2020.04.03
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【オンライン診療が20年度診療報酬改定で要件緩和─新型コロナ感染拡大で高まるニーズ【まとめてみました】

メディカルサポネット 編集部からのコメント

普及が進まない状況が続いていたオンライン診療ですが、2020年度診療報酬改定でオンライン診療が開始できるまでの期間短縮などの見直しが行われました。さらに、新型コロナウイルス感染症拡大によるニーズの高まりを受け、厚生労働省はオンライン診療について臨時的・特例的取り扱いを認めることを決めました。オンライン診療を巡る最新トピックを紹介しています。

 

外来・入院・在宅に続く医療提供の一形態として2018年度診療報酬改定で保険導入された「オンライン診療」。通常の外来診療に比べ低い点数や厳格な算定要件がネックとなり、普及が進まない状況が続いていたが、2020年度改定で対象疾患の拡大やオンライン診療を開始できるまでの期間短縮などの見直しが行われ、さらに、新型コロナウイルス感染拡大によるニーズの高まりを受け、厚生労働省はオンライン診療について臨時的・特例的取り扱いを認めることを決めた。20年度改定の要件緩和や新型コロナウイルスの影響による社会の意識変化で普及はどこまで進むのか。オンライン診療を巡る最新トピックをまとめた。 

この大方針は概ね、正しい。急激な、指数関数的感染拡大が起きてしまうと中国・武漢のように万単位の患者が発生し、たくさんの死亡者が出る。韓国もこれで苦しんだ。本稿執筆時点ではイタリア、フランス、スペインといったヨーロッパ諸国で同じことが起き、米国ではニューヨークが同じように苦しんでいる。急激な患者の拡大は医療を圧迫し、医療者を疲弊させ、医療リソースは枯渇する。それは結局患者のアウトカムにもネガティブに作用する。

 

 

20年度診療報酬改定におけるオンライン診療関連の主な見直しは3点(表A)。1つ目は、オンライン診療を開始するまでに必要な対面診療の期間が、3カ月短縮されたことだ。保険診療でオンライン診療を開始するには、①当該患者にオンライン診療該当管理料を初めて算定した月から6カ月以上経過、②オンライン診療を行う同一医師による直近6カ月間の対面診療の毎月実施―などの要件を満たす必要があったが、それぞれ3カ月に短縮された。

 

2つ目は、通院が必要な慢性頭痛を対象疾患に追加した点。「特定疾患療養管理料」などを算定する糖尿病や高血圧症などの患者に加え、片頭痛や緊張型頭痛、群発頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛など痛みにより日常生活に支障をきたす慢性頭痛も保険適用となる。これにより現役世代にもオンライン診療の利用が普及する可能性が出てきた。

 

慢性頭痛への対象拡大を巡っては、日本頭痛学会が、慢性頭痛の治療におけるオンライン診療と対面診療のランダム化比較試験の結果などから両者の有効性や安全性は同等程度、という見方を示している。

 

このほか、「在宅自己注射指導管理料」を算定する糖尿病や慢性肝疾患、慢性ウイルス肝炎患者も対象に追加された。

30分以内の緊急時対応要件は削除

3つ目は、緊急時を想定した「おおむね30分以内」に対面診療が行える体制を確保するという、いわゆる“30分ルール”が施設基準から撤廃、夜間・休日などは他の医療機関での対応が可能になった点だ。

 

オンライン診療サービス「curon(クロン)」を提供する(株)MICINの代表取締役CEOで医師の原聖吾氏は、対象疾患の拡大や30分ルールの撤廃などにより、医療機関のオンライン診療導入へのハードルが下がるとの見方を示している。

 

診療報酬点数は据え置き

オンライン診療に関する主な診療報酬は、「オンライン診療料」(71点)と「オンライン医学管理料」から移行した「特定疾患療養管理料(情報通信機器を用いた場合)」(100点)、「オンライン在宅管理料」「精神科オンライン在宅管理料」(各100点)の4つ(表B)。診療報酬の算定例は、外来が419点(再診料73点、明細書発行体制等加算1点、外来管理加算52点、特定疾患療養管理料225点、処方箋料68点)であるのに対し、オンライン診療の場合は239点(オンライン診療料71点、処方箋料68点、特定疾患療養管理料⦅情報通信機器を用いた場合⦆100点)と約4割低い。採算性が導入の進まない要因の1つとされているが、各点数は20年度改定でも据え置かれた。

