2018.05.01
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公益財団法人日産厚生会 玉川病院/嘉茂 すみ代さん

INTERVIEWS

▼目次

 

1.インタビュー紹介

 

プロフィール

公益財団法人 日産厚生会 玉川病院

看護部長 

嘉茂 すみ代(かも すみよ)さん


【業態】急性期総合病院

【設立】1953年3月

【本社所在地】東京都世田谷区瀬田4-8-1

【病床数】389床

   

習得度に合わせたオーダーメイドの研修など、

管理職が率先して行う

働きやすい職場づくりが離職率低下の鍵

 

2-1.採用 

4月採用の大半は中途採用組。新卒採用は各病棟に1~2名。

---看護師採用の状況について教えてください

 

当院に4月に入職される方は30名程度。そのうち約10名が新卒で、20名は中途採用です。新卒採用者は各病棟に1人、多くて2人。看護師の成長を見ていくには適性人数だと考えています。入職後約2週間かけて「全体研修」を行い、感染予防や看護倫理に関して学んだ後、ローテーション研修となります。

 

2-2.育成 

一人ひとりの成長を実感できる
さまざまな教育・研修制度を採用しています
人と人とが会って現状を確認し、
指導やアドバイスをすることが大切
 

一人ひとりの習得度に合わせた研修

---新卒と中途の教育方法について教えてください

 

入職後約2週間で全体研修を行い、感染予防や、看護倫理に関して学びます。その語、新卒採用者はローテーション研修へ進みます。 

 

以前は中途採用は全体研修後、病棟配属という流れでしたが、中途採用者は年齢やキャリアの差があるため、一人ひとりの習得度に合わせるのが必要だと考えます。中途採用の際に感じることは、「自分のやり方」から抜け出せないケースが多いという点です。今までは全体研修の後、病棟配属という流れでしたが、今後は配属までの期間を見直し、キャリアに応じて新卒採用者と同様にローテーション研修を取り入れていく予定です。中途採用者に対しては、これまでのキャリアを活かせるようサポートできる職場づくりが課題です。

 

基本的な看護方針・知識は『eラーニング』を利用しています。現場ではペアで看護を行う『PNS(Partnership Nursing System/パートナーシップ・ナーシング・システム)』を取り入れています。

看護技術に関する不安は、新卒採用者だけでなく、中途採用者でも抱いています。こうしたシステムで丁寧に教えていくことが定着には重要です。

 

 

パートナーの組み方については、年齢やキャリアの違いを考慮して、管理職が慎重に選定しています。パートナー同士の情報交換が密になることで、相乗効果を与えることができ、互いのスキルアップにつながります。

 

ラダー研修を採用し、成長に沿ったキャリアデザインを支援

---採用している教育制度について教えてください

 

看護師としての専門知識や技術を段階的に身に着けられるラダー研修を採用し、クリニカルラダーとOJTラダーの2本立てで構成、一人ひとりの実践力を評価して着実にステップアップできる体制を整えています。研修は、ラダーの段階に必要な到達目標にそって企画し、成長にそって看護師自身がキャリアをデザインすることを支援します。

 

---ラダー研修の効果はいがかですか?

 

ラダー研修は、達成目標や指導の目安になります。たとえば、以前の勤務先でもラダーを使っていた場合、看護師長が以前のラダーを確認し、年間達成目標を立てて、指導を行うといった活用もできます。また、仕事をする際、「こういう勉強が必要だよ」「ここまで目標にしよう」というように、ゴールや課題が明確となります。

 

ラダー研修により、職員のスタンスも少しずつ変化してきました。職員の質が向上するだけでなく、職員の満足度も高まり、個々のキャリア開発につながっています。いろいろな教育方針がありますが、最終的には人と人のつながりが大切です。しっかりと現状をチェックし、指導やアドバイスもするという方法が最も効率的だと思います。

 

管理職から率先して行う、働きやすい職場づくり

---新人職員を育成するコツはありますか?

