2025.08.04
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介護事業の命運を左右する職員研修の在り方

~菊地雅洋の一心精進・激動時代の介護経営~Vol.8

    

編集部より

2024年に行われた介護報酬改定を通して、介護業界には多くの課題が生まれました。経営課題はもちろん、人材不足の解決、介護DXをどのように進めるか、事業所経営者は様々な問題と直面することでしょう。

そこで、本コラムでは「masaさん」の名で多くの介護事業経営者たちから慕われる、人気介護事業経営コンサルタント菊地雅洋さんに、「菊地雅洋の一心精進・激動時代の介護経営」として、介護の現場に重要なノウハウやマインドを解説頂きます。

  

第8回は、「介護事業の命運を左右する職員研修の在り方」です。 

日本の介護業界では、介護人材の不足が深刻化しており、生産性の向上が強く求められています。ICTやAIの活用により人手不足の解消が期待されていますが、実際の介護業務においては、テクノロジーが人を完全に代替することは困難です。そのため、介護職員が経験を積み、スキルを向上させることが不可欠です。

では、この状況に対してどのように対処すればよいのでしょうか。

求められる研修内容や虐待防止研修のあり方について、ポイントを解説します。さらに、筆者の講師としての心得や受講者の受け止め方についてもお話を展開していきます。ぜひ、職員研修のあり方に関する参考資料としてご活用ください。

  

執筆/菊地雅洋(北海道介護福祉道場あかい花 代表)

編集/メディカルサポネット編集部

   

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1. 介護生産性向上に欠かせない介護職員のスキルアップ

介護生産性向上に欠かせない介護職員のスキルアップ

 

介護人材の確保が益々難しくなる我が国では、介護業務においても生産性の向上が求められている。

介護職員がさらに少なくなることを見越して、ICTやAI搭載ロボット等をいかに使いこなし、最小限の人手でケアサービスを提供できるのかが今後の介護事業の命運を左右するといっても過言ではない。

 

しかし介護業務についた経験がある方ならわかると思うが、実際の介護業務ではテクノロジーが人に替わることができない場面が多々存在する。特に身体介護の場合このことは顕著だ。

力が必要な場面と、逆に力をかけすぎてはならず、デリケートに利用者にタッチをして、なおかつ巧緻な働きかけが必要な場面が交差し続けるのが身体介護である。

人間はこの連続した交差作業を難なくこなすことができるが、AIを搭載した介護ロボットがそうした動作を実現できるのかは不透明だ。そして今現在そのようなテクノロジーは介護実務の場に存在していないことだけは事実である。

 

介護実務を経験したことがない官僚や学者が、生産性向上を高らかに唱えても、実際の介護職員とのこの部分の感覚差は埋めることができないのではないかと絶望することがある。

だがそう言ってもおられず、生産性向上に結びつくことは早急に取り組んでいかねばならない。それほど社会全体の労働力不足は深刻化しているのである。

 

今現在一番有効な介護生産性の向上とは、正しい介護知識と専門技術を備えた介護職員が定着して働き続けてくれることである。スキルの高い介護職員が経験を積むほど、介護サービスの場の生産性は向上する。

介護事業経営者や管理職は、そのことを理解して介護職員のスキルアップという課題に取り組む不断の努力を惜しんではならない。

    

 

2. 求められる研修内容とは

 

求められる研修内容とは 

介護職員がスキルアップするためには、経験を重ねるだけではなく日々研鑽を重ねることが重要である。

その動機づけと正しい知識を生み出す場として、介護職員を対象とした研修会は有効かつ重要である。

だが慢性的な人材不足が解消されない介護事業者では、介護職員に研修を受けさせる時間さえ削り出せないとして、研修機会を得られない介護職員が増えている。

しかしそれは中・長期的に見れば、介護事業の生産性の向上を阻害し、なおかつ有能な職員が育ちづらい職場環境を生み出すことから、さらに介護人材が張り付かない職場となる最大要因ともなり得る。

 

だからこそ外部の研修に介護職員が参加できるようにシフトを組む必要がある。

さらに事業所内で定期的に研修を行うことは重要になる。

ある意味それは、今後の介護事業の経営を左右する重要な問題といえなくもない。

 

貴重な時間を削って介護職員が研修を受けるのだから、それは意味のある研修でなければならない。

ただ単に勉強した・学んだというアリバイ作りに終わって、介護業務の生産性向上や、介護サービスの品質向上につながらなければ意味がない。

だからこそ外部研修及び内部研修共に、講師や講師が話す内容を精査して選ぶ必要がある。

重要なことは求められる研修とは、単に情報や知識を伝えるだけのものではないということだ。

ネット検索して見つけられる情報を研修会で聴いても始まらないのである。

 

必要なのは介護職員として働き続ける動機づけを得られ、モチベーションアップにつながり、自身のスキルアップの必要性に気が付く研修であり、なおかつ研修内容は実践できる実務論でなければならない。

 

 

3. 虐待防止研修が意味をなさなくなるのは何故か

 

 

 

虐待防止研修を定期的に行っている介護事業者において、深刻な虐待事案が起きることがある。

なぜ虐待防止研修が効果を成さないのだろう。そもそも介護従事者がサービス利用者を虐待してはならないということは小学生でも解かる至極当たり前のことだ。

それなのになぜ介護事業における虐待がなくならないのだろうか。

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