 

小誌で「町医者で行こう!!」を連載する長尾和宏氏(長尾クリニック院長)は、3月21日号の同連載で「新型感染症には遠隔診療(オンライン診療)の出番であることは誰の目にも明らかだ」とオンライン診療の有用性を評価した上で、点数について「窓口負担が安すぎる」と問題視している。外来や在宅に比べ窓口負担が軽いことから、必要以上にオンライン診療での受診継続を希望する患者が増えたり、外来や在宅で医療費を巡るトラブルに発展したりする可能性があると懸念している。

 

新型コロナの影響で問い合わせが急増

こうした状況の中、新型コロナウイルス感染拡大を受け、医療機関での2次感染を防ぐなどの観点から、厚労省から臨時的・特例的にオンライン診療の対象範囲を拡大する方針が示された。2月28日の事務連絡では、定期的に通院する慢性疾患の患者に対し、医師が普段処方している医薬品の処方箋発行と薬剤師による遠隔服薬指導の実施を認め、3月19日には、患者の症状が変化した場合に別の医薬品の処方も可能とした。

 

感染リスクが高まる中で、オンライン診療は慢性疾患の患者や軽症患者に対する有用なツールとなりうることから、現在、オンライン診療サービス提供事業者への問い合わせは急増しているという。3月31日に開催された経済財政諮問会議では、加藤勝信厚労相がオンライン診療を新型コロナウイルス患者の初診についても認める可能性に言及した。オンライン診療を通常の外来診療と比較するのではなく、外来を補完する機能を持つ新たな医療インフラとして、広く整備していく必要があるのではないか。

 

「普及に向けてオンライン診療を活用したエビデンスを蓄積していく」(株)MICINの原聖吾代表取締役CEO(医師)に聞く

─オンライン診療の現状をどう見ていますか。

原:オンライン診療サービス提供事業者の公表する契約医療機関数等から推算すると、オンライン診療システムを導入している医療機関は4000施設程度になります。一方、中央社会保険医療協議会総会の資料によると、2019年3月時点での「オンライン診療料」の算定回数は月100件程度にとどまっており、オンライン診療に一定の関心を持つ医療機関はあるものの、特に保険診療におけるオンライン診療の活用はまだ十分に進んでいない状況にあると言えるでしょう。

 

実際に、当社が運営するcuron(クロン)は、初期・月額費用が無料のサービスということもあり、導入医療機関数は1800施設(2020年3月時点)まで増加しています。しかし、保険診療による利用は自費診療に比べ少ない状況にあります。

 

─2020年度診療報酬改定における算定要件の緩和によって、普及や保険診療での活用は進むとみますか。

原:20年度診療報酬改定において、オンライン診療関連の要件緩和は前進したと捉えています。30分以内の緊急対応という施設基準が削除されたことやオンライン診療を開始できるタイミングが「該当管理料算定時から6カ月後」から「3カ月後」に前倒しされたことで、医療機関にとってはオンライン診療導入に対するハードルが下がると思います。医学管理料についてもオンライン診療時の算定が可能となり、医療機関の管理等の負担軽減につながる効果が期待できます。

 

─新型コロナウイルスの影響で医師・患者双方からオンライン診療への関心が高まっています。

原:今般の新型コロナウイルス感染症の流行によって、オンライン診療の活用を検討する医療機関が日を追うごとに増えています。

 

当社でも2月28日の事務連絡を受け、新型コロナウイルス感染症に関する特設サイト設置(患者向け・医師向け)、医療機関から薬局への処方箋FAX共有機能の超短期開発といった対応を実施しました。その結果、医療機関からの問い合わせは昨年12月比で約5倍、保険診療でのオンライン診療実施回数は約2.5倍にそれぞれ増えています。

 

─オンライン診療が本格的に普及するには何が必要と考えますか。

原:本格的な普及に向けてはさらなる要件緩和が必要です。具体的には、オンライン診療の対象疾患を医師の裁量で判断できるようにすること、管理料を対面と同等水準で評価することなどが必要になります。

 

当社としても、オンライン診療を開始する医療機関が少ない負担で導入できるよう支援させていただきながら、さらなる普及に向けてオンライン診療を活用したエビデンスの蓄積を推進していきたいと考えています。

 
 

 

出典:Web医事新報

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