2020.12.04
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薬局のライフサイクルを知る(2)薬局の世代間移行という鳥の目

狭間研至の薬局経営3.0~社長が変われば薬局が変わる~
vol.3

狭間研至の薬局経営3.0社長が変われば薬局か変わる

 

編集部より

医師であり調剤薬局の経営者でもある狭間研至さんの連載コラム「薬局経営3.0〜社長が変われば薬局が変わる〜」。第3回は、狭間さんが薬局経営に閉塞感を感じていたころに知ったという言葉「全てのビジネスモデルには寿命がある」を起点に、調剤薬局のビジネスモデルについて考察を深める第2弾です。今回は薬局の世代間移行について、ウェブの進化にならって、これまでの薬局ビジネスモデルを3つの世代に分けて考え、これからの薬局経営の変化を予想していきます。また、変化するビジネスモデルに気づくために薬局経営者に必要なことは、虫の目ではなく鳥の目になって業界を見ることだと説いています。

 

迫りくる調剤薬局ビジネスの衰退

 

こんにちは。狭間研至です。前回は「薬局のライフサイクルを知る」をテーマに、その第1弾として「永遠に続くビジネスモデルはない」というお話をいたしました。別に薬局に限りませんが、ずっと同じタイプのビジネスが続くというのは難しいことですし、ライフサイクルというものがあることを考えれば、むしろそれが自然なことなのだと感じられるのではないかと思います。

 

いわゆる「場所取り」に汲汲としながら、右往左往していた2006年頃に、こういう今で言うところの「立地依存」型のビジネスモデルも、いつまでも続かないんだという業界の見方は、うれしかった反面、その興奮が過ぎ去っていくと大変困ったことに気がつきました。

 

それは、1974年に始まった「調剤薬局」というあり方は、1991年から成長期に、そして2008年から成熟期を迎えるのだという話からすれば、2025年からは衰退期に入っていきます。私は1969年生まれなので2025年といえば、56歳です。私が子どもの頃と違って今の56歳はめちゃくちゃ元気な方が多いですし、自分もそうありたいと思っていますが、「人生、これから!」という時に、自分が乗っかっているビジネスモデルが衰退期に入るというのは、ちょっと、というよりかなりまずいことになってしまいます。

 

衰退期のビジネスモデルは、言ってみれば下りのエスカレーターを必死で登るような感じになります。登っても登っても登れないわけです。「社長、しんどいです!」「がんばろう!」という不毛なやりとりは、社員のためにも避けたいと思いました。生き方や働き方は基本的に自由な日本という国で、何も、下りのエスカレーターを登るような仕事をメインとしなくても良い。登るなら、登りのエスカレーターでありたいものだな、と整理のつかない頭の中で、色々と考えていました。

 

 

そのときに、ふと思い出しました。「そういえば、私の母が1976年に作ったOTC医薬品販売がメインの相談薬局って、今はもうないよな…」と。そうです。私の母が作った薬局は、「健康相談」「漢方相談」がキャッチフレーズで、たった1人の薬剤師が切り盛りする小さな薬局でした。患者さんは処方箋ではなく、「疲れがとれない」「子どもがご飯を食べない」「風邪っぽい」といった困りごとを持ってこられました。薬剤師である母は、その話を聞いて、OTC医薬品や健康食品などを販売し、患者さんはそれらの商品とともに、ちょっとした安心感や期待感を持って帰っていかれたように思います。

  

それに対して、私が医師となって10年余り経ってから見に行ったうちの薬局は、患者さんは困りごとではなく処方箋を持ってこられ、お薬を受け取って淡々と帰っていくという、全く違う薬局の姿になっていました。

 

これら2つの薬局は、ビジネスモデルも、収益構造も、集客の仕方も違えば、スタッフに求められる知識、技能、態度も異なります。だとすれば、スタッフの教育はもちろんのこと、採用基準まで変えなくてはなりませんし、マネジメントもマーケティングも全て変えなくてはならなくなります。

 

つまり、私が知る2つのタイプの薬局は、同じビジネスとは思えないぐらいに異なっていたのです。 

 

薬局業界を俯瞰して見える世界

    

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