2020.04.13
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【STOP早期退職】定着率が高い法人・企業とは?
~中途新入職員の受け入れ準備チェックリスト~<看護師編>

 

編集部より

「苦労して採用した中途新入職員が、入職して数ヶ月で辞めてしまった……」このような経験はありませんか。人材不足が叫ばれているなか、時間とコストをかけて採用した職員の早期退職は、法人・企業にとって大きな痛手となります。入職して数ヶ月といえば、風土や業務に馴染めていなくても仕方のない期間。早期退職は「単なる甘えでは?」「相性が悪かった」では片付けられない課題です。

 

早期退職に至るケースの多くが、入念な受け入れ準備と入職後のフォローで予防することができます。

本コラムでは看護師の早期退職の原因をマイナビが調査したデータと事例から探り、予防策を紹介していきます。受け入れ準備のチェックリストも作成しましたので、ぜひご活用ください。

 

編集・構成/メディカルサポネット編集部

 

 

 

中途新入職員が、すぐに辞めてしまう原因は?

下記は「マイナビ看護師」の転職支援サービスを通じて転職したものの、残念ながら早期退職(入職から90日以内の退職)に至った事例を対象に、入職日から退職日までの期間を分析したグラフ(左)と、対応したキャリアアドバイザーに聞き取り調査を行い、理由をまとめたグラフ(右)です。

 

 

早期退職をされた方の半数以上(52.4%)が入職から1ヶ月未満に退職を決断していることが分かります。理由の内訳をみると、「聞いていた話と違う」20.5%が最も多く、「体調不良」16.3%「本人事情」16.2%と続きます。しかし、聞き取り調査に寄せられた事例から、上記の理由は1つのきっかけに過ぎず、実際にはさまざまな要因が重なって早期退職に至っていることがうかがえます。

 

「面接時にほぼ残業はなく、外来業務のみと聞いていた。実際に勤務が始まると残業があり、オペ室の介助業務も担うことになった」

「入職して1週間でリーダーを任された。同時入職の人に教えたり、他の人より業務を任せられた。加えて面接時に聞いていた残業時間より大幅に残業が増え、心身ともに負担を感じた」

「通常二人で行う業務を恒常的に一人で行っていたところ、腰痛を発症。寝込むほど悪化し、通常勤務ができなくなった」

「上司がほぼ1日スタッフに対して怒鳴り、怖くて精神的に体調を崩してしまった」

「母親が脳梗塞で倒れ、介護が必要な状況になった。常勤として働きながら介護をすることができなくなった」

「緩和ケア病棟の看護についていけなかった。誰にも相談できずに追い込まれてしまった」

「入職日からプリセプターまたは同僚からフォローがあると思っていたが、オリエンテーション以外は孤立してしまった。その他にもロッカーが準備されていなかったり、各種事務手続きの説明もなかったことから歓迎されていないと感じた」

  

人間関係や業務負担による体調不良など、理由の多くは複合的です。家族の介護など、やむを得ないケースもありますが、実はほとんどの早期退職は未然に防ぐことができるんです。

 

採用プロセス

入職前

入職後

 

早期退職の予防策を、3つの段階に分けて順に紹介していきます。

 

採用プロセス/入職後のギャップを防ぐには?

 

採用プロセスから具体的な就業イメージを伝えていく

「面接時に聞いていた話と違う」「想定していた仕事内容と違った」など、採用側との認識の違いから起こるイメージギャップは、入職後すぐに感じやすく、最も早期退職につながりやすいといえます。

 

