2025.05.26
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2025年度運営指導制度の動向と事前対策のポイント

~小濱道博のこれからの時代を乗り切る介護事業戦略 vol.6~

令和6年介護保険制度改正に向けて 介護サービスの歴史20年を徹底検証(その1)

     

編集部より

2024年に行われた介護報酬改定や、経営情報の提供の義務化など、介護業界は大きな変化の波の中にあります。そのような時代において、日経ヘルスケアや介護ニュースJOINT、介護実務書籍執筆者としても著名な小濱介護経営事務所代表、小濱道博さんが「これからの時代を乗り切る介護事業戦略」を、解説していきます。

 

第6回は、「2025年度運営指導制度の動向と事前対策のポイント」です。

2024年度の介護報酬改定は、報酬構造の見直しに加えて、事業所運営の「質」と「透明性」を問う制度改正が多く盛り込まれました。
これは過去最大規模とされる内容であり、医療・介護の同時改定による社会保障制度の転換点と位置付けられています。
今回は、厚労省全国担当課長会議資料や各種通知、現場実務向けマニュアル類を基に、運営指導と制度対応の全体像を構造的に整理していきます。

介護事業を経営している方に必ずお役立ていただける内容となっております。ぜひお読みください。

    

執筆/小濱道博(小濱介護経営研究所 代表)

編集/メディカルサポネット編集部

              

  

                       

1. 2024年度の介護報酬改定の影響

2024年度の介護報酬改定は、過去最大規模とされる内容であり、医療・介護の同時改定による社会保障制度の転換点と位置付けられている。

本改定では報酬構造の見直しに加えて、事業所運営の「質」と「透明性」を問う制度改正が多く盛り込まれた。

 

これに呼応するように、運営指導制度も大きく変容し、「効率化・標準化」「短時間化」「記録重視」へと再構築が進められている。

今回は、最新の厚労省全国担当課長会議資料(令和7年3月)や各種通知、現場実務向けマニュアル類を基に、運営指導と制度対応の全体像を構造的に整理する。

 

  

2. 運営指導と制度対応の7項目

(1)運営指導の標準化と監査体制の再編

厚生労働省は、2019年の通知「介護保険施設等に対する実地指導の標準化・効率化等の運用指針について」に基づき、運営指導の短時間・巡回型(半日型)への転換を進めた

令和5年度の実績では、全国で49,281件(実施率16.1%)の実地指導が行われ、これは過去最高水準の水準に迫る規模である。

集団指導の実施自治体も全国で886に及ぶが、実施率は5割強に留まっており、自治体間格差が指摘されている。

 

さらに、2024年4月より「監査マニュアル(老発0405第3号)」が全国適用となり、指導と監査の役割分担が制度的に明確化された。

指導は助言と是正を目的とし、監査は処分・返還を前提とする調査行為である。

2023年度には監査1,120件が行われ、取消60件、全部・一部停止79件、返還金額約3.5億円に達した。

特に、不正請求、人員基準違反、虚偽報告、人格尊重義務違反が主要な処分要因とされている。

 

(2)人員基準と配置体制の厳格化

人員配置に関する確認は、引き続き運営指導の最重点項目である。

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