2022.08.04
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介護事業におけるメンタルヘルスに関する一考察

菊地雅洋の激アツ!介護経営塾 ~選ばれる介護事業所であり続けよ~ Vol.11

菊地雅洋の激アツ!介護経営塾 ~選ばれる介護事業所であり続けよ~ 

 

編集部より

来るべき”2040年問題”に向けて、介護事業所の経営はこれからさらに厳しさを増すと予想されています。いかにして生き残るか。経営者たちはその手腕が問われようとしています。本コラムでは「masaさん」の名で多くの介護事業経営者たちから慕われる、人気介護事業経営コンサルタント菊地雅洋さんに、「介護経営道場」と称して時にピリ辛に、時に激辛に現状と課題、今後の展望を伝えていただきます。第11回は介護事業所におけるメンタルヘルスについて考えます。「特別な誰か」ではなく「誰も」がメンタルヘルス不調に陥る可能性があると考えてマネジメントするためには何が必要なのでしょうか?また、経営者や管理者がスタッフのストレスやハラスメントの元凶であるケースもあり、そのことに気付いていない人が多いと解説する菊地さん。スタッフへの教育・指導方法を見直す機会を持つことも管理者に求められています。

 

メンタルヘルス不調の原因となるストレス

 

人がメンタルヘルス不調となる原因として、さまざまなストレスが考えられます。ただしストレスはすべて否定されるわけではなく、ストレスが適度にある時に仕事のパフォーマンスは最も高くなります。例えば売り上げ目標などが仕事のパフォーマンスを高める場合がありますが、これも目標を達成せねばならないという適度のストレスが存在する結果であると言えます。しかし適度なストレスを過ぎて、過剰なストレス状態ではパフォーマンスは低下し、イライラなどの精神不安、体調不良などを引き起こします。達成不可能な売り上げ目標に毎日苦しめられるような状態がこれにあたります。

 

このように、ストレスが一定量あったほうが仕事のパフォーマンスは高まり、それが最適なレベルを越えて、強い情動が喚起されるような状態になるとパフォーマンスは逆に低下します。そしてパフォーマンスが高まる良いストレスは「ユーストレス」と呼ばれ、パフォーマンスが低下する過度な良くないストレスは「ディストレス」と呼ばれます。人に対して職場などでディストレスがかけられると、生体反応としては自律神経やホルモンバランスが乱れ、免疫の働きが落ちて肉体的にも元気がなくなる状態に陥ります。場合によってそれは、うつ状態や不安といった精神症状などを引き起こすことが知られています。メンタルヘルスケアは、これに対応する対策を総じて指すものです。

 

菊地雅洋の激アツ!介護経営塾 ~選ばれる介護事業所であり続けよ~ 介護事業におけるメンタルヘルスに関する一考察

   

メンタルヘルス不調を防ぐ事業者責任

 

わが国では年間ベースでみると、精神的不調で休職することによる損失が約460億円あり、自ら命を落とすことによる損失も7.000億円出社していても精神的不調により苦しむことによる損失に至っては4兆円以上といわれています。

 

この状況を鑑みると、企業によるストレス対策は、コストではなく投資であると言えます。そのために2014年6月に労働安全衛生法が改正され、2015年12月~従業員が50名を超える企業には、1年に1回ストレスチェックを行うことが義務化されました。この背景には、1999年に旧厚生省が、職場のストレスがメンタルヘルス不調の原因となることを認めたという経緯があり、過労による自殺などの、企業の賠償責任を問う裁判が増え、企業側が賠償命令を受ける判例が増えているという社会情勢も関係しています。

 

つまり自殺やメンタルヘルス不調の責任は会社側=経営層と管理者にあるというコンセンサスができあがっているといえ、人の命や暮らしを護る介護事業者が、このことをおざなりにすることは許されないのです。

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