2018.04.03
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かかりつけ薬剤師としての海外旅行が好きな患者さんへの対応法

【コラム/薬読】

メディカルサポネット 編集部からのコメント

薬の取り扱いは訪問国によって異なります。持ち込み制限・持ち出し制限の他、日本を出国するために処方せんのコピーまたは医師の証明書、英文の薬剤証明書などの携帯が必要とされるケースがあります。患者さんの中に、海外旅行が好きな方がいらしたら案内に注意してください。

 

かかりつけ薬剤師として特定の患者さんへ指導を行う場合には、病状や投薬についてだけではなく、 

生活面を含めた総合的なアドバイスが求められます。

日常的なサポートはもちろんですが、旅好きな患者さんへ対してのアドバイスはどうでしょう。

旅行先によっては指導の内容も異なります。海外旅行では薬の持ち込みにも条件があります。

患者さんが海外旅行をする際に、注意したいポイントをお伝えしましょう。

  

 

特に気をつけたいのは向精神薬

年齢を問わず海外旅行を楽しむ人が増えるなか、あまり知られていないのが各国での薬の持ち込み・持ち出し制限です。特に注意したいのが、向精神薬の携行でしょう。

 

日本では気軽に処方される「フルニトラゼパム(商品名:ロヒプノール、サイレース)」はアメリカやカナダでは持ち込み禁止薬物として指定されています(2018年3月時点)。また、向精神薬に指定されている薬剤は、日本からの出国に際して国内から持ち出せる量や海外から持ち込める量にも制限があります。

 

2016年10月に新たに向精神薬として利用されはじめた「エチゾラム(商品名:デパス)」や「ゾピクロン(商品名:アモバン)」も制限の対象となるため、注意をしておきたいところ。

制限を超える量を海外旅行に携帯する場合は、日本を出国するために処方せんのコピーまたは医師の証明書の携帯が必要となります。

 

日本国内から持ち出せる量と海外から持ち込める量について例を挙げてみてみましょう。

 

例えば、持ち出しの場合、「フルニトラゼパム」は60mg、「エチゾラム」は90mgといった上限が日本では設定されています。薬剤によりさまざまな規格があるためひとくくりにはできませんが、30日分以上の持ち込みについては、指導を行ったほうが良いでしょう。

 

ポイントは英文の薬剤証明書

向精神薬はもちろんのこと、糖尿病のインスリン製剤のような自己注射薬も注意が必要です。

自己注射薬は覚せい剤の使用に悪用される可能性があるため、海外へ携行する際は必ず英文の薬剤証明書が必要となります。

 

また患者さんによっては粉砕指示により、錠剤を粉薬にしている場合もあります。

高齢者や身体障害者であっても例外はなく、常用薬がある場合は無用なトラブルを回避するためにも、薬剤証明書を携行するように指導するのもよいでしょう。

携帯輸出入に制限のある薬剤を携行する際、特に大切なのは「薬剤を何の目的で使用するのか」が明記された英文の証明書です。

英文の証明書発行に対応していない病院もあるため、早めの準備が必要です。

英文の証明書を主治医に書いてもらえない場合は、お薬手帳を携行して旅行医学認定医がいる病院で発行してもらったり、主治医に発行してもらった証明書を英文に翻訳してくれる会社に依頼したりすることで、準備が可能です。

旅行医学認定医がいる病院は「日本旅行医学会」のホームページで検索することができます。また、「旅の医学社」では英文薬剤証明書の作成代行を行っているようです。

旅行会社によっては証明書の準備をオプションで行っている場合もあるため、ツアー参加の場合には必ず相談するように指導しましょう。

  

旅行先へ薬剤を持ち込む際の世界標準ルール

 

向精神薬に限らず、国によっては規制対象となっている薬剤があり、旅行先へ携行する場合には注意が必要です。対象となる薬剤を携行して海外へ行く患者さんがあれば、下記のような世界標準ルールを伝え、アドバイスを行いましょう。

 

■英文薬剤証明書の所持

渡航先で規制対象となっている薬剤を持ち込む場合は、日本語で書かれた処方せんのコピーや証明書ではなく、英語で書かれた証明書が必要となります。このとき、万が一に備えて連絡の取れる主治医の電話番号も控えておくといいでしょう。

 

■税関では必ず自己申告する

携帯輸出入に制限のある薬剤は税関での自己申告も忘れずに行う必要があります。米国では2001年9月11日のテロ事件以降、チェック体制が強化され、違法持ち込み摘発の頻度が高くなっています。自己申告せずに違法薬物所持を疑われてしまうと、別室で尋問を受けることになる可能性もあり、せっかくの楽しい旅行が台無しになってしまいます。

 

■必要な分だけを携帯する

海外旅行の期間に応じて必要な分だけ携帯することも大切です。余裕を持って準備したいとしても、やりすぎは禁物。1週間の海外旅行なのに30日分の薬を携帯するなど、あらぬ疑いをかけられるような行為は控えたいところです。

  

海外旅行好きの人でも薬の携行については知らないもの

海外へ行き慣れた人でも、薬剤の持ち出し制限についてきちんと理解している患者さんは多くありません。

特に「フルニトラゼパム」は日本では当たり前のように処方される向精神薬のため、処方せんを受け付けた際は海外への渡航予定はないか確認するか、指導の際にひとこと伝えられると親切です。

患者さんの役に立つような情報を積極的に投げかけることも、頼れるかかりつけ薬剤師になるポイントではないでしょうか。

 

 

出典:薬剤師のエナジーチャージ 薬+読

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