2018.06.12
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結果報告~介護労働者の就業実態と就業意識調査~

【平成28年度/介護労働実態調査】

公益財団法人 介護労働安定センターは2016年(平成28年)10月1~31日にかけて、全国の介護保険サービス事業を実施する18,000事業所(無作為抽出)にアンケートを依頼、17,641件を回収しました。その中から、一事業所あたり介護にかかわる労働者3名を上限に、無作為に選出した54,000人に対しアンケート調査を実施しています。有効対象労働者数52,923人で、有効回答があったのは21,661人でした。メディカルサポネット編集部では、アンケート結果を元にまとめてみました。

▼目次

 

I.仕事についての考え方

1.現在の仕事を選んだ理由(複数回答)

「働きがいのある仕事だと思ったから」が52.4%(前年度52.2%)で最多で、「資格・技能が活かせるから」が続きます。正規職員は「今後もニーズが高まる仕事だから」を選択する方が多いのに対し、非正規職員は「自分や家族の都合のよい時間(日)に働けるから」を選ぶ方が多く、雇用形態によって仕事を選ぶ基準が異なることが見えてくる結果になりました。

 

 

前年度と比較して、「資格・技能が活かせるから」「自分や家族の都合の良い時間(日)に働けるから」に1ポイント以上の差が見られます。

「資格・技能が活かせるから」については、正規職員も非正規職員も大きな差はなく、「自分や家族の都合の良い時間(日)に働けるから」については、非正規職員の方が25ポイント以上高くなりました。柔軟な働き方ができる職場が増え、非正規職員の活躍の場が増えていることが考えられます。

 

 

2.現在の仕事の満足度(満足+やや満足)

「仕事の内容・やりがい」を選ぶ方が52.1%(前年度52.9%)と過半数を占め、「職場の人間関係、コミュニケーション」を選ぶ方が46.7%と続きます。なお、正規職員は「福利厚生」や「キャリアアップの機会」を選ばれる方が多いのに対し、非正規職員は「労働時間・休日等の労働条件」を選ばれる方が多いなど、仕事の満足度についても、雇用形態によって異なる傾向が見られました。

仕事の満足度は雇用形態によっても異なり、いうならば個々によっても異なります。また、求めるものも個々の背景によって変動していきます。全てを網羅することは難しいことですが、一人ひとりの求めることを把握していくことが満足度UPへの第一歩です。

 

3.仕事(職種)に関する希望

今後も「今の仕事を続けたい」方は53.7%(前年度65.5%) と過半数を超えていますが、今の仕事以外で他の仕事(職種)にキャリアチェンジを考えている方が、平成27年度の7.4%から、平成28年度は約9倍へ急増しています。

 


 

4.勤務先に関する希望

勤務先に関する希望は、年度による違いはほとんど見られず、「今の勤務先で働き続けたい」が56.5%(前年度57.5%)でした。

 

 

雇用形態での内訳を見てみると、「今の勤務先で働き続けたい」のは、正規職員が54.9%、非正規職員が60.4%と、やや開きが見られました。

 

 

II.働く上での悩み、不安、不満等について

労働条件などの悩み、不安、不満を複数選択で回答してもらう調査では、一番多かった回答が「人手が足りない」53.2%(前年度50.9%)でした。中でも施設系(入所型)は70.3%の施設が人手不足を訴えています。

 

 

施設系(入所型)は、他と比べて「労働条件・仕事の負担について特に悩み、不安・不満等は感じていない」「雇用が不安定である」「その他」「正規職員になれない」以外は最も高い結果でした。中でも「夜間や深夜時間帯に何か起きるのではないかと不安がある」「身体的負担が大きい(腰痛や体力に不安がある)」「人手が足りない」は他と比べて15ポイント以上の差がありました。身体的負担と夜間・深夜帯の精神的負担から不安をいだく方が多いことがわかります。

 

 

III.労働者自身の状況について

1.現在の法人に就職した理由(複数回答)

「通勤が便利だから」「資格・技能が活かせるから」が38.0%で最多です。中でも、非正規職員の44.2%が「通勤が便利だから」を選んでいます。また、「労働日、労働時間が希望とあっているから」を選ばれる非正規職員は、正規職員の倍以上と、大きな差が見られました。非正規職員は就業場所・時間日数など、労働条件を重視していることがわかります。

 

 

2.前職の有無、前職の勤務先の業種と仕事内容

前職の勤務先の業種では「介護関係の業種」27.9%で、前職の仕事内容では「介護関係の仕事」28.3%でした。正規職員に関してはそれぞれ30.0%、30.2%と多いのに対し、非正規職員はそれぞれ23.7%、24.4%とポイントの差があります。正規職員、非正規職員ともに、前職は「介護・福祉・医療関係の仕事」以外で働いていた方が多いことがわかります。

 

 

3.(1)介護関係の仕事を辞めた理由(複数回答)

介護関係の仕事を辞めた理由は「職場の人間関係に問題があったため」が23.9%です。「結婚・出産・妊娠・育児のため」は全体では20.5%ですが、正規職員の場合は16.2%なのに対し、非正規職員は33.2%と2倍近くに差が広がります。

 

 

非正規職員は「結婚」「介護」「看護」などの家庭事情から退職をされる方が正規職員に比べて多い傾向にあります。一方、正規職員は「就業先の理念や運営のあり方に不満があった」や「自分の将来の見込みが立たなかった」などを理由とされる方が多く、介護関係の仕事から離れる傾向があります。

 

 

3.(2)前職の仕事を辞めた理由(複数回答)

「結婚・出産・妊娠・育児のため」、前職を辞めた方が26.4%ですが、内訳を見ると、正規職員は21.3%、非正規職員は37.8%と開きがあります。正規職員と非正規職員とで大きくことなるのが「自分の将来の見込みが立たなかったため」「他に良い仕事・職場があったため」「収入が少なかったため」「法人や施設・事業所の理念や運営の在り方に不満があったため」についても、内訳の差が大きい傾向がありました。

介護関係では「職場の人間関係に問題があった」が最も高かったのですが、前職を辞めた理由では3番目となります。介護関係での理由では5位だった「自分の将来の見込みが立たなかった」が前職を辞めた理由では2番目に多いことがわかります。

 

 

IV.回答労働者の基本属性

男性:女性が1:4と女性中心のデータですが、PT・OT・ST等については、男性が55.3%でした。一方、看護職員に関しては91.2%が女性と、まだまだ女性が多い傾向が見られます。

 

 

出典:公益財団法人介護労働安定センター

メディカルサポネット編集部

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