2026.01.19
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事業戦略上より重要となるホスピス機能

~菊地雅洋の一心精進・激動時代の介護経営~Vol.14

~菊地雅洋の一心精進・激動時代の介護経営~

    

編集部より

2024年に行われた介護報酬改定を通して、介護業界には多くの課題が生まれました。経営課題はもちろん、人材不足の解決、介護DXをどのように進めるか、事業所経営者は様々な問題と直面することでしょう。

そこで、本コラムでは「masaさん」の名で多くの介護事業経営者たちから慕われる、人気介護事業経営コンサルタント菊地雅洋さんに、「菊地雅洋の一心精進・激動時代の介護経営」として、介護の現場に重要なノウハウやマインドを解説頂きます。

  

第14回は、事業戦略上より重要となるホスピス機能です。

 

2040年問題や多死社会を背景に、医療・介護を取り巻く環境は大きな転換点に差しかかっています。

病床削減や人材不足が進むなか、介護事業にはこれまで以上に終末期への対応力が求められる状況です。

こうした政策動向を踏まえ、ホスピス機能を軸とした介護経営のあり方が問われています。

 

本コラムでは、報酬改定や病床削減の流れを読み解きながら、住宅型有料老人ホームでの実践例、人材育成の視点、さらに看取り介護の本質に至るまでを具体的に解説しています。

 

これからの介護経営を考えるうえでのヒントとして、ぜひご一読ください。

  

執筆/菊地雅洋(北海道介護福祉道場あかい花 代表)

編集/メディカルサポネット編集部

   

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1. 2040年問題と多死社会に向けた政策誘導

1. 2040年問題と多死社会に向けた政策誘導

 

介護報酬は3年に一度定期改定され、診療報酬は2年に一度定期改定されている。その為、6年ごとに介護と診療のダブル報酬改定が行われることになり、近直のそれは2024年度改定だったわけである。

 

そして次のダブル改定は2030年度ということになるが、それまでは診療報酬が介護報酬より短い周期で改定されていくことになるため、その流れが介護報酬に影響していくことになる。

 

つまり介護報酬改定は、常に診療報酬改定の風下あるいは川下にあるといってよく、診療報酬改定の動向を見つめながら介護事業戦略を見直していくことが必要になる。ただしそれはかなりミクロな流れの読み方になる。

それよりマクロな視点を考えた場合、国の医療・介護政策がどのような方向に向けて舵取りされているのかを見つめる必要がある。

 

すると今見えてくることとは、2040年問題多死社会に向けた政策誘導である。

2040年問題とは、高齢者人口がピークに達するであろうと想定されることに伴い(※実際のピークは2043年ごろと予測されている。)、要介護者数もピークに達し、さらに85歳以上の高齢者数がピークに達するために、状態急変ケース(※元気で自立していた高齢者が、脳出血等を急性発症して要介護状態にあること)が増える中で、少子化が止まらずに生産年齢人口がさらに減り続ける。そのため財源と人材はさらに厳しくなるという問題である。

 

そうした中で我が国は年間死者数が増え、その数は2023年時点で既に157万6016人となり、死者数・増加数共に戦後最多となった。このように増え続ける死者数に対応して、医療機関がその死に場所になるとすれば莫大な財源が必要になるという問題がある。その為、国は死ぬためだけに入院しなくてよい仕組みを医療制度改革・介護制度改革の両者で実現しようとしている。

 

例えば増え続ける老衰死に対応するため、2024年度の報酬改定では、居宅介護支援費のターミナルマネジメント加算について、末期がんの利用者に特定されていた縛りを外して、疾患を特定せず算定できるようにしたのもその対策の一つである。今後も介護保険の居宅サービス・施設サービス両面で看取り介護・ターミナルケアを実施する方向で加算新設・強化・拡大が図られていくことになる。

 

そのような中で医療機関は、急性期医療を中心としたサービスを行うように政策誘導されており、かつて老人病院と呼ばれた長期入院できる医療機関は、その体制では経営が立ち行かなくなるために、在宅療養を支援する医療機関(※いわゆる在宅療養支援病院等)に変換を促されている。

    

 

2. 医療病床の削減と介護事業の規模拡大誘導の波

2. 医療病床の削減と介護事業の規模拡大誘導の波 

政府・与党は、病床数削減方針を打ち出しており、一定条件下でベッド数を削減した医療機関に補助金を出すなどして、その政策を進めている

自民党と連立政権を組む日本維新の会は病床削減に積極的な政党で、同党の岩谷幹事長は11/23の自民・公明両党との協議の後、「約11万病床が余剰となっており削減に向けた理解が得られた」と述べている。

 

全国の医療病床がいきなり11万床減らされることにはならないが、そこに向けて徐々に医療病床が削減されていくことは間違いない

つまり死者数が増える中で、医療機関のベッドは大幅に減っていくのだ。そこに対応した介護支援が求められており、そこには介護事業経営上の大きなビジネスチャンスが存在するということだ。

 

また財源と人材が不足する中で、要介護者が増える状況を鑑みた場合、国は介護事業の規模拡大を図っていくことは確実だ。

離島以外の小規模特養の単価をカットし、大規模通所リハビリが、リハ職を一定数以上配置するなどの要件をクリアすれば規模別報酬の減算を受けなくて済むようにした前回2024年度の介護報酬改定の波は、2027年度介護報酬改定にも引き継がれ、事業規模を拡大・多角化することが、安定した介護事業経営には不可欠になる。

 

多死社会対応経営規模の拡大化誘導。この二つの視点を鑑みれば、おのずと見えてくるものがある。

それは今後の介護事業経営では、ホスピス機能を備えおくことが不可欠であるということだ。(※ホスピスとは、終末期を迎えた人が最期を快適に過ごすための包括的なケアを提供する施設もしくはサービスを指す言葉。)

 

ホスピス機能を持ちあわせた事業展開をしないと時代の波に乗り遅れて、介護業界で生き残ることは難しくなるのだ。介護事業の規模拡大・多角化をホスピス機能なしで実現した場合にどうなるかを考えてほしい。

自らが所属する事業者内で、居宅サービスから施設サービスあるいは居住系サービスを横断的に利用してくれた要介護者の方が、いよいよ終末期を迎えた際に、その方を自ら所属する介護事業者から放り出して、他の事業主体に委ねざるを得なくなるということだ。

 

長い期間、高齢者の方々の人生に寄り添ってきて、信頼関係を築いた従業員と要介護者の方々がいる。

そうであるにもかかわらず終末期という時期に、その大切な絆を断ち切って、他の事業者に利用者の方々を委ねなければならないとしたらどうだろうか。

それは自らの事業から利用者を放り出すということであり、高齢者介護に携わる者の責任放棄といわれかねない。それは即ち使命感や誇りを持つことができない介護事業経営ではないかと思う。

 

そうしないために是非、ホスピス機能を持ったサービスを組み込むことを介護事業経営戦略の中に、取り入れてほしい。そのためには従業員に対して

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