2019.01.21
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がんの肝転移に対するラジオ波焼灼術(RFA)の適応と動脈化学療法との併用の可否は?

メディカルサポネット 編集部からのコメント

肝臓がんを死滅させるために行なわれるラジオ波焼灼術。2004年から保険適用に認められています。手術電気メスなどと同じく約450キロヘルツの高周波で、腫瘍の中に直径1.5ミリの電極針を挿入し、熱によって病変を固めます。高年齢や癌の数などから手術が難しい患者にも採用できる技術ですが、化学療法との併用が望ましいケースもあります。効果や安全性を患者一人ひとりについて考慮して最終決定してください。

 

最近,肝細胞癌のみならず,様々ながんの肝転移に対してラジオ波焼灼術(RFA)が行われはじめています。良好な局所効果を得ることができ,様々な肝転移の治療の選択肢として期待できると思います。治療に用いるラジオ波とマイクロ波の違い,どのような病態であれば積極的に適応できるのか,全身化学療法との併用が望ましいのか,動注化学療法との併用は可能なのかを,この治療の第一人者である順天堂大学・椎名秀一朗先生にお聞きしたいと思います。

【質問者】

堀 信一 IGTクリニック院長

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【回答】

【腫瘍減量的な可能性がある場合には化学療法を併用すべきである】

 

がんの肝転移に対するラジオ波焼灼術(radiofrequency ablation:RFA)と化学療法との併用については,根治的にablationができるならば併用不要です。標的病変全体を100%焼灼でき,他の部分にも病変がないならば化学療法は不要です。100℃に熱して生き残るがん組織はありません。

 

ただし,ablationが腫瘍減量の場合,あるいは腫瘍減量的な可能性がある場合,すなわち異所であっても局所であっても再発する確率が高いと考えられる場合には化学療法を併用すべきと考えます。たとえば,標的病変が大きくなればablationを実施しても病変の一部が遺残する可能性があります。したがって,3cmを超える病変で,有効な化学療法があるならば,まず化学療法を実施して病変を縮小してからablationを行ったほうがよいと考えます。完全焼灼できる確率が高まり,大きな体積をablationすることに伴う発熱や疼痛などの反応も少なくなります。また,多発肝転移症例では画像診断で検出できない微小病変に対する効果を期待してablation後に化学療法を実施したほうがよいと考えます。一般に大腸癌肝転移症例では,根治的切除を行っても5年無再発生存率は20~30%とされています。すなわち,ほとんどの症例では微小転移が存在します。病変が4個以上ある症例では術後化学療法は必須でしょう。

 

動脈化学療法と全身化学療法のどちらを併用すべきかですが,動脈化学療法はどこの施設でも実施できるわけではなく,全身化学療法よりは手技が侵襲的です。しかし,高濃度の抗癌剤を肝内に直接投与することが可能であり,全身の抗癌剤濃度は抑えられるため副作用を軽減できます。したがって,肝臓に病変が限局した症例や,肝内の病変が肝外の病変と比べて圧倒的に腫瘍量が多い症例(80%以上)では動脈化学療法を選択すべきと考えます。肝内の病変が肝外の病変と比べて80%未満の症例では,肝内病変,肝外病変両方への効果を期待して全身化学療法を選択すべきでしょう。なお,肝内の病変が肝外の病変と比べて腫瘍量が変わらない症例や少ない症例では,肝内の病変をablationしてもsurvival benefitはなく,ablationの適応がないと考えられます。

 

RFAは470kHzの高周波(ラジオ波)を流して抵抗加熱によりがんを壊死させるものであり,現在最も広く行われているablation治療です。マイクロ波焼灼術では2450MHzの高周波(マイクロ波)を放射して誘電加熱によりがんを壊死させます。新世代マイクロ波焼灼術はラジオ波治療よりも短時間で大きな体積を球形に近い形で焼灼できます。しかし,マイクロ波焼灼術ではアンテナ先端の切れ味が悪く,超音波による視認性がよくないため,病変の存在部位により治療が困難な場合があります。

  

【回答者】

椎名秀一朗 順天堂大学大学院医学研究科 画像診断・治療学講座教授

 

執筆:

堀 信一 (IGTクリニック院長)

椎名秀一朗 (順天堂大学大学院医学研究科画像診断・治療学講座教授)

       

 出典:Web医事新報

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