2018.06.19
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結果報告~職場の労働環境~

【2017年 看護職員実態調査】

公益社団法人日本看護協会(会長:福井トシ子さん、会員数73万人)が、「2017年 看護職員実態調査」を実施しました。この調査は4年に1度行われるもので、今回は労働条件をはじめ、将来働いてみたい職場、夜勤を可能にする条件、暴力・ハラスメントを受けた経験などについても調査されています。今回の調査結果をもとに、メディカルサポネット編集部でまとめました。

「2017年 看護職員実態調査」

■調査概要

1)調査対象:日本看護協会会員 6,734人

       会員名簿より、使用免許(保健師・助産師・看護師・准看護師)ごとに1%層化無作為抽出

2)調査期間:2017年10月1日~11月9日

3)調査方法:自記式調査票の郵送配布・郵送回収

4)回収状況:有効回収数2,617(有効回収数率38.9%)

 

■回答者の基本属性

1)年齢・性別

  年齢:20代 485人(18.5%)

     30代 651人(24.9%)

     40代 766人(29.3%)

     50代 584人(22.3%)

     60代以上 126人(4.8%)など

  性別:女性 2,447人(93.5%)

     男性 163人(6.2%)など

 

2)現在の主な業務

  保健師 55人(2.1%)

  助産師 73人(2.8%)

  看護師 2,232人(85.3%)

  准看護師 106人(4.1%)

  看護教員 73人(2.8%)など

 

3)現在の勤務場所

  病院 2,200人(85.7%)

  訪問看護ステーション 83人(3.2%)

  看護系教育研究機関 70人(2.7%)

  診療所 65人(2.5%)など

 

▼目次

 

1)看護職の労働実態

(1)勤務形態

  • 現在の勤務形態は「正職員(フルタイム)」が最も多く82.9%で、次いで「臨時/嘱託職員・派遣/契約社員・パート・アルバイト」7.4%、「正職員(短時間勤務)」4.3%です。
  • 過去2回の調査結果と比較して、正職員(フルタイムまたは短時間勤務)は91.9%、87.7%、87.2%とやや減少傾向に、臨時・パート等職員は4.6%、6.9%、7.4%と増加傾向にあります。
  • 過去2回の調査結果と比較して、産休中・育児休業中は1.4%、2.7%、3.0%とやや増加傾向にあります。

 

(2)夜勤の状況

  • 現在の勤務状況が「自営業」「離職中」以外の人に夜勤状況を尋ねた調査では、「2交代制(16時間以上の夜勤)」が26.8%と最も多く、次いで「職場に夜勤はあるが現在はしていない(日勤のみ)」18.9%、「3交代制」17.1%と続きます。
  • 病院勤務の正職員(フルタイム・非管理職)の平均夜勤回数は、「3交代制・変則3交代制」では7.9回、「2交代制・変則2交代制」では4.7回で、前回(2013年)調査とほぼ同程度でした。

※日本看護師協会による2017年調査では「2交代制(16時間以上の夜勤)」「2交代制(16時間未満の夜勤)」の回数、2013年調査では「2交代制」「変則2交代制」の回数と調査項目が異なります。

 

 

(3)夜勤を可能にする条件

  • 「職場に夜勤はあるが現在はしていない(日勤のみ)」人に対し、どのような条件であれば夜勤が可能になるか尋ねた調査では、最も多かったのは「家族(配偶者)の理解・協力が得られる」40.1%で、職場では対応が難しいものでした。それ以降は、「夜勤回数が少ない」32.6%、「夜勤手当が高い」28.9%、「急な夜勤の休みも対応してもらえる」28.1%と続いており、職場で対応可能な回答も一定程度ありました。
  • 年齢別にみると、20代、30代では「家族(配偶者)の理解・協力が得られる」「急な夜勤の休みも対応してもらえる」がいずれも高かったです。20代では「夜勤手当が高い」が、30~40代では「家族(配偶者以外)の理解・協力が得られる」「夜勤回数が少ない」が他の年代に比較して特に高い特徴がありました。50代では他の年代より回答がばらつき、「夜勤回数が少ない」の30.6%が最多でした。
  • 年齢別によって夜勤を可能にする条件が異なるため、柔軟な働き方を整えることで、夜勤のできる従業員を増やすことができる可能性が高まります。 

 

 