これは雇用のミスマッチや、入職前に充分なコミュニケーションが取れていないことが原因だと考えられます。

●ホームページに普段の雰囲気を知ってもらえるような、配属先ごとの情報(職員の人数や年齢層、仕事内容、1日の流れなど)や写真を掲載する

●ホームページの情報や求人票をこまめに修正し、最新の情報を掲載するようにする

●面接や説明会で使用できるよう、残業時間や在院日数、重症度・介護度、職員の人数体制などを数値化した資料を用意しておく

●メリットだけでなく、マイナスポイントやうわさの真偽も伝える 

リアルな就業イメージを描けるよう、面接や見学時に同じような境遇の職員と話をする機会を設ける。
例えば、子育てと仕事の両立を重視している方に対しては、境遇の似た職員に1日の流れの詳細や周りの協力体制を話してもらう 

 

など採用プロセスから、より現実的な就業イメージを伝えていきましょう。

 

◆現状のスキルを具体的に把握しておく

面接時には労働条件のすり合わせの他に、現職(前職)での仕事内容を具体的にヒアリングしておくことが非常に重要です。

 

・研修期間もなく、いきなり現場に配属されてしまった

・思っていた以上にハードな仕事を任されてしまった

  

中途新入職員は即戦力を期待されるため、このようなことが起こりやすく、スキル不足や業務過多がストレスとなって早期退職につながってしまうケースも少なくありません。たとえ経験があったとしても、職場環境が変われば馴染むのに時間がかかるので周囲の理解と配慮が不可欠です。

 

法人・企業によって仕事のやり方はさまざまです。面接では現職(前職)の仕事内容はもちろん、数値化できること(夜勤回数・実際の退社時間・受け持ち担当数・看護師やその他職員の人数など)を確認することで、一人ひとりのスキルや考え方をより理解することができるでしょう。

 

◆段階を踏んで認識の差を縮めていく

限られた面接時間の中だけでお互いの認識をすり合わせることは困難です。場合によっては内定者懇親会の機会を設ける、入職前オリエンテーションを行うなどして、段階を踏んで認識の差を縮めていくことが大切です。

入職までにコミュニケーションが深められていれば、多少の条件の変更などがあっても、お互いが切り出しやすく、許容しやすい関係が築けるでしょう。

  

◆見落とされがちな、採用側と現場での認識の違い

入職者との認識の違いと同じくらい気をつけなければならないのが、採用側と現場(配属先)での認識差です。

 

・始業時間前の申し送り

・就業後の10分程度の事務作業 など

 

 サービス残業が現場で習慣化されてしまっているケースがあります。このような採用側からは見えない課題は、求人票にも書かれず、入職後に「聞いていた話と違う」と感じる要因になります。普段から現場の状況を把握しておくと共に、面接に配属予定先の職員を同席させるなど、応募者が現場の雰囲気を掴みやすい面接環境を整えましょう。

 

 

 

入職前/中途新入職員の受け入れ準備 

早期退職、それも1ヶ月未満での離職につながりやすいのが、連絡や書類の不備です。

入職日が近づいているのに必要書類が届いていない、入職当日のスケジュール連絡がないというようなことがあると、「歓迎されてないのでは?」と不安を抱いたまま入職することになります。

そして入職後、小さなきっかけから法人・企業への不信感を募らせ、早期退職へと発展する恐れがあります。

 

働く環境も同様です。入職当日にロッカーが用意されていなかった、配属先に自分の存在が知らされていなかったということがあると、中途新入職員は「居場所がない」と感じてしまうでしょう。

入職される方が気持ちよく新しい環境に馴染めるように、いま一度確認しておきましょう。職場によって実施事項や必要なものは異なりますが、代表的な準備項目は以下の通りです。ぜひご活用ください。

 

●中途入職者の受け入れ準備チェックリスト【手続き】

<内定受諾後>
□採用決定の連絡
・内定受諾のお礼
・今後のスケジュール
・内定者懇親会や入職前オリエンテーションの案内
※就業中の方も多くいらっしゃいます。入職前オリエンテーションなど、日程の調整が必要なものは、できる限り早く案内するよう配慮しましょう。

