2022.08.17
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ITを活用した谷田病院の業務改善
~地に足をつけた医療DX~

攻めの中小病院経営 ~事務部門が動かすヒト・モノ・情報~vol.5

攻めの中小病院経営 ~事務部門が動かすヒト・モノ・情報~

 

 

編集部より

新型コロナウイルス感染症の影響を受け、経営・人材確保・収益化など、病院はさまざまな課題に直面していることがこれまで以上に浮き彫りとなりました。それらの課題解決のための取り組みが、必ずしも改善に結びつくとは限らず苦戦する病院もあるようです。本コラムでは、熊本県甲佐町にある谷田(やつだ)病院(99床)で事務部長を務める藤井将志さんに、病院において大きな役割を担う事務部門のリアルな実践方法について解説いただきます。第5回は病院のIT化について考えます。病院職員の働き方改革はIT化の推進なしには実現しません。藤井さんはどのような方法でIT化に取り組まれたのでしょうか?

 

 

IT化の突破口は、事務部門

谷田病院では、約5年前からペーパーレス化を推進しています。最初に取り組んだのは、給与明細の電子化です。紙媒体を使わず、PDFなどのデジタルファイルで共有することにより、紙代、プリンター代などのコストが削減できるのはもちろん、印刷や封入封緘、仕分け、配布などが不要になり、担当者の業務負担も大幅に軽減されました。

 

次に導入したのが、生体認証の勤怠管理システムとワークフローの統一化です。以前は勤務変更等の申請を紙ベースで行っていたので、事務部長である筆者には決裁を求める書類の束が毎日届いていました。ワークフローシステムは職員がオンライン上で申請し、所属長が承認することで情報が反映されるため、導入後は膨大な紙書類の処理から解放され、脱ハンコも実現できています。

 

オンラインシステムの導入時にありがちなのが、紙との併用です。中途半端に紙を残すと処理が煩雑になり、逆に生産性が下がってしまいます。そこで、オンライン申請を浸透させるため、私がとった対策は紙の書類を見る頻度を減らすことでした。オンラインの方が早く決裁されるので、職員も自然と紙を使わなくなりました。最近は取引先にもFAXや電話ではなくメールで情報をいただけるようお願いしたり、個人のスケジュールをWEBで公開し、空き時間にアポイントを入れてもらえるよう試みています。



図1:谷田病院のホームページで公開されている事務部長の情報(青枠部分)

谷田病院のホームページで公開されている事務部長の情報

 

 

「小さく始め、地道に広げる」が成功の鍵

多部署で多職種が並行して業務を行う医療機関では、IT化やDXによる業務改善に賛否両論が起こりやすく、推進者への風当たりが強くなることもあります。しかし、組織レベルの改善を目指すなら、各部門に新しいシステムを受け入れてもらわなければなりません。そこで病院がIT化に取り組む際は、トップダウンで単一部署の業務から始めて、徐々に全部門へ広げていくのが望ましいと考えます。

 

当院でワークフローシステムを導入した時も、全体で一気に始めるのではなく、事務部から看護部まで半年ほど時間をかけて広げていきました。さらに、みんなが勤怠申請に慣れてきたタイミングを見計らって、稟議書決裁や研修申請、委員会議事録の回覧・管理なども徐々にオンラインへ切り替えています。

 

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