(4)超過勤務の状況

  • 2017年9月の1カ月間に「超過勤務をした」割合は85.7%で、前回調査までと比べてやや増加しています。(※2005年・2009年は正職員、2013年・2017年はフルタイム正職員(短時間正職員を除く)が集計対象。) 
  • 今回調査では、超過勤務をした正職員(フルタイム)の、①実際に行った超過勤務時間と、②うち申告した超過勤務時間を把握しています。その結果、①実超勤時間は平均18時間46分②申告超勤時間は8時間2分で、10時間43分の差異がありました。調査にあたっては、「超過勤務には、着用を義務付けられた所定の服装への着替え、業務上義務付けられている研修・教育訓練の受講、患者情報の確認などの始業前勤務(前残業)、勤務時間外の研究の時間などを含んだ時間」となります。
  • 正職員(フルタイム)の人が超過勤務で行った業務の内容は、「本来業務」が65.4%で最も多く、次いで「周辺業務」60.1%、「患者情報の確認などの始業前残業」44.0%と続きます。超過勤務を減らすためには、「周辺業務」の書類作成や事務作業の効率化が求められます。  

  

 

 

(5)48時間連続の休日の取得状況

  • 正職員(フルタイム)の人が2017年9月の1カ月間に、48時間連続の休日(有給休暇や夏季休暇は除く)を取得した回数は「2回」が30.9%で一番多く、次いで「1回」が24.5%となっています。また、「取得していない」は8.2%です。
  • 1カ月間(※1)に48時間連続の休日を「取得していない」割合は、前回調査までは、9.2%、6.9%、6.0%と減少傾向でしたが、今回の調査では8.2%と増加に転じました(※2)。看護職員が転職先に求めていることで「48時間連続の休日」を挙げられる方は少なくありません。継続的に48時間連続の休日を取得するためには、人材の確保と定着が重要となります。

※1 2009年・2013年・2017年は9月1カ月間の取得回数、2005年は7月1ヶ月間の取得回数を把握。

※2 2005年・2009年は正職員、2013年・2017年はフルタイム正職員(短時間正職員を除く)が集計対象。

 

 

(6)有給休暇の取得状況

  • 2016年度の勤続6カ月以上正職員(フルタイム)の有休休暇取得状況を見ると、付与日数は平均18.5日、前年度からの繰越日数は14.1日に対し、取得日数は8.5日(取得率48.3%)でした。
  • 有給休暇取得日数は、前回調査までは8.0日、8.4日、9.2日と増加傾向にありましたが、今回調査では8.5日と減少に転じています。

 ※2005年は正職員(現職場で勤続3年以上)、2009年・2013年・2017年は正職員(現職場で勤続6カ月以上)が集計対象。

  • 同様に、有給休暇取得率も、前回調査までは41.1%、46.0%、50.0%と増加傾向でしたが、今回調査では48.3%と減少に転じました。年代別に見ると、特に20代の取得率が40.5%と低いです。

 ※有給休暇取得率=取得日数÷付与日数(繰越分を除く)

  • 有給休暇取得日数・率が減少したことと、勤超時間が18時間46分あること、48時間連続の休日を取得していない割合が増加したことを併せ考えると、労働環境がやや悪化していることが懸念されます

 

 

 

2)将来働いてみたい職場

  • 「病院(急性期対応が中心)」「病院(療養が中心)」「へき地医療」「介護保険施設等(老健施設・特養など)」「訪問看護などの在宅医療・看護」「地域保健」「看護系研究機関での看護教育」の7種類の看護の職場をあげ、いま働いていない種類の職場での就業意向も調査されました。
  • いま働いていない種類の職場で、働いてみたい(「働いてみたい」または「条件が合えば働いてみたい」)意向のある方は2,051人(78.4%)でした。また、その職場の種類は「訪問看護などの在宅医療・看護」(60.0%)が最も多く、次いで「介護保険施設等」(55.5%)と続きます。
  • 最も回答が多かった「訪問看護などの在宅医療・看護」での就業意向を年齢・性別に見ると、若い世代ほど就業意向が高く、20代では64.6%が働いてみたい意向を持っていました。また男性の就業意向は69.5%で、女性よりも約10ポイント高めでした。

 

 

