2026.02.02
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葛根湯の成分を徹底解剖!メーカー比較・作用機序・服薬指導のポイントまで【管理薬剤師向け】

すぐに活かせる!服薬指導の品質を高める実務ヒント

風邪のシーズン、薬局において処方・販売機会の多い漢方薬の「葛根湯」ですが、あまりに身近なために、「どのメーカーの製剤も中身は同じ」と認識してはいないでしょうか。
漢方製剤はメーカーによってエキスの抽出方法や成分量には微妙な差があり、同じ葛根湯でも医療用とOTCで規格が異なる場合があります。
この記事では、葛根湯を構成する7つの生薬の薬理作用、ツムラ・クラシエなどから出されている薬品の製剤比較、副作用回避のためのチェックポイントを解説します。「何となく」渡すから脱却し、薬剤師としての指導の質を高めましょう。

すぐに活かせる!服役指導の品質を高める実務ヒント

 

   

☞この記事でわかること

  • 葛根湯の7つの構成生薬と作用機序
  • 葛根湯製剤の成分比較|医療用・OTC・メーカー別
  • 葛根湯の証の見極め・副作用・併用できない薬

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1.葛根湯の7つの構成生薬と作用機序

1.葛根湯の7つの構成生薬と作用機序

 

葛根湯は、漢方の原典である『傷寒論』に記載されている古典的な処方です。

適応は広く、頭痛・首筋や背中のコリ・熱があって寒気がするといった風邪の引き始めに使われるほか、肩こりや筋肉痛などにも効果を示します。

 

 

1-1. 葛根湯の7つの構成生薬

葛根湯は以下の7種類の生薬で構成されています。

葛根湯の構成生薬
生薬名 主な薬効 生薬の特徴
葛根(カッコン) 解熱、鎮痙、発汗、筋弛緩 葛もちといった料理の材料にも使う。
麻黄(マオウ) 鎮咳、利尿、去痰、解熱、発汗 主要成分エフェドリンは、咳止め薬にも使う。
大棗(タイソウ) 通経、利尿 ナツメの果実の部分。甘い。
桂皮(ケイヒ) 発汗、解熱、鎮痛 シナモンとしてなじみがある。
芍薬(シャクヤク) 鎮静、鎮痙、鎮痛、抗炎症 花の色数は多いが、赤と白の花が薬用として使われる。
甘草(カンゾウ) 緩下、鎮痛、解毒 7割の漢方処方に含まれる。甘い。
生姜(ショウキョウ) 発汗、健胃、鎮嘔、解熱、鎮痛、鎮咳 食用にも使う。

 

この7種類の配合には、以下の役割分担があります。

  • 主薬(君薬): カッコン(解肌・発表)。首筋や背中の強張り(凝り)を緩める役割。
  • 臣薬: マオウ・ケイヒ(発汗・解熱)。体を温めて発汗を促し、熱を下げる役割。

 

葛根湯には攻撃的な役割を持つ生薬が目立ちますが、それらを支える土台となっているのが、残りの生薬群です。

 

  

1-2. 葛根湯の作用機序と桂枝湯の関係

葛根湯の作用機序を理解するうえで重要なのが、同じく風邪の初期に使われる桂枝湯(ケイシトウ)との関係です。

桂枝湯は、葛根湯の構成生薬からカッコンとマオウを除いた5種(タイソウ・ケイヒ・シャクヤク・カンゾウ・ショウキョウ)で構成されています。つまり、葛根湯の構造はシンプルで、以下の式で表せます。

 

 葛根湯=桂枝湯+カッコン・マオウ

 

漢方医学的に、風邪の引き始め にはウイルスなどの邪はまだ体の表面(表)にあると考えます。

桂枝湯は軽い発汗作用を持つ処方です。葛根湯は、さらに強い発汗作用を持つマオウ、血流量を増加させつつ体を冷やすカッコンを加え、汗を出すことで体の表面にある熱や邪を外へ追い出し、症状を改善します。

 

近年の作用機序の解明を目的とした研究では、葛根湯の内服 による体温上昇が、生体防御因子であるマクロファージの貪食活性を向上させ、免疫能を高めることが報告されました。