 

年に3~4名程度、習得度の差で仕事についていけない方がいます。しかしそれは、新入職員の能力を早期に見極めて改善策を考えられていない管理職の問題だと思います。人には適材適所がありますから、そのSOSサインをいかに管理職が拾えるかが重要です。

たとえば「多重課題」についていけない新人職員には、一つずつ順番に取り組ませてみる。それでも難しい場合は、別の病棟に配置を異動するなど対応します。

当院では、看護師長が中心となって師長会を実施しています。そこで各部署で起こっている問題点や人材育成、業務改善などの共有や、ほかの師長からアドバイスや質問を受けるなどの意見交換も行なっています。

こうした取り組みによって、管理職から働きやすい職場づくりを行い、長期的に活躍できる人材の育成に取り組んでいます。

 

 

 

円滑に医療ができる体制づくり

 ---来日外国人の増加に伴い、外国人患者への取り組みも注目されています

 

厚生労働省の旗振りで、外国の方々が病気になった場合の医療機関体制の整備、JMIP(Japan Medical Service Accreditation for International Patients=外国人患者受け入れ医療機関認証制度)が推進されています。とても看護部だけで対応できるレベルではありません。

  

そこで、病院全体で考えるような取り組みを進めてきました。こうした取り組みがすんなり実行できたのは、普段から「横のつながり」を大切にしていたからだと思います。

   

 

  

社会人基礎力の高い看護師を輩出

--- 新人の育成、外国人患者への取り組みの他、取り組まれていることはありますか?

 

当院の看護部では、自己の成長を可視化するため、ポートフォリオをツールとした目標管理を導入し、1年間の目標設定、目標に対する取り組み、結果を他職員の前で発表する機会を設けています。これらは給料として反映されないことがほとんどですが、発表の場で求められる「プレゼンテーション力」、「アピール力」、「話をまとめる力」といった社会人基礎力を培うことができます。看護師として知識・スキルを身につけることは大前提ですが、社会人基礎力の高い看護師が多いことは当院の強みだと思います。

 

ラダーや、全員・全体で、医療・サービスの質を継続的に向上させるTQM(Total Quality Management)活動を通じて、病院内での人間関係も円滑になります。一緒に研修を受けた人や、同じチームで頑張ったメンバーとは、その後もコミュニケーションを取り合い、互いを気づかえる関係になります。看護部以外のコミュニティがあることは心の支えにもなりますよね。

 

2-3.定着

相談しやすい関係性を構築する

---人材が定着するための取り組みはされてますか?

 

当院では10年前から、TQM活動を行っています。看護部に限らず、病院全体の取り組みで医師・看護師・事務・検査部門など、多職種共同での活動となります。

 

このような取り組みをすることで、事業活動における生産管理や品質管理などの管理業務を円滑に進めるPDCAサイクルを自然に回す意識が定着していますね。PDCAとは事業活動における生産管理や品質管理などの管理業務を円滑に進める手法のことで、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)の頭文字からできた言葉です。

 

年齢やキャリアなど関係なく、チームを作り役割分担をすることで、普段の仕事のなかでも相談しやすい関係性を築くことができます。当院に関してですが、「共同作業」をたくさん行うことで、「人間関係で辞めます」というケースが減りました。

総合的に看る・ケアをする看護師

---看護部長として、今後はどのような看護師が求められるとお考えですか?

  

今後求められる人材は、頭の先から足の先まで総合的に看て、ケアできる看護師です。高齢者の方は、検査で合併症が見つかることも少なくありません。診療科だけで患者さんを区分けできるものではありません。看護師も自分のキャリアを絞るのではなく、いろんなポジションで経験を積み、総合的に患者さんを看られるようになって欲しいですね。  

 

最近は看護業務もIT化が進められる中で、いろいろな危機感を抱くこともあります。血圧などのデータも自動的に電子カルテの中に入っていきます。便利になったのと同時に「看護師は何をするのですか?」と問われていると思います。

 

私の個人的見解ですが、今後は「看護師でないとできない看護」という原点に戻るべきときだと思います。看護師を目指す上で一番根幹の「看護は仕事だけれども、単なる仕事ではない」というモチベーションは絶対に必要だし、忘れてはならないと思っています。倫理観のようなモノが絶対に必要な職業です。

   

 

採用・育成・定着 のポイント

Point.01 「採用」
新卒採用は成長が見られる人数に
中途採用者がキャリアを活かせる環境作りを支援する

Point.02 「育成」
ケアを行うにあたり、
パートナーシップをいかに発揮できるかがスキルアップにつながる

Point.03 「定着」
多職種、他部署との「共同作業」で相談しやすい関係性を構築

 

 

 

取材日:2017年10月6日

メディカルサポネット編集部

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