2026.02.04
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葛根湯の副作用とは?|薬剤師が押さえるべきリスクやメーカー別(ツムラ・クラシエ)の比較、そして指導ポイント

すぐに活かせる!服薬指導の品質を高める実務ヒント

「風邪の引き始めには葛根湯」という認識は一般に広く浸透しており、副作用が極めて少ない安全な薬と思われがちです。しかし、OTC医薬品として容易に入手できる環境だからこそ、薬剤師による適切な説明が不可欠と言えます。

この記事では、頻度の高い副作用から見逃してはならない重篤な症状の初期サイン、さらにはメーカー(ツムラ・クラシエ)による製剤特性の違いまで、服薬指導の質を高めるための知識を深掘りします。

すぐに活かせる!服役指導の品質を高める実務ヒント

 

   

☞この記事でわかること

  • 葛根湯の副作用と構成生薬の関係
  • 副作用症状別患者からの訴えとアセスメント
  • メーカー別葛根湯の比較|ツムラとクラシエの違い

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1.葛根湯の副作用と構成生薬の関係

1.葛根湯の副作用と構成生薬の関係 

葛根湯は、古くから風邪の引き始めに用いられることの多い漢方薬です。

比較的体力のある人向きで、悪寒や発熱、背中のこわばりがあるものの、まだ自然発汗していない時期が服用の目安となります。

 

 

1-1. 葛根湯に多い副作用

一般用漢方製剤の調査 によると、副作用報告の半数以上を薬疹などの皮膚症状が占め、次いで肝機能異常が約2割と続きます。

特に医療用医薬品漢方製剤 における発疹・発赤・掻痒(そうよう)といった過敏症状には、構成生薬である桂皮(ケイヒ)の関与が示唆されています。

アレルギー歴のある患者への投薬時には、過去にシナモン(ケイヒ)を含む製剤で皮膚トラブルがなかったかを確認することが重要です。

 

  

1-2. 葛根湯で注意すべき副作用と初期症状

添付文書 の「重大な副作用」には、偽アルドステロン症、ミオパチー、肝機能障害・黄疸が記載されています。

初期症状は以下のとおりです。

 

葛根湯の重大な副作用とその初期症状
病名 初期症状
偽アルドステロン症 低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加など
ミオパチー 脱力感、四肢痙攣・麻痺など
肝機能障害・黄疸 AST、ALT、AL-P、γ-GTPなどの著しい上昇、黄疸

 

特に麻黄(マオウ)は、主成分エフェドリンによる交感神経刺激作用を持つため、高血圧、心疾患、前立腺肥大などの排尿障害、不眠傾向のある患者では症状増悪のリスクがあります。

「漢方は眠くならない」と思われがちですが、不眠を招く恐れがある点は指導のポイントです。

 

また、甘草(カンゾウ)に含まれるグリチルリチン酸は、低カリウム血症や浮腫、血圧上昇(偽アルドステロン症)を引き起こす可能性があります。特に高齢者や長期服用者では、定期的なモニタリングが推奨されます。

 

 

2.副作用症状別患者からの訴えとアセスメント

漢方薬の副作用は、患者の証(体質)と薬剤が合っていない場合に顕著に現れます。

ここでは、頻度の高い消化器症状と、風邪の症状と混同しやすいため鑑別(アセスメント)が必要となる精神神経・全身症状について解説します。

  

 

2-1. 消化器症状(胃部不快感など)

葛根湯服用後の「胃がムカムカする」といった訴えは、マオウによる交感神経刺激や、本剤が胃腸の丈夫な人向けであることに起因します。胃腸虚弱な虚証の患者には負担が大きいためです。

 

対策として、用法を「食前・食間」から「食後」へ変更することで胃への刺激を和らげる提案が有効です。

それでも改善しない、あるいは著しい胃腸虚弱が見られる場合は、マオウを含まない香蘇散(コウソサン)や桂枝湯(ケイシトウ)など、証に合った他剤への変更を検討すべきでしょう。

 

  

2-2. 精神神経系・全身症状(だるさ・頭痛)

「体がだるい」という訴えは、風邪による倦怠感と考えがちですが、偽アルドステロン症 やミオパチーの初期症状(脱力感・筋力低下)である可能性を見逃してはいけません

 

また頭痛についても、原疾患(風邪)によるものか、マオウやカンゾウの影響による血圧上昇に伴うものかの鑑別が必要です。服用後に頭痛が増悪したり、動悸を伴ったりする場合は、漫然と継続せず直ちに服用を中止し、受診するよう指導しましょう。 

 

 

3.葛根湯に注意すべき患者背景と一緒に飲めない薬

葛根湯はよく使われる漢方薬ですが、マオウやカンゾウを含むため、患者背景によっては原疾患の悪化や副作用のリスクが高まります。特に循環器疾患や排尿障害、虚証の患者への投与は慎重さが求められます。

また、市販薬を含めた他剤との成分重複も見逃せません

 

 

3-1. 注意すべき患者背景

比較的証を選ばない漢方薬ですが、虚証の患者、著しく胃腸が弱い、または既に発汗している患者には不適です。

発汗過多による脱水や消耗のリスクがあります。

 

疾患別では、マオウ の交感神経刺激作用が悪影響を及ぼす狭心症・心筋梗塞などの循環器系障害、重症高血圧症、甲状腺機能亢進症、排尿障害を持つ患者には慎重な投与が必要です。

また、カンゾウによる負荷を避けるため、 高度の腎機能障害を持つ患者への投与も注意を要します。

 

   

3-2. 葛根湯と一緒に飲んではいけない薬|併用薬 に注意

併用薬の確認では、成分の重複と相互作用に注意します。特に注意するべき薬剤は、以下のとおりです。

  • マオウ含有製剤(麻黄湯、小青竜湯、麻黄附子細辛湯など)
  • エフェドリン類含有製剤(市販の風邪薬や鎮咳去痰薬)
  • モノアミン酸化酵素阻害剤(セレギリン塩素塩など)
  • 甲状腺製剤(チロキシン、リオチロニン)
  • カテコールアミン類(アドレナリン、イソプレナリンなど)
  • キサンチン系製剤(テオフィリン)
  • カンゾウ含有製剤(芍薬甘草湯、補中益気湯、抑肝散など)
  • グリチルリチン酸およびその塩類を含有する製剤(炎症やアレルギーを抑える効果を持つ湿疹・皮膚炎、肝機能改善などに使われる医療用医薬品・一般用医薬品)

 

マオウ含有製剤やエフェドリン類含有製剤との併用には注意しましょう。

交感神経刺激作用が増強され、動悸や不眠、血圧上昇を招く恐れがあります。

また、カンゾウ含有製剤との併用は偽アルドステロン症のリスクを高めます。

市販の風邪薬にもこれらの成分が含まれていることが多いため、重複投与にならないよう必ず確認しましょう。

 
 

4.服用期間と毎日飲むことのリスク

葛根湯は本来、急性期向けの処方です。服用の目安は数日~1週間程度とし、漫然とした長期連用は避けるべきです。

肩こりに適応があるため長期処方されるケースもありますが、効果が実感できない場合は証が合っていない、あるいは他の疾患が隠れている可能性があります。

 

症状が改善しない場合は服用を中止し、医師の診察を受けるよう促すタイミング(受診勧奨)を設定することも薬剤師の役割です。 

 

 

4-1. 葛根湯が効かない場合|「鼻水・のどの痛み」向きの漢方薬への切り替えを提案

葛根湯は、「寒気があり、汗をかいていない」風邪の引き始めに特化した処方です。

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