★内定承諾から入職までの間は、不安を抱きやすい期間です。採用決定から入職日まで時間がある場合は、1~2ヶ月に一度の目安でコンタクトを取ることで、中途入職予定者は安心して入職日を迎えられます。

 

<入職1ヶ月前>
□必要書類の郵便
・内定通知書/誓約書/労働条件通知書/雇用契約書など
□健康診断の案内
□入寮・託児所などの案内
□配属決定先の連絡
※配属先を気にされている方は非常に多く、連絡の遅れや入職直前での変更は内定辞退や早期退職につながってしまうことも。配属先の決定が遅れる場合でも、状況を報告するなど細やかなフォローを。

□入職当日のスケジュール連絡
・集合場所/時間/持ち物など

 

●中途入職者の受け入れ準備チェックリスト【働く環境】

□職員証(名札)
□白衣、シューズ、備品など
□ロッカー
□研修マニュアル
□電子カルテのID、パスワード
□配属先への新入職員の情報共有

※中途新入職者の情報が看護部長で留まり、配属先の職員にまで伝わっていないと、中途新入職員は孤独や戸惑いを感じてしまいます。「いつ・どんな方が入職してくるのか」を共有しておきましょう。

 

 

入職後/人材定着につながる取り組み

 

早期退職者の半数以上が1ヶ月未満で離職を決断していることからも、入職直後の対応がいかに重要かが分かります。慣習・風土の異なる経験を積んだ中途新入職員をどのように受け入れ、教育し、どう定着につなげていくか実際に現場で実践されている取り組みの中から好事例をご紹介します。

好事例① 

入職当日は看護師長と教育担当者がそろって出迎えることを徹底している。

▲入職初日は中途新入職員も大きな期待と同時に不安を抱えています。配属先から仲間として歓迎されていることを実感し、安心してもらうことが何より大切です。

好事例②

中途新入職員にも新卒同様に看護師スキルチェックシートを用いて、現状のスキルや知識を確認している。「中途新入職員=即戦力」ではなく、一人ひとりのレベルに合わせた教育を行っている。

中途新入職者の現状のスキルや考え方を把握しておくことは、業務をスムーズにするだけでなく、中途新入職者のストレスケアにもつながります。一人ひとりのスキルに応じた業務配分や研修期間を設けましょう。

好事例③ 

入職後のフォローは現場にだけ任せるのではなく、採用を行った総務部や人事部との情報共有を密に行った。採用側と受け入れ側の連携を強化することで、入職後、現場に相談できない内容(人間関係など)については、総務部や人事部からアプローチすることで中途新入職員の抱える不安をいち早く察知することができ、早期退職を防ぐことができている。

好事例④

入職前にPTや薬剤師など、他職種合同の中途新入職員同士の交流の場を設ける。同期なので現場の悩みを打ち明けやすく、連携のことなども尋ねやすい環境が作れている。

▲③は他部署に、④は他職種に相談しやすい環境を整える取り組みです。現場での悩みを打ち明けられる相手がいると中途新入職員も心強いです。入職前オリエンテーションや内定者懇親会で交流する機会を設け、中途新入職員が気軽に相談できる関係性を築く後押しができるとよいでしょう。 

好事例⑤

教育看護部長というポジションを配置し、中途新入職員だけでなく、看護師長の教育にも力を入れた。

▲大規模病院などで有効な取り組みです。教育に特化した役職を置くことで、看護師長や教育担当の負担を減らし、多忙時でも全体に目を配ることができます。
 

まとめ

慣習や風土の異なる環境で経験を積んだ中途新入職員は、職場に新しい風を吹き込み、視野を広げてくれる存在です。しかし、どんなに優秀で経験のある方でも、新しい環境に慣れるまでは戸惑いや不安があるものです。安心して入職することができた職員は、いずれ大きな戦力となり、かけがえのない仲間となってくれるはずです。中途新入職員の不安に寄り添い、歓迎する気持ちで、万全の受け入れ準備を整えましょう

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