2025.09.18
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第8回 クレームやインシデントへ、建設的な対応をするには?

現場で役立つ!看護マネジメント入門

第8回 第8回 クレームやインシデントへ、建設的な対応をするには?         

  

編集部より

看護管理を実践するには、患者さんに安全で安心な看護を提供するための優れたスキルだけでなく、看護師を適切に導くための現場管理、リーダーシップ、組織運営、コミュニケーションなどにまつわる力を身に付けることが求められます。

本連載では、看護師を適切に導くための現場管理、リーダーシップ、組織運営、コミュニケーション能力など、看護マネジメントに関するさまざまなテーマを解説しています。

 

看護の現場では、患者さんからのクレームやインシデント/アクシデントが発生した際の対応・指導が必要になることも少なくありません。

この時、基本的にどのような内容だったとしても、当事者を責めるのではなく、管理者としての責任を果たす姿勢が求められます。

今回は、責任者としてどのようにクレームやインシデント/アクシデントに関わり、対応すべきかを考えていきます。  

  

執筆株式会社ナレッジリング

編集メディカルサポネット編集部

          

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1.現場には「想定外」が付きもの

現場には「想定外」が付きもの

   

医療現場で出てくる話題は、決して明るく楽しいものばかりではありません。

例えば、検査やリハビリテーションが予定通りに進まず患者さんを待たせてしまう、点滴ラインの挿入が困難で何度も穿刺を繰り返してしまう、大部屋の患者さんが物音を立てることで他の患者さんの眠りを妨げ、怒りの声が上がる――。

こうした患者さんからのネガティブな訴えに、思わずため息をつきたくなることもあるでしょう。

 

また、誤薬をしてしまった、患者さんを転倒させてしまった、配膳する食事を取り違えてしまったなど、さまざまなインシデントやアクシデントが発生することも……。

 

そのような時にも管理者には、冷静かつ適切に、そして今後に生かすために前向きな対話を重ねる姿勢が求められます。

ごまかしたり適当にあしらったりするのではなく、状況を正確に把握し、できる限りの対応を尽くすことが、リーダーに求められる役割の一つです。

 

患者さんと看護スタッフ、双方の安心と安全を守り、信頼関係を良好に保つためにも、建設的な関わり方を意識したいものです。

 

 

2.患者さんと関わる時のポイント

患者さんと関わる時のポイント  

患者さん側と関わる際には、次のような点を意識することが望ましいでしょう。

フラットな目線で話を聞く 

まずは、患者さんが落ち着いて話せる場所やタイミングを見極め、丁寧に耳を傾けましょう。

立ち合いがある場合には、ご家族の話を聞くことも選択肢の一つです。

ただし、情報が増えるほど状況を把握しにくくなることもあるため、混乱しないよう、一つひとつ整理しながら話を聞くようにしましょう。

 

ここで心がけたいのは、どのような場面でも冷静に、フラットな目線で話を聞くことです。

患者さんやご家族の気持ちに寄り添う姿勢は大切ですが、感情移入し過ぎてしまうと、状況を客観的に捉えることが難しくなります。管理職は、患者さんを守ると同時に、看護スタッフの育成にも責任を持つ立場なので、事実を客観的に把握する力が求められます。

 

感情が入り過ぎると、情報の正確性が損なわれる可能性があるため、5W1H(いつ・どこで・誰が・誰に・何を・どのように)を意識しながら話を聞くことも工夫の一つ。「事実」に集中し、冷静な対話を心がけることが重要です。

 

適切な言葉で共感を示す

患者さんが話をしている途中で、「いや、それは……」「でも……」などと否定的な言葉を挟むと、相手は「話を遮られた上に、理解してもらえなかった」と悲観的になってしまうことも。

そのような負の感情は疑念や不信感につながり、やがて怒りに発展してしまうことがあるため、相手の気持ちを受け止める姿勢を示すことが肝心です。

 

ただし、「受け止める姿勢を示すこと」と「すべてを受け入れること」は異なります。

例えば、その場の雰囲気に合わせて「とてもよく分かりました、それはこちら側のミスですね」といった言葉を安易に口にすれば、その後、適切な対応が難しくなる可能性があります。

「そう思っていらっしゃるのですね」「そう感じておられるのですね」といった表現を使いながら、相手の感情に寄り添う姿勢を丁寧に伝えるようにします。

 

また、謝罪する際にも、言葉選びには細心の注意が必要です。

例えば、「この度は申し訳ありません」と、「不快な思いをさせてしまい申し訳ありません」とでは、伝わり方に大きな違いがあります。前者は出来事全体に対する謝罪、後者は相手の感情に焦点を合わせた謝罪です。

ささいな表現の違いではありますが、管理者の一語一句が思いがけない影響を与えることもあるため、慎重な対応が求められます。

 

誠実な態度を示し続ける

状況を的確に把握し、患者さんの気持ちに寄り添った上で、解決に向けた行動を取ることが大切です。

例えば、患者Aさんから「食事を控えて検査の順番を待っているのに、『順番が来たらまた声をかけます』と言って看護師が立ち去り、なかなか検査に呼ばれない」といった訴えがあったとします。

この場合は、Aさんに検査の進捗状況を伝える、検査の前に食事が可能かどうか主治医に相談するなど、可能な範囲で丁寧に対応することが考えられます。

 

その際、病院側の都合を押し付けるのではなく、患者さんと相談しながら決めていけると理想的です。

また、管理者だけでなく担当した看護師も一緒に対応し、Aさんとの関係性が今後も円滑になるよう働きかけます。

 

さらに、一定の対応後も「その後いかがですか」「ご不明な点はありませんか」といった声かけを継続し、Aさんの気持ちや状況の変化を見守っていきます。

 

その場しのぎの対応か、誠実に向き合っているかは、相手に伝わるものです。

 

 

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