2019.11.20
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迷うことは「幸せの可能性」を広げていくこと

引き寄せる脳 遠ざける脳【脳科学者・中野信子】第1回

自分なりに満足できる「幸せ」な人生を送ること――。それは、誰もが願っていることでしょう。しかし、そもそも幸せとはなんでしょうか? 
幸せの基準はまさに十人十色で、そこに「答え」は存在しません。だからこそ、人は他人と自分を比べ、葛藤するのです。
脳科学者の中野信子さんは、自分の選択で生き、選択したことを肯定し、悩むことこそが幸せや人生の可能性を広げていることだと語ります。
最新刊『引き寄せる脳 遠ざける脳—「幸せホルモン」を味方につける3つの法則』からの一節を抜粋し、全3回でお届けします。
 
構成/岩川悟(slipstream) 写真/佐藤克秋

引き寄せる脳 遠ざける脳【脳科学者・中野信子】 迷うことは「幸せの可能性」を広げていくこと(第1回)

 

幸せの大きさを比べることに意味はない

人の「幸せ」についての考え方は主観的なものであり、ひとつのものさしで測ることはできません。見る人から見れば、たとえバカ騒ぎとしか思えない振る舞いでも、当の本人たちは仲間とわいわい騒ぐことで「みんなから愛されて幸せだ」と感じ、それによって「幸せホルモン」とも呼ばれる神経伝達物質・オキシトシンがたくさん出る人もいるわけです。

 

一方で、ひとりきりの空間で心地良い服を着て、自分の好きな音楽を聴きながらリラックスすることで、オキシトシンが分泌される人もいるでしょう。

  

引き寄せる脳 遠ざける脳【脳科学者・中野信子】 迷うことは「幸せの可能性」を広げていくこと(第1回)画像1

 

どちらにせよ、主観というものは人それぞれ好みがちがうし、オキシトシンが出やすい環境もちがうということ。「あの人はいつも“ぼっち”でかわいそう」などと、一概にいえないわけです。幼少期に培われた人間関係のなかで、愛着の対象や自分自身のことをどう思っていたかによって、幸せの価値観もそれぞれちがってくるのです。

 

他者と幸せの大きさを競うことに、重要な意味はほとんどありません。たとえば、世の中には多動的な人がいて、彼らは多くの人と広く浅く交流し、たくさんの情報を交わし合うことによろこびを感じ、そんな自分を肯定して生きています。とくに、いまの時代はSNSなどで情報過多になっているため、そうした交流をうまくやっている人が目立ったり、「幸せ」に見えたりもします。

 

でも、そうでない人たちが不幸せかというと、まったくそうとはいえません。むしろ、わたしは「幸せの基準はたくさんある」ことを、救いに思ったほうがいいと考えています。

 

「わたしはあの人よりも幸せじゃないかも」

「自分もあの人のように前向きに生きなければダメなんじゃないか」

 

もし、いまそんな思いや迷いを感じている人がいたら、わたしは脳科学者として、ひとりの人間として、このようにいいたいです。

 

「あなたの選んだ選択肢で生きることに、なにも間違いはないんだよ」と。

 

選んだ答えを正解にしていくのが人生

引き寄せる脳 遠ざける脳【脳科学者・中野信子】 迷うことは「幸せの可能性」を広げていくこと(第1回)画像2

 

人はなぜ、自分と他人を比べて思い悩むのでしょうか? それは、おそらくわたしたち日本人が、子どものころから「正解を選ぶ人生」というものに、あまりに慣らされてしまっているからだとわたしは見ています。

 

人間は成人するまでに、約14万8000回もの否定的な言葉を聞かされるとする説もありますが、これと同じように、わたしたちはあまりにも、「次のなかから正解を選びなさい」といわれ過ぎているのではないかと感じています。

 

しかし、大人になれば「選んだ答えを正解にする力」こそが試されることになる。

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