2018.10.24
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腎血管筋脂肪腫に対するinterventional radiologyの役割

メディカルサポネット 編集部からのコメント

腎血管筋脂肪腫は、散発性か合併しているかの分類を行ってから、出血した腫瘍の治療(TAE)と、出血や腫瘍増大を予防する治療に分けられます。TAEの適応はダイナミックCTによる腫瘍の血流評価で判断されます。

 

日常臨床で,腎血管筋脂肪腫(angiomyolipoma:AML)はしばしば遭遇する疾患であり,結節性硬化症(tuberous sclerosis complex:TSC)に伴う腎血管筋脂肪腫(TSC-AML)は,散発性のAMLに比べて,若年で診断され,多発,増大傾向が強いと思われます。経過観察,治療介入の時期,動脈塞栓術とエベロリムスとの使いわけなどについて,AMLに精通している順天堂大学・桑鶴良平先生にご回答をお願いします。

【質問者】

近藤浩史 帝京大学医学部放射線科学講座教授

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【回答】

【仮性動脈瘤径を測るため,ダイナミックCTによる腫瘍の血流評価が重要となる】

 

AMLは,全腎腫瘍の0.3~3%にみられます。男女比は1:4で女性に多くみられます。多くのAML(91%)の成長はゆっくりですが(0.02cm/年),急速に増大するAML(0.25cm/年)も存在します(9%)。

 

散発性にみられるAML(80%)と結節性硬化症(TSC)に合併して生じるAML(20%)があり,TSCの50~80%の症例でAMLを合併し,さらに多発する傾向があり,15%の症例では最終的に透析が必要になります。TSC-AMLはより迅速に成長し,合併症を生じやすいと言われています。また,AMLはリンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis:LAM)の50%に合併し,TSCと合併するTSC-LAMでは100%,散在性に発育するsporadic LAMでは50%にAMLがみられます。

 

当科における診療は上記を念頭に,まずAMLがsporadic(散発性)なものか,LAMに合併しているか,TSC-LAMに合併しているか,TSCのみに合併しているかに分類しています。sporadic AMLはAMLのみに集中して治療,経過観察し,LAMに合併している場合は肺とAMLの治療を行います。TSCを合併している場合は,てんかん症状,精神発達遅退の治療とともにAMLの治療を行います。

 

AMLの治療は,出血した腫瘍の治療と,出血や腫瘍増大を予防する治療にわけられ,出血の治療は動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization:TAE)で止血するのが一般的です。予防的な治療はsporadic AMLではTAEを行い,TSC-AMLではTAEと哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mammalian target of rapamycin:mTOR)阻害薬(エベロリムス)投与に大別されます。TAEの適応は腫瘍径の大きさでわけられますが,そのカットオフ値は3~8cm以上と報告により様々なため,当科では腫瘍径ではなく,腫瘍内に発生する仮性動脈瘤径が5mm以上になった時点でTAEの適応としています。したがって,ダイナミックCTによる腫瘍の血流評価が大切で,特に5mm以上の腫瘍内動脈瘤が描出された場合は,あまり間を置かずにTAEを行うようにしています。数カ月の待機期間中に腫瘍破裂をきたすことがあり,長期の待機期間は避けたほうが好ましいと考えます。

 

TSC-AML患者に対するエベロリムスの適応は2つあり,第一に腫瘍がびまん性に存在し,正常腎実質の塞栓を回避してAMLのみを塞栓することが困難な症例で,第二に精神発達の状態がTAEに耐えられないと判断した場合です。

 

【回答者】

桑鶴良平 順天堂大学医学部放射線診断学講座教授

 

執筆:

近藤浩史 帝京大学医学部放射線科学講座教授

桑鶴良平 順天堂大学医学部放射線診断学講座教授

 

 出典:Web医事新報

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