2021.12.27
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処方提案と多職種連携でポリファーマシーを改善
~在宅医療における薬剤師の役割~

介護事業者インタビューvol.6 パル薬局

 

編集部より

高齢者施設では、入居者の個別ケアや生活リハビリなどの充実に加え、医師・薬剤師と連携を図りながらポリファーマシー改善(薬の適正化)に向けた対策に関心が高まっています。円滑な多職種連携が不可欠な高齢者施設では、医療・介護において共通の薬物治療の中心となるべき薬剤師は、両者を密につなぐこともできるため、医療の質の向上につながると活躍が期待されています。高齢者の在宅医療と薬剤師の連携について、パル薬局菅生店で在宅部長を務める三谷徳昭(みつや・のりあき)さんにお話を伺いました。

 

取材・文/松崎 純子

写真/山本 未紗子(株式会社BrightEN photo)

編集/メディカルサポネット編集部

 

 

 

  

薬剤師が進めるポリファーマシー対策

 

――高齢者の増加を背景に、ポリファーマシーが注目されています

 

5年ほど前から、薬剤師から処方提案を少しずつ進めようという盛り上がりを感じています。

 

①2018年の診療報酬改定で加わった、服用薬剤調整支援料の算定
②2020年9月に施行された改正薬機法で義務化された、薬剤師による服薬期間中のフォローアップ
③2021年には地域連携薬局の認定制度がスタート

 

 

これら3つの制度化によって、ポリファーマシー対策における薬剤師の果たす役割はさらに注目を集めるようになりました。

 

ポリファーマシーは、複数を意味する「poly」+調剤・薬局を意味する「pharmacy」からなる言葉で、多剤服用によって副作用などの有害事象を起こすことを意味します。厚生労働省の「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」では「多剤服用の中でも害をなすもの」をポリファーマシーと呼んでいます。「服用する薬の数が多い=悪」ということではないので、治療や健康管理に必要な場合は、ポリファーマシーではありません。

 

例えば、高齢になると、薬の量が増え、必要より多い服用や、今は不必要な薬がずっと処方されている状態、副作用が引き起こされる状態など、服用している本人にとって悪影響がある処方のことを指します。

 

また、高齢者は肝臓や腎臓の機能が低下し、薬の排泄が遅くなり薬が効きすぎるなどの副作用が出やすくなります。そうなると、ご本人が大変なのはもちろん、副作用出現に備えてご家族や介護スタッフの注意や見守りが必要となります。ポリファーマシー改善目的は、薬を減らすことではなく、患者さんやご家族、介護スタッフの負担を減らすことにあります。このことをしっかり理解し、1人1人の生活を把握した上で、薬の適正化をすることが重要です。

 

 

 

 

 

高齢者の薬剤管理のキーマン“処方提案”

 

――三谷さんが処方提案を積極的に行うようになったきっかけはどのようなことがあったのでしょうか?

 

私は10年ほど前から在宅医療に取り組んでいます。在宅医療に携わる医師に同行して施設や自宅へ訪問診療に行った際、医師が処方した薬に疑問を持ったことがきっかけでした。それまで、普段薬局で受け取る処方箋には何の疑問も抱かずに、処方箋通りの薬を出していましたが、同行をきっかけに在宅医療の脆弱性を感じました。

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