2022.05.30
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2022年度の報酬改定のポイントを押さえる!今後の取り組むべき事も全て解説します!

【セミナーレポート】講演「2022年度報酬改定のポイント」
HYUGA PRIMARY CARE株式会社 代表取締役 黒木哲史氏

2022年度の報酬改定のポイントを押さえる!今後の取り組むべき事も全て解説します!

 

編集部より

2022年度の調剤報酬改定では、「調剤料」が「薬剤調製料」となったほか、地域支援体制加算が4区分に分けられるなど、「対物」から「対人」へ、あるいは「門前」から「地域」へという流れが一層加速する改定となりました。調剤報酬改定の主なトピックスについて、在宅訪問で数多くの実績を持つHYUGA PRIMARY CARE株式会社 代表取締役 黒木哲史氏に解説していただきました。

 

講師/HYUGA PRIMARY CARE株式会社 代表取締役 黒木哲史氏

セミナーテーマ/「2022年度報酬改定のポイント」調剤報酬改定後に薬局や薬剤師が行うべきこととは?

取材・文/横井かずえ

編集・構成/メディカルサポネット編集部

 

1.完成しつつある医薬分業、処方せんの次なる流れは“地域包括ケアシステム“

まず始めに私と弊社について簡単にご紹介します。私自身は薬剤師で、在宅訪問を中心に取り組んでいるHYUGA PRIMARY CARE株式会社の代表を務めています。2007年11月にたった3人で設立した会社ですが、今では38店舗に薬剤師119人を含む従業員437人を擁し、約7800人の患者の在宅訪問を行っています。具体的な改定の説明に入る前に、調剤報酬改定の背景に何があるかについても触れたいと思います。背景を知ることによって、改定全体に対する取り組み方も変わってくると思うからです。

 

 

2022年度の報酬改定のポイントを押さえる!今後の取り組むべき事も全て解説します!

※出所:内閣府「令和2年度高齢社会白書」

 

 

薬局を取り巻く事業環境を見ると、2025年に65歳以上人口がピークを迎えた後も、2055年頃までは在宅医療や介護の対象となる75歳以上人口は増え続けていきます。要介護認定者数も増え続け、単身世帯の増加や、要介護度3以上の重度の要介護者の増加率が高くなっていく傾向があります。

 

 

2022年度の報酬改定のポイントを押さえる!今後の取り組むべき事も全て解説します!

※出所:第4回在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ(厚生労働省)2018年5月

  

 

こうした中で政府は、2025年までに訪問診療を受けている人の数を、現在の約71万人から最低でも100万人に増やすように目標を掲げています。このギャップだけでも30万人の差がありますが、私個人としては訪問診療を必要とする患者は100万人ではまだ足りず、少なくとも120万人程度はいるものと考えています。では、こうした背景の中で薬局は何ができるのでしょうか。それこそが今回の調剤報酬改定の重要なポイントになってくるのです。

 

 

2022年度の報酬改定のポイントを押さえる!今後の取り組むべき事も全て解説します!

※出所:保険調剤の動向(日本薬剤師会)

 

 

処方せん受取率(医薬分業率)を見ると、2020年度は75.7%となっています。処方せん受取率は100%にはなりませんから、約半世紀近くをかけてほぼ医薬分業も完結しつつあるのだと思います。それではその後、処方せんはどこへ行くのでしょうか。その答えのひとつは地域包括ケアシステムです。

 

 

2022年度の報酬改定のポイントを押さえる!今後の取り組むべき事も全て解説します!

※出所:厚生労働省「地域包括ケアシステム」

 

 

地域包括ケアシステムは、およそ中学校区をひとつの単位として、医療と介護、自治会やボランティアなどの地域が一体となって高齢者をケアしていこうというシステムです。自助、互助、共助、公助でシステムを作り上げていくという考え方です。地域包括ケアシステムで話題になるモデルのひとつに柏市のモデルがあります。

 

 

2022年度の報酬改定のポイントを押さえる!今後の取り組むべき事も全て解説します!

※出所:在宅医療・介護多職種連携柏モデルガイドブック【第二版】

 

 

柏市では以下のこと等に取り組むことで、在宅医療を進めてきました。

①在宅医療の負担軽減のためのバックアップシステム

②顔の見える多職種連携

③リアルタイムに患者情報を共有できる情報システム

④出前講座や広報誌など市民への啓発

⑤拠点となる地域医療連携センターの開設

こうしたさまざまな取り組みの中で、やはり情報共有や地域の会議への参加など、いかにして連携し、関係を構築していくかが最も重要になると考えています。いかにして顔の見える関係を築いていくかが、地域包括ケアシステムを構築する第一歩なのです。

 

 

2.調剤報酬改定が目指すのは「患者のための薬局ビジョン」

ここまでお伝えしてきたことは、今回の調剤報酬改定の背景になる話題です。これに加えてもうひとつ、抑えておくべきポイントがあります。それは、そもそも調剤報酬改定はどこを目指していて、どこに向かっていくのかということです。調剤報酬改定が向かっている先は2015年に厚生労働省が公表した「患者のための薬局ビジョン」です。

 

 

2022年度の報酬改定のポイントを押さえる!今後の取り組むべき事も全て解説します!

※出所:厚生労働省「患者の為の薬局ビジョン」

 

 

「対人から対物へ」や「門前からかかりつけへ」、あるいは健康サポート薬局や休日夜間対応など、すべてこのビジョンに書かれているものです。さまざまな改定項目は、すべてこのビジョンに向かって行われているのです。まずはここを抑えておく必要があります。また、ビジョンでは専門性に加えてコミュニケーション能力の向上も求めています。ここはこれからますます求められる能力だと考えています。

調剤報酬改定の今後の大きな流れとしては、薬価差益と対物業務にかかる技術料は年々減少し、その分、対人業務である管理料に置き換わる流れになっています。つまり対人業務をしっかりやらなければ、薬局として生き残ることができないということが予測されます。

 

  

3.2022年度の調剤報酬改定で改定された内容とは

ここからは具体的な改定内容に入りたいと思います。現行の報酬体系では、調剤技術料、薬学管理料、薬剤料とあり、調剤技術料の中には調剤基本料と調剤

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