これにより、インフルエンザウイルス等の増殖抑制に寄与し、症状改善に有効であると考えられています。

 

葛根湯を飲むとゾクゾクするのは、葛根湯自体がゾクゾクさせるわけではありません。

本来、葛根湯はゾクゾクする寒気(悪寒)がある時に飲む薬であるため、そのような感覚と結びつきやすいのです。

ただし、薬剤師としてはマオウの交感神経刺激作用による振戦(震え)や動悸の可能性を除外する必要があります。

服薬指導の際は、この鑑別を念頭に置くことが重要です。

 

 

2.葛根湯製剤の成分比較|医療用・OTC・メーカー別

医療用と市販薬(OTC)、また同じ医療用であってもメーカーによって異なるのが、生薬の配合量です。

厚生労働省 の定めた「日本薬局方」には、製法や漢方薬の構成生薬の最大量などが記載されています。

最大量を用いて作られた漢方薬は、満量処方と呼ばれます。

 

一方、多くの一般用医薬品の成分量は、医療用漢方薬の50〜80%ほどです。

パッケージなどに1/2量や2/3量と記載されています。

  

 

2-1. 医療用葛根湯の成分量の比較|ツムラとクラシエ

薬局で頻繁に目にするツムラ(1番)クラシエの医療用製剤(1日量)の成分量は、以下のとおりです。

 

ツムラとクラシエの医療用葛根湯の成分量の比較
ツムラ クラシエ
構成生薬成分量 本品7.5g中、下記の割合の混合生薬の乾燥エキス3.75gを含有する。
  • 日局カッコン 4.0g
  • 日局タイソウ 3.0g
  • 日局マオウ 3.0g
  • 日局カンゾウ 2.0g
  • 日局ケイヒ 2.0g
  • 日局シャクヤク 2.0g
  • 日局ショウキョウ 2.0g
本品1日量(7.5g)中、下記の混合生薬より抽出した日局葛根湯エキス5,200mgを含有する。
  • 日局カッコン 8.0g
  • 日局タイソウ 4.0g
  • 日局マオウ 4.0g
  • 日局カンゾウ 2.0g
  • 日局ケイヒ 3.0g
  • 日局シャクヤク 3.0g
  • 日局ショウキョウ 1.0g

  

よく見るツムラ(1番)は満量処方ではありません。

一方、クラシエ(EK-1)はカッコンが8.0g配合された満量処方となっています。

成分量が多い方が効き目の強い可能性がありますが、一方で胃腸への負担が増す可能性もあります。

メーカーごとの違いを理解しておきましょう。

 

  

2-2. 一般用医薬品葛根湯の成分量の比較|ツムラとクラシエ

次に、OTC医薬品の比較です。ドラッグストアなどで販売されている製品も、メーカーによって成分量が異なります。

ツムラ、クラシエで製造されている葛根湯の成分量は、以下のとおりです。 

 

ツムラとクラシエの一般用葛根湯の成分量の比較
ツムラ漢方葛根湯エキス顆粒A 葛根湯エキス錠クラシエ
構成生薬

本品2包(5.0g)中、下記の割合の葛根湯エキス(2/3量)2.5gを含有。

  • カッコン 2.68g
  • タイソウ 2.01g
  • マオウ 2.01g
  • カンゾウ 1.34g
  • ケイヒ 1.34g
  • シャクヤク 1.34g
  • ショウキョウ 1.34g
1日の服用量12錠(1錠400mg)中、葛根湯エキス(1/2量)2,600mgを含有。
  • カッコン 4g
  • タイソウ 2g
  • マオウ 2g
  • カンゾウ 1g
  • ケイヒ 1.5g
  • シャクヤク 1.5g
  • ショウキョウ 0.5g

 

ツムラの一般医薬品の葛根湯エキス顆粒Aは2/3量、クラシエの一般医薬品の葛根湯は顆粒3/4量・錠剤1/2量になっています。しかし、一般医薬品の葛根湯でも満量処方のものは存在します。

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