育や、新しい業務フローの作り込みが必要です。中学生が解るまでに落とし込むには、少し時間がかかります。折しも慢性的な薬剤師不足の時代、取り組むことを躊躇するのは当たり前でしょう。

 

理由その3

OTCやサプリメントは保険が利かないため、どうしても価格が高くなります。また、同一商品であれば、大手ドラッグストアの価格に負けてしまいますし、インターネットでの通信販売も広まってきました。そうすると、薬局でのセルフメディケーションは夢物語として片付けられてしまいます。

 

   

 

これらの理由から、薬局経営者は自らのビジネスモデルを変えられずにきたのだと思います。

しかし、時代は変わってきました。

 

1.新型コロナウイルス感染症によって、医療機関へ患者さんが行かなくなったこと

2.薬学教育6年制への移行や薬機法改正もあり、お薬をお渡しするまでの業務では十分ではなくなったこと

3.医療財政の逼迫により、健康保険でカバーされる範囲も少しずつ狭くなっていくと予想されること

 

これらの流れを読めば、今、まさに行動する時が来ているのだと思います。

 

次回は、もう少し視野を広げて、薬局業界に流れるトレンドを改めて考えたいと思います。

 

 

プロフィール

 

狭間研至(はざま・けんじ) 
ファルメディコ株式会社 代表取締役社長/医師、医学博士、一般社団法人 日本外科学会 認定登録医。
1969(昭和44)年、大阪府生まれ。95(平成7)年、大阪大学医学部卒業。大阪大学医学部付属病院、大阪府立病院(現 大阪急性期・総合医療センター)、宝塚市立病院で外科・呼吸器外科診療に従事。2000(平成12)年、大阪大学大学院医学系研究科臓器制御外科にて異種移植をテーマとした研究および臨床業務に携わる。同修了後の04(平成16)年から現職。現在は、地域医療の現場で医師として診療も行うとともに、一般社団法人 薬剤師あゆみの会・一般社団法人 日本在宅薬学会の理事長として薬剤師生涯教育や薬学教育にも携わっている。

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