2022.09.15
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「なくす」「減らす」「まとめる」業務改善
~医療と経営の質向上を目指して~

攻めの中小病院経営 ~事務部門が動かすヒト・モノ・情報~vol.6

  

 

編集部より

新型コロナウイルス感染症の影響を受け、経営・人材確保・収益化など、病院はさまざまな課題に直面していることがこれまで以上に浮き彫りとなりました。それらの課題解決のための取り組みが、必ずしも改善に結びつくとは限らず苦戦する病院もあるようです。本コラムでは、熊本県甲佐町にある谷田(やつだ)病院で事務部長を務める藤井将さんに、病院において大きな役割を担う事務部門のリアルな実践方法について解説いただきます。第6回のテーマは「業務改善」です。働き方改革は業務効率化なしには実現しません。そのカギは改善の4原則である「ECRS」を活用することにあると藤井さんは勧めています。記事内でご紹介いただいた谷田病院で実現した5つの業務改善事例を参考にして、自院の改善のヒントをみつけてみませんか?

 

 

「ゲリラ改善」で院内業務を削減

業務の効率化やコスト削減を実現するためには「業務改善」が欠かせません。しかし、長引くコロナ禍で医療需要が増え、日々の業務に追われる中、何から手をつけていいか分からないという医療機関も多いのではないでしょうか。

 

そのような時に役立つのが、「ECRS」と呼ばれる改善の4原則です。ECRSとは、Eliminate(排除:取り除く)・Combine(結合:つなげる)・Rearrange(交換:組み替える)・Simplify(簡素化:単純にする)の頭文字を並べたもので、それぞれ以下のような考え方で業務改善のための課題を抽出します。

 

◯排除(Eliminate)  :業務をなくすことができないか?

 

◯結合(Combine)   :業務を1つにまとめられないか?

 

◯交換(Rearrange) :業務の順序や場所などを入れ替えることで、効率が向上しないか?

 

◯簡素化(Simplify) :業務をより単純にできないか?

 

ECRSによって得られる改善の効果は、排除(Eliminate)が最も大きいです。しかし、一般的に改善というと残りのCRSを始めてしまいがちです。その前に、そもそも業務をなくせないのか?を考えるといいでしょう。

 

業務削減やコストカットは組織として調整しようとすると、反対意見が出て、時間がかかりがちです。そこで、筆者が取り組んでいるのが「ゲリラ改善」です。例えば、検査機器やプリンタが院内のいたるところにあり、その必要性に疑問を感じたことはないでしょうか。そんな時は、まず電源を抜き、「使用時は連絡ください」と貼り紙をしてみます。その後、特に連絡がなく、問題もないようであれば、不要なものと判断してこっそり撤去します。

 

このように、気づいたことをこっそり改善することを「ゲリラ改善」と呼んでいます。医療機関はとかく院内ルールが多く、業務が煩雑になりがちだからこそ、常に常識を疑うことが大切です。法律の規制があったり、診療報酬に関わる業務は見直せなくても、やめても支障のない業務はやめる、プロセスを減らせるものは減らすということを常に考えています。

 

 

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事務部で実践した5つの改善事例

事務部門が担う間接業務においては、まだまだ減らせる業務、なくせる仕事がありそうです。特に役職者は、自身のエゴで不要な仕事を作らないように心がけるべきだと思います。ここで、当院が近年取り組んできた業務改善事例をご紹介します。

 

1) 新聞・雑誌の定期購読

コロナ禍をきっかけに、院内に置いていた新聞・雑誌の定期購読を減らしました。今のところ、患者さん・職員双方から大きな不満の声はなく、業務削減とコストカットを両立できました。こうしたサブスクリプションサービスの見直しは、ゲリラ改善に最も適していると言えます。

 

2) お中元・お歳暮・年賀状

お中元・お歳暮や年賀状のやりとりには、少なからず費用労力がかかります。連携先や取引先が多ければ多いほど、かかる費用だけでなく、送付先情報の管理や送り状の作成などの工数も多くなります。当院では少しずつ数を減らしていき、今では廃止しました。

 

3) 資料作成・分析

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