
最近、「ハラスメント」に関する報道を目にする機会が非常に増えています。
医療現場も例外ではなく、「看護師白書」には、実際にさまざまなハラスメントを経験した看護師からの声が数多く寄せられています。
2020年6月からは、それまで十分に法整備が進んでいなかった「パワーハラスメント」についても、防止措置を講じることが事業主の義務となりました(中小企業は2022年4月より適用)。
では、看護職員の皆さんは、誰からのハラスメントを多いと感じているのでしょうか。
また、職場ではどのような対策が行われているのでしょうか。
本記事では「看護師白書2024年度版」のデータをもとに、看護師を取り巻くハラスメントの実態と、その防止に向けた取り組みについて、わかりやすく解説します。
編集・構成/メディカルサポネット編集部
1. 看護師に職場のハラスメント状況をアンケートした結果…
現在を含むこれまでの職場のハラスメント(セクハラやパワハラ、マタハラなど)の状況を尋ねたところ、以下のような回答となりました。
- 「受けたことがある」64.6%
- 「受けたことがない」14.3%
- 「他の職員が受けているのを見たことがある」14.7%
「受けたことがある」と「他の職員が受けているのを見たことがある」を合計した79.3%の人が、職場のハラスメントを経験しています。
2. 誰からハラスメントを受けたのか
ハラスメントを経験したことがある、見たことがあると答えた方に、それは誰からのハラスメントか尋ねたところ、上位に以下が挙げられています。
- 「上司」69.7%
- 「先輩」38.6%
- 「患者・入居者・利用者」31.8%
- 「医師」31.4%
- 「同僚」24.0%
「上司」が69.7%と突出して多い結果となりました。差し支えない範囲でハラスメントの内容についても回答をいただきました。
寄せられたリアルな声の一部を抜粋してご紹介します。
| 年代 | 回答 |
|---|---|
| 20代 | 患者から胸やお尻を触られた。体調不良で休んだ時に、師長から「自分の体調管理ができないなら、看護師を辞めてデスクワークの方が向いているよ」と言われた。 |
| 20代 | 認知症患者から殴る、蹴るなどの暴力を受けたり、ののしられる。異性の先輩からしつこく飲み会に誘われる。 |
| 30代 | コロナに罹患し1日休んだことについて、朝礼中にみんなの前で謝らなかったことを理由に、ナースステーションで叱責された。 |
| 30代 | 胸を触られる、抱き付かれる、盗撮される、性的な言葉を投げかけられる。妊娠の予定や性行為の有無を聞かれる。結婚や妊娠を急かす発言を繰り返される。 |
| 40代 | 「明日3人も妊婦がいるよ」と迷惑そうに言われた。皆の前で能力不足を大声で指摘された。 |
| 40代 | 「新人だから」と1年間希望休を申請させてもらえない。「2回は教えない」「あなただけ話しかけてあげない」などの発言。ミスを大勢の前で3日続けて責められた。 |
| 50代 | 特別養護老人ホームで看護課長をしていた際、施設の職員対応の不十分さを指摘したところ突然降格となり、退職に至った。 |
| 60代以上 | 過度な長時間残業。何時間も立ちっぱなしで叱責された。 |
ハラスメント行為は、嫌がらせやいじめ、人権侵害につながる恐れがあり、職場に深刻な影響を及ぼします。
看護の現場でも、患者から身体に触られる、暴力や暴言を受ける、上司や先輩から不適切な言動を受けるといった事例が報告されています。
体調不良による欠勤を責められる、性的な発言や私生活への過度な干渉を受ける、妊娠に関する否定的な言葉を投げかけられるなど、精神的負担の大きいケースも見られます。
さらに、意見を述べたことが降格につながったり、長時間残業や厳しい叱責が続いたりする例もあります。
このようなハラスメントは、看護職員のメンタル不調やモチベーション低下を招き、退職につながるリスクもあります。
では、こうした問題を防ぐために、どの程度の事業者が予防策に取り組んでいるのでしょうか。次に詳しく見ていきましょう。
3. ハラスメント予防に向けた取り組みを実施していますか?