3)重視する職場環境

  • 職場環境について、①どんな要素を重要と考えるか、②その要素を現職場(離職中の場合は直近の職場)が満たしているかを尋ねた調査では、「重要(「とても重要である」と「やや重要である」の合計)の回答が最も多かったのは、「職場の人間関係が良好」で95.6%でした。
  • 現職場がその要素を「満たしている」(「とても満たしている」と「やや満たしている」の合計)の回答が最も多かったのは、「通勤の便が良い」で65.0%でした。
  • ニーズと実態のギャップは、特に「納得できる収入が得られる」「休暇をとりやすい」「超過勤務が少ない」「必要に応じて勤務形態を変更できる」で労働条件の大きい差が見られました。

 

 

4)看護職としての就業継続意向

  • 今後の「看護師としての就業継続意向」については、「看護職として働き続けたい」が57.5%で最も多く、次いで「看護職であるかどうかにはこだわらず、興味や関心の持てる仕事をしたい」の33.4%が続きます。
  • 年齢別に見ると、各年代で「看護職として働き続けたい」が最多です。「看護職であるかどうかにはこだわらず、興味や関心を持てる仕事をしたい」という回答は、20代が最も多く42.1%です。
  • 「看護職であるかどうかにはこだわらず、興味や関心の持てる仕事をしたい」または「看護職以外の仕事に従事したい」と答えた人に、その理由を尋ねた調査では、「看護職以外の仕事も経験してみたいから」50.1%が最も多く、次いで「自分の都合に合わせて働ける仕事が良いから」40.5%、「看護職の仕事は忙しいから」30.6%と続きます。
  • 年齢別に見ると、若い年代ほど「看護職以外のやりたい仕事があるから」「看護職の仕事は自分に向かないと思うから」「看護職の仕事は忙しいから」「看護職の仕事は人間関係が面倒だから」の回答が多い傾向がありました。特に20代では、「看護職の仕事は自分に向かないと思うから」「看護職の仕事は忙しいから」「看護職の仕事は人間関係が面倒だから」の回答が他の年代と比較して特に高い傾向がありました。

 

 

5)暴力・ハラスメントを受けた経験

  • この1年間に勤務先または訪問先などで暴力・ハラスメントを受けた経験を尋ねた調査では、経験が「ある」中では「精神的な攻撃」が31.5%で最も多く、次いで「身体的な攻撃」22.9%、「人間関係からの切り離し」17.9%、「意に反する性的な言動」16.0%、「過大な要求」13.1%と続きます。いずれかの暴力・ハラスメントを経験したことのある割合は52.8%でした。
  • 暴力・ハラスメントを誰から受けたかについては、「精神的な攻撃」は「同じ勤務先の職員」64.8%が最も多く、次いで「患者」40.7%、「患者の家族等)18.9%と続きます。「身体的な攻撃」は「患者」94.5%が際立って多く、次いで「同じ勤務先の職員」5.5%と続きます。「人間関係からの切り離し」は、「同じ勤務先の職員」93.8%が最多です。「患者の家族等」からは、「精神的な攻撃」が最多でした。

 

 

 

 

まとめ

【1】柔軟な働き方ができる環境整備が重要

現在夜勤をしていない人に夜勤を可能にする条件を尋ねた調査で、最も多かったのは「家族(配偶者)の理解・協力が得られる」40.1%、次いで「夜勤回数が少ない」32.6%、「夜勤手当が高い」28.9%、「急な夜勤の休みも対応してもらえる」28.1%と続きます。個人の事情だけでなく、職場で対応可能なものもあることから、さまざまな事情や希望に対応した柔軟な働き方ができるような環境整備が、今後も求められます。

 

【2】労働環境の改善が職員の定着につながる

平均超過勤務時間は、未申告時間を含めると18時間46分で、前回2013年調査に比べて大幅に増えました(今回、超過勤務には着替え時間や始業前勤務などの時間も含むことを明記して質問したことが影響した可能性があります)。48時間連続の休日を取得していない割合は8.2%、有給取得率は48.3%で、いずれも前回2013年調査に比べやや悪化していました。労働環境がやや悪化している可能性があり、医療安全や看護職の健康保持の観点から、さらに要因を探っていくことが求められます。労働環境が改善されることで職員の長期定着にもつながります。 

 

【出典】公益社団法人 日本看護協会 広報部

  

 

メディカルサポネット編集部

 

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