2019.01.18
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(たぶん)夢がかなった話[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(234)]

メディカルサポネット 編集部からのコメント

ぼんやりと考えていたことが、いつしか現実味を帯びて形になることがあります。仕事や現実に追われて考えていることとは別に、つらつらと考える時間というのは何よりも貴重なことこかもしれません。移動時間や寝る前のちょっとした時間に、自由に思いをはせることはリフレッシュにも有効です。

 

あけましておめでとうございます。本年も何卒よろしくお願い申しあげます。

昨年の暮れ、5冊目の単行本『(あまり)病気をしない暮らし』(晶文社)を上梓いたしました。ネット連載していたエッセイをまとめたもので、がん、ダイエットなど身近な健康テーマについて笑って読みながらタメになる(はず)という本であります。

『こわいもの知らずの病理学講義』が7万4千部も売れたので、調子をこいて二匹目のドジョウを狙ってるんやな、と思われるかもしれませんが、そのとおりです。

25年ほど前、本庶研究室にいたころ、ふと、50代の半ばに物書きになれてたらええかもなぁという気がしたことがある。どうしてそんなことを思ったのかわからない。

本を読むのは好きだったけれど、専門の総説以外、日本語でなにかを発表したことなどなかった。当然、本を出版するあてなどあるはずもない。だから、夢というよりも妄想といった方がいいようなものだった。

畏友・久坂部羊がデビュー作『廃用身』を出した時、頼まれてもいないのに、書評をメールで送った。返事に、そのうち仲野には執筆依頼がたくさん来るようになるかもしれない、とか書かれていた。

その書評、いま読んでもけっこううまく書けていたとは思う。しかし、リップサービスが過ぎるわ。無名の大学教授がそんな状態になるはずないやろうと笑っていた。15年ほど前のことである。

久坂部羊はもしかすると予言者だったのかもしれない。ありがたいことに、じつにさまざまなテーマでの執筆依頼をいただくようになった。とはいえ、本務があるのでそれほど執筆時間をとれるわけではない。

いつになったら書けるかわからないから、できるだけお断りしようと思っている。しかし、敵もさるもの。そのお題やったら書きたい!と、心底思ってしまうような提案が次々と繰り出されてくるのが困りものだ。

そのうち書きます、と返事をしている本だけで10を超えた。気分だけは完全に文筆家である。しかし、そんなにたくさんの本、いつになったら書ききれるんやろう。

と言いながらも、今年中に3冊の出版がほぼ確定している。いやはや、夢(のようなもの)が叶いすぎてしまったというところですかね。なんやようわかりませんが、お正月やし、まけといたってください。

なかののつぶやき
どちらも売れっ子ブックデザイナーの寄藤文平さんがデザインしてくださいました」

 

執筆:仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

出典:Web医事新報

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