2025.09.01
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介護生産性向上のための人材活用と業務改革

~菊地雅洋の一心精進・激動時代の介護経営~Vol.9

    

編集部より

2024年に行われた介護報酬改定を通して、介護業界には多くの課題が生まれました。経営課題はもちろん、人材不足の解決、介護DXをどのように進めるか、事業所経営者は様々な問題と直面することでしょう。

そこで、本コラムでは「masaさん」の名で多くの介護事業経営者たちから慕われる、人気介護事業経営コンサルタント菊地雅洋さんに、「菊地雅洋の一心精進・激動時代の介護経営」として、介護の現場に重要なノウハウやマインドを解説頂きます。

  

第9回は、「介護生産性向上のための人材活用と業務改革」です。 

2040年には要介護者数がピークに達し、介護業界における人材確保が一層困難になると予測されています。介護現場では業務の効率化が強く求められており、見守りセンサーやICTツールの導入が進んでいます。しかし、身体介護に伴う複雑な動作はテクノロジーで完全に代替することが難しいため、介護士が多様な業務に柔軟に対応することが重要です。これにより、限られたリソースを最大限に活用し、質の高い介護サービスの提供が期待されています。

では、より効率的に業務を遂行するためには、具体的にどのようにすればよいのでしょうか。

新たな視点からの人材活用と業務改革について具体的に解説いたします。ぜひ貴社の経営にお役立てください。

  

執筆/菊地雅洋(北海道介護福祉道場あかい花 代表)

編集/メディカルサポネット編集部

   

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1. テクノロジー導入による生産性向上の限界

介護生産性向上に欠かせない介護職員のスキルアップ

 

団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となる2025年以降、我が国では75歳以上の人口増は落ち着くが、85歳以上の人口が伸びていくことになる。そうなると当然要介護状態となる人の数も増える。しかも少子化が止まる見込みはまったくなく、新成人数は毎年過去最少を更新しているため、生産年齢人口は縮小の一途をたどることになる。

このように要介護者の「支え手」が財政・サービス両面で急速に縮小していき、要介護者数がピークに達する2040年頃にはその不足具合もピークに達する。つまり我が国の介護業界は、今後人材確保が益々困難となるのである。

 

その為、生産性向上の取り組みは待ったなしであり、介護実務の場では見守りセンサー・自動体位交換機・高性能紙おむつなどの導入ICTツールの活用などに積極的に取り組む必要がある。

このことはこの連載の第5回配信記事「待ったなしの介護生産性向上」でも論じているところである。

 

しかし厄介なことに身体介護という行為は、テクノロジーが代替できない部分が多く、力が必要な動作の直後に、連続して力をかけずに柔らかくボディータッチするという巧緻性が必要な動作を行わねばならないことがある。

人間はこの複雑な連続した行為を難なくこなすことができるが、AI搭載ロボットにこれが可能となるかは大いに疑問である。

現実の介護サービスの場には、そのようなテクノロジーは存在していない。

 

だからこそ人材が少なくなることを見越して、より効率的な人材活用策を考えていかねばならない。

人材を一つの職場に縛り付けるのではなく、能力に応じて複数の職場に活動範囲を広げるとともに、より効率的に業務をこなせるように新たな視点で業務改善を進めるなどの新たな対策が求められる。

    

 

2. 地域3類型と複合型サービスの新設議論

 

2. 地域3類型と複合型サービスの新設議論

7/24に行われた、「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会(第9回)では、まとめ(案)(※厚労省PDFに遷移します)が示されている。

その中身を読むと、社保審・介護保険部会での介護保険制度改正議論の内容とほぼ同じであり、今後の介護事業はその方向に向かって進むことがほぼ確実である。

メインとなるのは、人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制であり、「地域軸」という考え方を取り入れて、戦略的・弾力的に制度を運用していくというもの。いわゆる全国の地域を3類型に区分する考え方だ。3類型とは、中山間・人口減少地域大都市部一般市とされている。

 

このうち中山間・人口減少地域については、サービスを維持・確保するための柔軟な対応策として、「訪問介護通所介護等における配置基準等をより弾力化してサービス間の連携・柔軟化を図り、双方における人材等の行き来を柔軟化することを検討することも考えられる。」として、前回(2024年度)の改正議論でも取り上げられたものの、結局見送られた複合型サービスの新設も議論の俎上に乗せている。

 

前回複合型サービスの創設がお蔵入りした理由は、それが柔軟な人員配置とは言えず、ただ単に現行の通所介護と訪問介護の人員を合算させて合体させたものに過ぎなかったからである。

その轍を踏まないようにする必要がある。特に中山間・人口減少地域については、高齢者人口が減少し、サービス需要が減少する中、利用者への介護サービスが適切に提供されなければならないのだから、コロナ禍特例のように、訪問介護員の資格を持たない通所介護事業所の職員が訪問サービスを行っても良いとするような大胆な人材活用策を図っていかねばならない。

 

だがそれは必ずしも中山間・人口減少地域だけに必要なサービスとは言えないと思う。

大都市部における需要急増を踏まえたサービスを考えた場合も、こうしたより柔軟な人員活用策が検討されてしかるべきだ。

お蔵入りした複合型サービスとは異なる、配置基準が大幅に緩和された新複合型サービスなら、全国どこの地域でもニーズがあろうというものだ。

 

 

3. 類型区分は必要なのか?

 

3. 類型区分は必要なのか?

 

大都市部については、1人暮らしや認知症の高齢者・老老世帯などの急増を想定し、ICTやAI技術を活用した24時間365日の見守りで、緊急時やニーズが生じた際に機動的に応えるサービスモデルの構築が唱えられている。

しかしそうしたニーズは中山間地でも十分あるのだから、それも全国展開すべきモデルではないのか。

 

まとめ(案)では、『一般市等においても、既に、中山間や人口減少エリアを抱えている地域もあると考えられる。

近い将来に「中山間・人口減少地域」になることを見越して、早い段階から準備を進め、必要に応じた柔軟な対応を図っていく必要がある。』としており、そもそも一般市中山間・人口減少地域は分類する必要がないことも示唆されている。

つまり地域分類・3類型など必要なく、それぞれの地域ごとに保険者の判断で、人員配置の柔軟化が可能となる施策こそが必要ではないのか。

 

地域を3分類に分けるという意味は、その地域の特性に合わせた柔軟なサービス提供を目指すということであり、究極の地域包括ケアシステムにもつながると期待する向きもある。だがその分類は主に人口密集度・要介護者数によって決まるといってよい。

果たして地域特性はそのような問題に限定して考えて良いのだろうか。地域分類で柔軟なサービス提供を可能にするというが、例えば都市部で柔軟化された形態のサービスが中山間地では認められないとしたら、それによって柔軟性の利益を全く得られないことになる。それは不平等ではないと言えるのだろうか。

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