2020年6月から、職場におけるハラスメント防止のために必要な対策をとることが義務付けられました(※)。
ハラスメントの予防に向けた取り組みを実施しているか尋ねたところ、以下の順に挙げられています。
- 「実施している」が75.0%と最も多い
- 「取り組む必要があるが、余裕がなく実施できていない」8.1%
- 「実施を予定・計画している」7.7%
- 「取り組む必要があるが、大きな問題となっていないので実施していない」5.3%
- 「取り組む必要がないので実施していない(ハラスメントは発生しない環境である)」3.9%
実施中または実施を予定・計画しているが全体の82.7%を占めますが、取り組む必要性があるものの実施に至っていない事業者は13.4%います。
(※)労働施策総合推進法などが改正され、職場におけるパワーハラスメント・セクシャルハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが雇用主に義務付けられました。(パワーハラスメントの措置義務については、中小事業主は2022年4月1日から義務化[それまでは努力義務])
4. どんなハラスメント予防策を、実施・計画していますか?
ハラスメントの予防に向けた取り組みを「実施している」「実施を予定・計画している」と回答した407事業者に、どのような取り組みを実施/計画しているか尋ねたところ、以下の順に挙げられています。
- 「ハラスメントについて相談できる窓口を設置している」が88.0%と最も多い
- 「就業規則などの社内規定に盛り込んでいる」77.9%
- 「ハラスメントに関する講演や研修を実施している」58.7%
- 「ポスターやリーフレットなどの啓発資料を配布・掲示している」31.2%
- 「上司に対し、部下への接し方などの研修・講習を実施している」22.9%
- 「職場におけるコミュニケーションの活性化などに関する研修・講習を実施している」21.9%
- 「アンケートなどで実態調査・把握に努めている」20.1%
相談できる窓口の設置や社内規定への追加をしている事業者は全体の約8~9割、ハラスメントなどに関する講演や研修を実施している事業者は約6割ですが、コミュニケーションの活性化に関する研修や講習を実施している事業者は約2割にとどまっています。
5. 実際に効果が高い取り組みは、どんな内容ですか?
ハラスメントの予防に向けた取り組みを「実施している」と回答した369事業者にどの取り組みの効果が高いか尋ねたところ、以下の順に挙げられています。
- 「ハラスメントについて相談できる窓口を設置している」が71.0%と最も多い
- 「就業規則などの社内規定に盛り込んでいる」43.6%
- 「ハラスメントに関する講演や研修を実施している」41.5%
- 「職場におけるコミュニケーションの活性化などに関する研修・講習を実施している」14.6%
- 「上司に対し、部下への接し方などの研修・講習を実施している」13.8%
- 「アンケートなどで実態調査・把握に努めている」13.0%
- 「ポスターやリーフレットなどの啓発資料を配布・掲示している」12.2%
6. まとめ
今回は、「看護現場におけるハラスメントの実態と自院での取り組み」についてご紹介しました。
ハラスメントは、組織の中で誰か一人でも誤った理解をしている人がいると、職場全体にとって大きなリスクとなります。
とくに看護の現場では、強いストレス環境や人間関係の密接さが影響しやすいため、より丁寧な対応が求められます。
そのため、定期的にハラスメント防止の方針を明確にし、相談窓口を設置するとともに、被害を受けた職員へのケアや再発防止に取り組むことが重要です。
また、万が一ハラスメントが発生した場合、組織として被害者だけでなく加害者も孤立させない視点が必要です。
孤立や過度なストレスは、ハラスメントを引き起こし、さらに助長する要因にもなり得ます。
経営者や人事、看護管理職の皆さまには、組織内で恒常的にハラスメント防止策に取り組むことが求められています。
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