2026.01.29
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vol.2 保育士の定着率アップに効果的な取り組みとは?

5分で読めるポイント解説 保育士白書2025

『保育士白書2025年度版』

 

編集部より

保育の現場では、子どもたちの成長を支える保育士の存在が欠かせません。

しかし今、多くの園で保育士不足が続いているのが実情です。

 

2013年度に「待機児童解消加速化プラン」が打ち出されて以降、国や自治体は人材確保に向けた施策を重ねてきました。

待機児童数は2018年を境に減少傾向にある一方で、現場では今なお人手不足を訴える声が少なくありません。

  

今回ご紹介するのは、『保育士白書2025年度版』から見えてきた、人が定着する職場に共通するポイントです。

「どうすれば、働き続けたいと思える職場をつくれるのか?」

その問いに対するヒントを、現場で働く保育士のリアルな声とともに紐解いていきます。

 

編集・構成/メディカルサポネット編集部

 

1. 労働環境改善・定着のための取り組みの現状

1. 労働環境改善・定着のための取り組みの現状 

保育士の労働環境改善・定着のために何らかの取り組み(人員の確保・勤務シフト・業務効率化・待遇改善など)を実施しているか尋ねたところ、以下のような回答となりました。

  • 「実施している」81.2%
    「取り組む必要があるが、余裕がなく実施できていない」12.9%
    ■「実施を予定・計画している」5.0%
    ■「取り組む必要があるが、大きな問題となっていないので実施していない」1.0%
 

本調査結果から、保育士の労働環境改善や定着対策は、多くの事業者で実行段階に進んでいることが明らかになりました。

実際、8割以上が何らかの取り組みを実施しており、課題に対する認識は広く共有されています。

 

一方で、必要性を感じながらも、実施や計画に至っていない事業者が一定数存在していました。

人員や時間、財政面の制約が、対応を難しくしている状況がうかがえます。

今後は、事業者の負担を抑えつつ、取り組みを後押しする支援の在り方が求められると考えられます。

 

では、すでに取り組みを始めている事業者は、どのような工夫で職員の定着率を高めているのでしょうか。

次に、その具体的な取り組み内容を見ていきましょう。

 

 

 

2. 労働環境改善・定着のための具体的な取り組み

2. 労働環境改善・定着のための具体的な取り組み  

 

保育士の労働環境改善・定着のために何らかの取り組みを「実施している」「実施を予定・計画している」と回答した87 事業者に、どのような取り組みを実施/計画しているか尋ねたところ、以下が挙げられています。

 

「時間外労働の削減」78.2%
「休暇の取得促進」73.6%
■「教育・研修・スキルアップ支援」73.6%
■「シフトの組み方など、勤務形態の工夫」72.4%
■「賃金引き上げなどの待遇改善」71.3%
■「十分な職員数の確保」69.0%
■「業務プロセスの改善/ICT化、システム導入による効率化」65.5%
■「育児・介護支援」62.1%
「ハラスメント防止対策」47.1%
「LGBTに関する配慮」6.9%

 

調査結果からは、労働時間の削減や休暇取得の促進、研修支援など、働き方そのものを見直す取り組み幅広く進められていることがわかりました。待遇改善や人員確保、業務効率化への関心も高く、現場負担の軽減を重視する姿勢がうかがえます。

 

一方で、保育士が強いストレスを感じやすいとされる人間関係に関わる施策、とりわけハラスメント防止や多様性への配慮は、他の項目に比べて実施率が低い結果となりました。

今後は、制度面だけでなく職場の人間関係や風土改善にも目を向けた取り組みが求められると考えられます。

 

では、実際にはどのような取り組みが、効果が高いのでしょうか。

  

 

3. 効果が高いと感じている取り組み


3. 効果が高いと感じている取り組み

 

保育士の労働環境改善・定着のために何らかの取り組みを「実施している」と回答した82 事業者に、実施しているもののうち、どの取り組みの効果が高いと思うか尋ねたところ、上位に以下が挙げられています。

 

■「賃金引き上げなどの待遇改善」54.9%

■「十分な職員数の確保」53.7%

「勤務中の休憩やシフトの組み方など、勤務形態の工夫」47.6%

■「時間外労働の削減」47.6%

■「休暇の取得促進」41.5%

 

調査結果から、事業者が効果を実感しやすい施策として、賃金引き上げなどの待遇改善や職員数の確保が上位に挙げられました。

加えて、勤務形態の工夫や時間外労働の削減、休暇取得の促進といった、日常の働き方に直結する取り組みも高く評価されています。

 

これらは、保育士自身が「良い職場」と感じる工夫や制度とも共通しています。

一方で、保育士からは、長く働き続けるためには待遇面の充実に加え、良好な人間関係が重要であるとの声も多く聞かれました。

今後は、コミュニケーションの活性化ハラスメント防止多様性への配慮といった職場環境づくりにも、より踏み込んだ対応が求められると考えられます。

 

本調査の自由回答欄に寄せられた実例には次のようなものがありました。

 

【シフトの組み方の工夫・制度】シフト希望を出すことができる。全職員が平等なシフト体制になっている。(20 ~ 24歳)

【休日の取り方の工夫・制度】休みの希望を聞き出してシフトを組んだ後、職員の配置が十分確保できる場合に、他の職員の休暇希望を聞き出す。子どもが少ない時に有給休暇を取れる工夫をしている。(25 ~ 29歳)

【コミュニケーションの取り方の工夫・制度】上司部下関係なく話をしやすい雰囲気。上司が気軽に話しかけてくれたり、他愛のない話をしてくれたり、ちょっとしたことでも褒めてくれる。相談をしたら親身になって聞いてくれて、否定しない。(30 ~ 34歳)

【給与・待遇の工夫・制度】給与に関してはここ数年毎年昇給している。保育園の経営状況により、年度末にボーナスが出るなど、給与改善に努めてもらっている。(40 ~ 44歳)

【教育・研修の工夫・制度】園長の実践力が高かったため、模擬授業がためになった。また、行事などの方針と総括での話し合いで実践だけでなく、教育の土台となるやり取りができたことで、職員の力が付いていった。有識者がいることで、子どもへの理解や保護者への援助の考え方が身に付いた。(50 ~ 54歳)

【子育て支援の工夫・制度】子育て中(末っ子が小3まで)は時短勤務を選択できる。育休が数年間取れる。(65 ~ 69歳)

【保育業務の工夫・制度】書類や登降園時間管理のICT化。リトミックや体操など専門的活動の外部委託。ピアノを弾ける職員が弾く(苦手な職員は他のことでカバー)。(25 ~ 29歳)

【業務改善の工夫・制度】お便りではなく、業務支援クラウドサービスのドキュメンテーションという200文字で活動内容を記録するものを毎日使用している。200文字だと負担が少なく感じるため、取り組みやすい。(20 ~ 24歳)

 

 

 

4. まとめ

今回のデータから、保育士が安心して働き続けられる環境を整えるためには、待遇面の充実や無理のない勤務体制、十分な人員配置が欠かせないことが明らかになりました。

一人ひとりが負担を感じすぎることなく力を発揮できる職場づくりが、保育の質や組織全体の安定にもつながります。

今後も、保育士白書のデータをもとに、現場の課題や改善のヒントをお伝えしていきます。

   

 

 

↓全調査結果は、こちらよりダウンロードできます(会員登録無料)↓

保育士340人のリアル 労働・雇用実態調査 『保育士白書2025年度版』~保育士の「労働実態」「就労・転職志向」とは?~

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