2017.11.02
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Vol.03 看護師お悩み相談
~若手看護師に教えるのが苦手!(28歳・女性・中堅看護師)~

【コラム/ナースぷらす】

メディカルサポネット 編集部からのコメント

ついつい「甘い先輩」となって、自分が苦しくなっていませんか? OJTをしっかり行い、フィードバックすることで、後輩だけでなく、先輩も一緒に成長することができます。

 

 

看護師歴33年。現役看護部長の行徳倫子さんが、仕事の悩みに九州弁でお答えします。 人の命を預かるプレッシャー、忙しさや人間関係…ココロの重荷を、おりん姉さんの厳しくも温かいアドバイスで取り除いてみませんか?

 

過保護すぎる先輩の下で後輩は育ちません!

「師長から『業務負担が原因で、若い看護師たちが退職しないように』と、

耳にたこができるほどいわれているので、後輩へ業務を教えるときは『大切に、優しく』を心がけています。

しかし、そのせいで自分の仕事をあと回しにして、若手をサポートすることが増え、残業の日々……。

自分だけが犠牲になっているように感じて、もう限界です! おりんさんどうしたらよいでしょうか?」

 

新人看護師や、後輩たちのサポートに追われ、オーバーワーク気味のリーダー看護師A子さん。ストレスが我慢の限界を超え、相談にやってきました。

 「あ~これじゃ、人は育ちませんね。教える側も教わる側も不幸だね」

 医療現場で定着しているイメージは「優しい=良い先輩」「怖い=悪い先輩」です。「大事に=甘く」「大切に=過保護」では、教える側の自己防衛まっしぐら! これじゃ、後輩のひとり立ちに時間がかかり、人手がたりない現場の先輩にかかる負担は 半端じゃない! 

「優しさ、怖さ、大事に、大切に」どれも親が子供を育てる場面で使い分けします。共通していえるのは、どの態度にも“愛情”が備わっているのです。「人を育てる」――この作業には教える側に責任があり、厳しさも必要。それは、相手への口調や態度ではなく、自分自身に対してです。その厳しさは、自分自身を追い込むのではないことを忘れずに! 

後輩を育てることで、自分も育つ!

松下幸之助さんの名言に「教えることに熱意を持て、教えられることに謙虚であれ。教え教えられずして何ものも生まれてこない」とあります。いい換えれば「人を育てるということは、自分も育つ」ということでしょう。いったいどういう事か、今回のケースを例に説明します。

 

1.リーダー看護師A子さんは、後輩看護師B子さんの看護技術自立評価表(欄外*参照)をチェックした。 

2.『CVカテーテル挿入のドクター介助は自立』とあり、大丈夫だと判断して後輩看護師のB子さんに、CVカテーテル挿入のドクター介助を行う指示を出した。 

3.後輩のB子が「できない」と断ったため、リーダー看護師A子が業務を請け負った。 

 

<教える側:できるリーダーはこうする!>

指示を出すとき、直接後輩のB子さんにCVカテーテル挿入のドクター介助の完成度を確認しましょう。自立と評価してあるそのものは確かなのか? もう一度本人に確認することが重要です。もし、難しい状況ならば、どの部分に問題あるのかを確かめること。手技はできるが、ひとりで実践することに不安があるのか? あるいは担当医師とのコミュニケーションに不安があるのか? など。指示による教育は、相手を理解し、どこまで結果が得られるかを知って行うと、相手にも自分の思いが通じるでしょう。

また、仕事拒否されたとき「仕方ない」と、A子さんは業務を請け負いました。この行動は、その場の対応としては“良し”と評価します。しかし、その後必ずOJT(仕事をしながら職場の先輩に仕事を教えてもらうこと)教育を行いましょう。OJT教育をすることが、人材育成を成功へ導く鍵となるのです。OJT教育として『患者さんの症例に応じて質問をする』といったことが挙げられます。質問内容は、病態生理に基づいた観察項目や予想されるリスク、ケアに関する注意点や適切な対応などです。そのとき、いくつもの回答を抽出させますが否定はしません。そして、回答に「なぜ?」という質問をすることでさらに考察力を付けさせます。また、『OJTノートを作る』というのも効果的です。ノートを通じて、教える側・教わる側の情報交換を行います。質問したり答え合わせしたり、あるいは仕事以外のコミュニケーションに関する問題解決などに活用するとよいでしょう。

A子さんは、イラついた気持ちが続いています。自分で処理してはなんの解決にもなりません。必ず、B子さんにフィードバックしてお互いの課題を見つけましょう。

 

<教わる側:できる後輩はこうする!> 

「私はできません」と即答することは、単なる業務拒否です。リーダーに指示されるというのは、期待感があるからです。自分の手技に対する不安は誰でもありますが、まずは実践してどこに課題があるのかを知ることも大切です。最初から100点を取れる人なんていません。不安があるときは、先輩に業務拒否を行うのではなく、不安要素を述べて、支援を得たいという前向きな姿勢も重要です。看護技術は実践しながら成長していくのです。“逃げたら負け”と、自分と向き合う姿勢が大切ですよ。 

おりんの処方箋

1.過保護な指導はNG

2.愛情を持った指導で意思の疎通を

3.OJT教育をしっかり行いましょう

 

こうして、教える側・教わる側は共に成長していくのです。

  

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*看護技術自立評価表とは*

基礎看護技術の項目ごとに自立度を自己申告と合わせて先輩が評価し、どのレベルかを明確に表す評価表である。なかには、手順や注意点など、口頭で正当な答えが返ってきて先輩から自立と評価してもらっても本人は不安要素が多くあり、ひとりでの実務にストレスを生じている看護師も少なくない。

 

プロフィール

行徳倫子(ぎょうとく りんこ)


佐賀女子短期大学付属看護学校を卒業後、33年間看護師として民間病院や公的病院での一般急性期の医療に携わり、看護実践や教育・看護管理などの経験を培う。豊富な経験を活かした講演会やセミナーは悩める看護師たちに高く評価されている。現在は、医療法人鵬志会 別府病院にて看護部長として勤務中。 

  

 

「職場カルテ」にご興味のある方は、以下よりお気軽にお問い合わせください。

  

 

  

出典: ナースぷらす+

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